第3章番外編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
エロ本騒動! part.1
これはある晴れた日の出来事。
厨房でお腹をいっぱいにしたユキは何か楽しいことを探していた。
今日はクィディッチの練習もそして罰則もない、何もない放課後。
あーあ。スラグホーン教授の所に自習で分からなかったところを聞きに行ったセブについて行ったらよかったな。
ユキはそう思ったが、その時はその時でお腹が減って仕方がなかったのだ。腹の虫をぐーぐー鳴らしていてはセブルスも集中できなかっただろう。
セブはいつ頃、地下牢教室から出てくるだろうか。
と考えていたユキの足が止まる。
見えるのは湖の湖畔の大きなブナの木の下。そこには4つの人影があった。
ユキはニヤリと口角を上げる。なにやら影たちはコソコソしている様子。
これは面白いことがあるに違いない。
ユキは忍び足で近づいていくことにした。
「今月号は保存版だね!」
「先月のよりは……あ!勝手にページめくるな!」
ブナの木の下にいたのは悪戯仕掛人たち。
ジェームズとシリウスが本を読んでいて、その後ろからピーターが覗き込んでいる。
下り坂になった湖に近いところでは後ろ手に手をついて足を投げ出しているリーマスが友人たちの様子を呆れ半分、面白半分の顔で見つめていた。そのリーマスの瞳がパチパチと瞬かれる。
『シー』
ユキは自分の存在に気が付いたリーマスにジェスチャーで静かにするように伝えた。
うっと慌てた様子をするリーマスにユキの期待は高まっていく。リーマスが声を出す前にピーターの横に並んで一緒に本を覗き込んだ。
『わあお』
「「「うわあ!!!」」」
ユキの目に飛び込んできたのは水着姿のお姉様。悪戯仕掛人たちが見ていたものはいわゆるエロ本だった。
突然のユキの出現に心臓をバクバクさせて驚く悪戯仕掛人たち。
ユキは驚き固まる悪戯仕掛人の手からパッとエロ本を強奪した。
『綺麗なお姉さんがいっぱい』
「こら!返せ!」
『やーだね!』
ユキはシリウスの手をひらりとかわしてパラパラとページをめくる。
『私、これ知ってる。エロ本でしょう!』
「ぶっ」
どうだと言わんばかりに胸を張るユキにリーマスは堪らず吹き出し、他の3人は呆れからポカンと口を開けてしまう。一番初めに我に返ったのはジェームズだ。
「声高に言うことじゃないからね!」
『そりゃそうだよね。これって没収されるべきものだもの。理由は知らないけど』
ユキは今までにもエロ本を見たことがあった。ホグワーツは年頃の少年たちが生活している場所なのだ。たとえ禁止されていようとも誰か彼かが持ち込んで楽しんでいる。
ユキは何故男子生徒が熱心に見ているのかは知らなかったが、それがコソコソ見るものであるとか、見つかったら没収されるものであることは知っていた。
だから、格好の弱みを握れたと大得意になっていたのだ。
『ちなみにこれ誰の?』
「「「ピーター」」」
「えええええぇぇえええ!!!」
ピーターが突然の裏切りに叫んだ。
『この反応はピーターの物じゃなさそうね』
ユキが怪しい2人に視線を向ければ、
「「ジェーシリムウスズのだ」」
ぐちゃぐちゃな答えが返ってくる。
「シリウスが持ち込んだものじゃないか!」
「お前が買い取っただろう、ジェームズ!って待て、ユキ!」
質問しっぱなしで興味を失ってエロ本を読んでいたユキの手からシリウスがパッと本を奪い返す。
『あ!読んでたのに!』
「どこまで読んだ?」
『まだ全然だよ』
「はぁ。そうか。良かった」
シリウスはホッと息を吐きだす。グラビア写真まではいいが(本当は良くない)生々しい文章までユキに見せたくなかったからだ。
