第7章
夢小説設定
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「朔姫夜様、戴冠式の前に少しお話が。グラミア王からの遺言があります」
戴冠式が始まる前にロイドに声を掛けられた。
「ハインツ様と共に風の歌を歌いウィンダミアの力となって欲しい」
「えっ…ですが……」
「キースの為にも歌を歌って下さい、朔姫夜様。キースは朔姫夜様の歌声に共鳴し今まで以上の力を発揮する。キースにもうあの様な怪我を負わせたくはないでしょう?」
あの日、貴女の歌声がなかった為にワルキューレの歌声に共鳴したΔ小隊の兵士に怪我を負わされたのですよ、キースは…
貴女の歌声があったらキースは片目を失わなかった筈
おそらく式の途中で新統合軍が攻撃を仕掛けてくると思われます、朔姫夜様とハインツ様の歌声で空中騎士団にお力を…
キースが敵の攻撃を受けない様に、朔姫夜様の歌声で覚醒させて頂きたいのです。
「……分かりました…」
あの後キースは意識を取り戻したが、負傷した右目は光を失ってしまった。
自分が歌を歌わなかったからキースを護る事が出来なかったのだと朔姫夜はずっと後悔していた。
自分が歌わない事でキースを失うのは絶対に嫌だと思っていた朔姫夜は、不本意でも風の歌を歌を歌う事を承諾した。
式が始まりその様子は銀河ネットワークで生中継されていた。
ロイドは演説の途中で7年前の新統合軍が次元兵器をウィンダミアに投下した監視映像を流した。
その後、このまま制風圏を拡大し銀河中枢へと進軍して統合政府を打倒すると告げた。
「これはグラミア陛下の遺言である。そして我等が築く新たな文明の王となられるお方こそ ハインツ・ネーリッヒ・ウィンダミア陛下である」
ロイドの背後の床がゆっくりと開き、ハインツと朔姫夜が姿を現した。
「もう1つグラミア王の遺言がある。それは…ハインツ陛下と朔姫夜様の御婚約。グラミア王は2人が力を合わせウィンダミアに良い風を吹かす事を願っておられた」
ロイドの言葉に朔姫夜は目を丸くして驚きキースの方を見ると、キースは一瞬驚いた顔をしたがその後、平静を装いロイドをジーッと見つめていた。
ハインツはロイドの方を見た後、朔姫夜とキースの方を見て朔姫夜の表情からキースを慕っているのだと感じた。
だがその事には振れずに立ち上がり新国王としての言葉を述べた。
「ーーー 『ルダンジャール・ロム・マヤン (真なる王の名の下に)』」
ハインツが歌い出すと優しく風が吹き始め、朔姫夜がハインツに続いて歌い始めると雲の切れ間から光が差し込み辺りを暖かく包み込んだ。
そしてその歌声に反応し遺跡のある全ての場所にラグナと同じ巨大システムが亜空間から転移して来た。
「何だか朔姫夜辛そう…」
「朔姫夜の歌声、いつもと違う」
「チクチク痛くて胸が苦しい」
中継を見ていたワルキューレ達は朔姫夜が不本意で歌っているのを歌声から感じ取っていた。
新統合軍がウィンダミアに接近している知らせを受け空中騎士団が出撃、片目を失いルンが研ぎ澄まされたキースは朔姫夜の歌声の力と共鳴し限界速度を超え1人で新統合軍の艦隊を壊滅させた。
「朔姫夜姉様」
戴冠式が終わった後ハインツが朔姫夜に声を掛けた。
「陛下、私達は婚約したのです。もう姉様ではありません」
「ですが…本当に良いのですか?朔姫夜姉っ…朔姫夜は兄様の事をーーー」
ハインツの言葉を遮る様に朔姫夜は人差し指をハインツの口元に近づけた。
「…伯父様の遺言です。それに従いましょう」
グラミア王は朔姫夜の事を実の娘の様に大切に育て、『王』や『陛下』ではなく『伯父様』と呼ばせていた。
その愛情に報いる為、朔姫夜は遺言に従う事にしたのだ。
「…本当にそれで良いのですか?」
「ええ…それで良いのです」
ハインツは朔姫夜が無理をしているを分かっていたが、それ以上何も言わなかった。
平気なフリをしてその場を立ち去った朔姫夜だったが、部屋に戻り1人になると声を押し殺してその場に泣き崩れた。
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