恋する動詞

(花京院の髪……綺麗だな)

隣でお茶を飲む花京院を見て承太郎は唐突に思った。どうしてかは知らないがなんとなく、だ。

「承太郎、どうしたんだい?」
「いや、なんでもないぜ」
「ならなんで僕の前髪をくるくるしてるの?」
「……ちょっと気になってな」

自分でも気づいていなかったのかいつの間にか花京院の髪を触っていたらしい。くるくると指に絡めていた。わりぃ、と一言謝って手を離す。

「別に気にしてないよ」
「そうか」
「……」
「……(どうしようか、この無言の間)」

突然考え込んだ承太郎を見て戸惑う。自分が何かしてしまったのか?と。花京院は最近、承太郎の顔色を伺ってばかりいるなぁ、と一人ため息をついた。それもその筈、花京院は承太郎に常に喜んでいてもらいたいからだ。別段表情に出るわけではない。なんとなくだとかその場の空気だとかで分かる。あ、今は機嫌がいいんだな。とか、なにか怒ってるのかな?とか。

「なぁ、お前ってさ」
「ん?」
「すげぇ髪してるよな」
「……それって褒めてるのかな?」
「悪い意味で言ったわけじゃねーけど、ふと思っただけだ」
「そ、そうかい……変かな……?」
「別に変じゃねぇよ」

褒められているのか褒められていないのか分からないセリフに複雑な気分の花京院。すると、ぼそりと承太郎が呟いた。

「俺は好きだぜ、花京院の髪」
「っ……ずるい、ずるいよ承太郎」
「?」

どうして花京院がいきなり目線をそらしたのか分かっていない承太郎だった。

─僕が攻めるはずなのにっ─
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