「これは大人の読み物だ。ユキにはまだ早い」
『私のどこが子供だっていうのよっ』
「そうやって直ぐに向きになるところだよ。このアヒル口とかなっ」
『ふがーーーー』
「ハハハ」
尖っていた口をシリウスに摘ままれてユキがキッと怒る。ただ、怒っていたのはユキだけではない。静かに成り行きを見守っていたこの人も……
「シリウス、駄目だよ。悪い手だ」
「うっ、いっ」
サクサクと芝生を踏んで歩いてきたリーマスはシリウスがユキの口を摘まんだ方の手をぐきっと捻り上げる。
「お!ゴングが鳴ったみたいだね」
ジェームズが楽しそうに笑う。ジェームズは親友2人がユキに熱を上げていることを知っているのだ。
「ユキの事を雑に扱うなんて……これは減点を言い渡すべきかな?」
「監督生の職権乱用だぞ!」
「シリウス、君を抑えられるなら乱用する価値はある」
「はあぁ。なんでマクゴナガル教授はこんな腹黒い男に監督生バッジを渡してしまったんだ?」
ぎゃいぎゃいといつもの軽い言い合いをするシリウスとリーマス。それを楽しそうに見ているジェームズ。困り顔のピーターと歩き出すユキ。
「「「「???」」」」
ふと気が付いた悪戯仕掛人はバッと一斉に自分たちから離れて城へと歩いていくユキを見た。その手には問題のエロ本が。
「「ユキ!」」
『へへーん。気づくの遅いよーだ。マクゴナガル教授に提出してあげる!』
鬼ごっこが始まった。
ユキは奪ったエロ本を片手に走り出す。
大慌てなのは最新号を奪い取られたシリウスとジェームズだ。ユキがマクゴナガル教授に自分たちのエロ本を提出すれば罰則を受けるのは必然。
全速力でユキを追いかけていく。
ユキは頭の上で本を振ってシリウスとジェームズを煽りながら吹きさらしの渡り廊下へと入っていた。
『さてさてどうしてやろう――――あ!』
笑い声を上げながら走っていたユキは慌てて持っていた本を背中の後ろに隠した。目の前にいるのはユキの親友であるリリー。
リリーは明らかに狼狽えているユキを見て人の好い笑みをにっこりと浮かべた。
「こんにちは、ユキ」
『うっ。こんにちは、リリー』
こんなものが見つかったらリリーに怒られちゃう!
ユキがどうしようかと考えていた時だった。
「僕のエロ本を返せーーーー!!」
考え無しのジェームズが廊下へと入ってきた。
時すでに遅しである。
『ジェームズが叫んでいるブツはこれです』
「まったく!!」
リリーは、観念したユキが隠していた本を見て呆れた叫びをあげた。そしてキッとジェームズを見る。
「ポッター!」
「ひっ。リリー!」
「これ、あなたのなのね」
「ち、違うよ」
「さっき“僕の本”だと言っていたでしょう。マクゴナガル教授に提出するわ。罰則を受けることね」
「待って。リリー、拗ねないで。僕が世界で一番素敵だと思っている女性は君以外いないよ!その本はちょっとした出来心なんだ」
「ぐだぐだ言い訳しなくて結構よ。興味ないってあれ……?ユキは?」
リリーは言い合うのをやめてハッとして辺りを見渡した。さっきまでここにいたユキの姿が見えなくなってしまったのだ。
「くそっ!逃げられた!」
「ユキったらどこに行ったのかしら……?」
スリザリンの白蛇はスルリとその場をすり抜けてどこかへと消えてしまったのだった。
『シリウスが読むなと言っていたページには何が書かれていたのだろう?』
無事に悪戯仕掛人の手から逃れたユキは落ち着いたところで本を読もうと適当な空き教室に入った。
椅子に座ってさて、読書の開始といこうと思ったのだが、ユキは気配を感じサッと視線を閉めた扉に向ける。そして足音を消して扉に近づき、一気に扉を開いた。
「うわっ」
バターン
