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承太郎が下駄箱を開けるとガサッと大量のチョコレートが落ちてきた。赤や青のリボンで丁寧にラッピングされてある。

「あぁ、そうか」

元々空だった鞄にせっせと詰め込む。今日はバレンタインデー。思いを馳せる人にチョコレートを渡す日。大量のチョコレートをどう処理しようか、そもそもこんなに食べれない。と考えていると後ろから声をかけられる。

「おはよう、承太郎。チョコたくさんもらったんだね」
「あぁ、はよ花京院。やれやれ……毎年飽きない奴らだ」

チョコがたくさん入った鞄を漏って承太郎と花京院は教室へと向かった。
教室に広がる奇妙な光景。承太郎は肩を落とした。

「机の上に大量のチョコレート……承太郎モテモテなんだね」
「ここまで来ると嫌がらせだぜ……」

覆い尽くすように机の上にはチョコレート。周りから見たら羨ましいと思うだろう……だが承太郎にとってはとても厄介である。毎年毎年こうもたくさん来るとチョコレートが嫌いになってしまいそうだ。

「どうするか……」
「僕のカバンにでも入れるかい?」
「頼む」

ガサガサたチョコレートを無尽蔵に鞄に入れる。

「いいなぁ、こんなにもらえて」
「嬉しくねぇ」
「どうして?」
「食べきれないだろうが」
「まぁ、そうかも」

その後も屋上にいたりして帰ってくるとチョコレートが置かれているというとんでもないことが起こっていた。なんとかその一日を終えた二人。

「巻き込んじまったみてぇで悪かった」
「いや、僕が好きでついて行ったんだしでも困ったな……」
「何が?」
「こうも沢山もらっていると、僕が渡しにくくなっちゃったなぁ……」

困ったような笑顔で鞄を開く。中には沢山のチョコレートがあるがその中から小さな包みを取り出して承太郎に差し出す。

「僕も嫌がらせに付き合おうか。はい承太郎。僕からチョコレート」
「花京院から……?」
「えぇっと、まぁ何ていうか……ちょっと恥ずかしいんだけど……本命、って事で」

恥ずかしげに目線を外している花京院、とキョトンとしている承太郎。しばらく無言が続いた。すると承太郎が差し出された包みをスっと貰う。

「その、ありがとな花京院、嬉しいぜ」
「そ、そうかい?でも沢山貰ってるから食べきれないとかあるしさ……」
「いや……嬉しいぜ。お前からのだし」
「えっ?」
「なっ、何でもねぇ!帰るぜ」

ぼそっと呟いた後に赤らんだ顔を隠すようにスタスタと歩いていく承太郎を慌てて追いかける。

「まっ待って承太郎」
「……」
「承太郎?」
「ホワイトデー、ちゃんと返す」
「……!」

夕焼けが照らす帰り道を二人は並んで帰った。
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