恋する動詞

9悩む(露仗)

「………」

彼は悩んでいた。このなんとも言えない気持ちは何なのか、と。東方仗助をえた時に起こるあの締め付けはなんなのだろうと。

「この僕としたことが……」

ぎりぎりと痛む胸はいくら抑えても収まらない。原因は分かっている。東方仗助。彼のせいだ。だが、肝心の何故仗助を考えると締め付けられるのかがわからなかった。特に仗助が他の誰かと喋っているとき。

「なんなんだ」
「あれー?露伴じゃあないっすか」
「な……!」

噂をすればなんとやら、仗助が前に来ていた。相変わらずヘラヘラしやがって……!と考えた露伴。するとまた、あの痛みが襲ってくる。

「どうしたんすか?」
「うううるさい、お前には関係ないだろ……!」
「関係ある!」
「ない!」

心配する仗助から逃げなくては、一緒にいたら鼓動がうるさくて死んでしまう!そんなことを考える露伴を知らずに仗助は顔を覗き込む。そしてポツリと言った。

「何かよー……俺、露伴が苦しそうにしてるとすげぇ心配になる。なんでかは知らないけど。だから、その……そんな顔すんなって」
「……!」

その言葉にギュッと心臓が締め付けられる感覚がする。しかし、いつもより幸せな感覚の苦しさだった。

「じゃ。億泰待て!」
「……騒がしいやつだ」

走っていく仗助を眺め不思議と笑みがこぼれる。あぁ、そうかこれは……。自覚した露伴はそう言えば用事があるんだった、と我に返った。
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