ユキの前に倒れこんだのはレイブンクロー寮3年生のクィリナス・クィレル。別名、ユキのストーカーだ。
『またついてきていたの?』
「ライフワークですから。やっと探し出すことが出来ました」
という彼はどうやらユキをつけだしたのはつい先ほどからのようだ。今日のところはだが……。
『まったくもう。怪我はない?』
「はい。ところでユキ先輩は空き教室に入って何を?」
『エロ本読もうと思って』
「はい?!?!」
サラッと言われた言葉に目を瞬かせたクィリナスは、あぁ、そうか。何か聞き間違えたに違いないと思った。が、やはり聞いた言葉は間違いではなかった。
『ほらこれ』
ポカンとするクィリナスにユキは机のところまで行って本を取り上げて表紙をポンポンと叩いた。
『一緒に読む?』
「いえ結構です。興味無いので……でも……近くにいても?」
『読まないけど近くに?』
「はい」
ユキはクィリナスの言葉を不思議に思ったが、常日頃から変わった言動をする彼は自分の理解を超えている。今回も彼なりの思考があるのだろうと思い、諾と言った。
先ほどはゆっくり見られなかったからとユキは目次から読み始める。
目次を読み終わりページを捲ればきわどい水着を着た女性のグラビアページ。
綺麗な人だな……。
写真からでも醸し出されるセクシーさは自分にはないものでユキは思わずため息が出てしまう。
そんなユキの様子を対面に座っていたクィリナスはうっとりと眺めていた。
ユキの細くしなやかな指がページを捲る様子(エロ本だが)、黒い瞳を伏せて真剣な眼差しで本(エロ本だが)を読んでいる姿は美しい。
「あぁ……神々しい」
うっとりとクィリナス。
『へぇ。こんな感じの人がタイプなんだ』
「えっ……?」
カチリと固まるクィリナスの目の前に広げていたページを掲げるユキ。
『ページ破ってあげようか?』
「な!違います、誤解です!!」
誤解をされたクィリナスはガタンと音を立てて立ち上がって両手をブンブンと振った。
『遠慮しなくていいよ。これどうせジェームズのだし』
ユキはビリリとページを破ってクィリナスのローブのポケットに破ったページを突っ込んだ。
その時だった。ユキの耳に大勢の人の足音が聞こえてきた。その足音はこの教室に向かっている様子。
『誰か来るみたい』
ユキはシャツとベストの間にエロ本を隠した。それと同時に教室の扉が開く。
「あれ、こんにちは」
入ってきたのはカエルを手に持った生徒たちだった。
どうやらここでカエルの聖歌隊の練習が行われるようだ。
『ごめん。出て行くね。練習頑張って!クィリナスもまたねー』
「えっと、あのっ」
『お宝は大事にするんだよー!』
大きな誤解です!
クィリナスは追いかけて行こうとしたがカエルを手に持った生徒たちに邪魔されてユキを追いかけていくことは叶わなかったのであった。
自分の部屋で読むことにしよう。
ユキが寮へと向かっていると背中から声がかけられる。
『ユキ先輩』
「レギュラス。どうしたの?」
『クィディッチのことで……って、あなたこそどうしたんです?』
『えっと、なんのことかな?』
「なんのことって分かっているでしょう?ベストの中に隠しているそれですよ。いや、やっぱりいいです。ろくなことじゃなさそうなので。話はまた後でにします」
『あ!ちょっと待って!』
ユキは関わりたくないと言ったように自分の脇を通り過ぎて行こうとするレギュラスの手から鞄をひったくり、ベストの中に隠していたエロ本を突っ込んだ。
「今突っ込んだのって!」
目を剥くレギュラス。
『しっ。向こうからマクゴナガル教授が来る』
バッとレギュラスは振り返った。確かにマクゴナガル教授がやってくる。
この状況で見つかったら僕の私物だと思われるじゃないか!
