恋する動詞

いるはずの彼がいない。正しくはいるが、見えない。透明だ。気配があるのに見えない。

「リゾット」

呼びかけても返事がない。いや、返事が出来ないのだ。なぜならジョルノは怒っているから。殺気立つ空気、冷えていく温度。

「リゾットってば、隠れても無駄ですからね」

少々甘えるような声を出してジョルノはリゾットを呼びかける。実際はそれどころではない。どんどん部屋の中に足を踏み入れるジョルノは本当に一般人が死んでしまいそうな殺気を放っていた。なぜか。それは至極どうでもよさそうな内容ではあるが本人は至って真面目である。

「僕のチョコレートどこに隠したんですか!仕事終わりに楽しみにとっておいたやつ!!」
「お前はチョコレート食べ過ぎだからな……体に悪い」

スッと現れたリゾットはジョルノの肩に手を置いて言った。現在進行系で怒っているジョルノは、リゾットの目を見て叫ぶ。

「チョコレートのどこが体に悪いんですか!美味しくてポリフェノールたっぷりで神の味とも呼ばれているチョコレートが!!」
「落ち着け、食べればいいもんじゃあない。食べ過ぎると肌荒れするぞ」
「食べ過ぎじゃあないですもん!」
「果物食え」
「嫌です!チョコレートフォンデュにしたら食べます」

全く世話の焼けるやつだなぁとリゾットはため息をついたのだった。
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