レギュラスの背中に流れる冷や汗。ユキの方はというと証拠隠滅出来たと何事もなかったような顔で椅子に腰かけている。
「ユキ」
マクゴナガルがユキに気づき声をかける。
サーっと青ざめていくレギュラス。
ユキはそんなレギュラスの様子を楽しそうに見ながら口を開く。
『何か御用ですか?』
「時間のある時にマダム・ポンフリーのところへ行きなさい。先ほど医務室に行ったらあの件が纏まりそうだと言っていました」
「それは本当ですか!?」
ユキの声が跳ねる。
「スラグホーン教授の人脈のおかげです。よくお礼を申し上げなさいね」
『はい!』
ユキの頭の中からはすっかりエロ本のことは消えていた。
癒者を目指し始めたユキ。あの件とはブルガリアにある病院に手伝いとして勉強に行かせてもらえる話だった。
『嬉しい!嬉しい!わーい!』
「あ!ちょっと!」
ユキはピョンピョンと飛び跳ねる。
ユキはこの嬉しいニュースを親友のセブルスに伝えようと走り出す。寮にいるかもしれない。いなくても談話室で待っていよう。
ユキは廊下を全速力で走っていく。
合言葉を早口で言ってユキは談話室に飛び込んだ。そこにはうねりのある黒髪を持つ少年がソファーで本を読んでいる。
『セブ!』
「ユキか。どうした?走って来たのか?」
『セブに会いたくって!』
「なっ!」
セブルスの頬にじわりと熱が集まる。
意識している相手にこう言われれば当然だ。
ユキの方は興奮しているのかセブルスの様子に気がつかずに彼の隣にポーンと座った。ソファーのスプリングをギシギシいわせながら座ったユキは満面の笑みをセブルスに向ける。
『あのね、私ね!』
「ユキ先輩!」
ユキの言葉を遮ったのは息をゼーゼー言わせながら談話室に入ってきたレギュラスだ。
レギュラスはキッとユキを睨みつける。
「人に迷惑をかけてほっぽり出して!あなたって人は!!」
『ごめん、ごめん。エロ本預けっぱなしにして。読んだ?』
「読・ん・で・ま・せ・ん!!そんな暇あったと思います?こんなもの持っていたくないから全速力で追いかけてきたんですよ」
『暇があったら読んでいたと』
「読・み・ま・せ・ん!」
大声を出したレギュラスはハッとして顔を赤くした。周りを見ればどうしたんだ?と言った寮生の顔が目に入る。会話の内容までは聞こえていないのが幸いだ。
「レギュラス……」
「~~~っ!!」
「わ、分かっている。落ち着け。お前も苦労しているんだな」
セブルスは自分の方を見て怒りから言葉が紡げず目で怒りと苦労を訴えてくる後輩に、分かっていると溜息で同情を示した。
『そうだ。セブは誰が好み?』
「勝手に鞄を探らないで下さい」
ユキはレギュラスから鞄を奪ってゴソゴソと悪戯仕掛人から奪ったエロ本を取り出した。しかし、その本をヒョイとセブルスに取られ―――――
『あ!』
ポンと燃え盛る炎の中に投じられた。
あっという間にエロ本は灰になる。
『なんてことを!』
「こんなもの持つことはルール違反だ。それに見つかって減点されたらどうするんだ?」
「現に僕がいなければマクゴナガル教授に見つかっていましたしね」
「そもそも誰のものだ、あれは」
『悪戯仕掛人』
「「だと思った(思いました)」」
セブルスとレギュラスは「はあぁ」と同時にため息をつく。
ユキはセブルスとレギュラスの間で不服そうだ。
『あの本には綺麗の秘密が詰まっているのに』
「アレが良い教材とは思えないな」
『セブも読んだことあるんだ』
「ない!断じてない!」
エロ本を目前にした時は冷静だったセブルスだが調子を狂わされて叫んでしまう。セブルスはまたユキのペースに引き込まれてしまったと頭を抱えた。
「ユキ先輩は綺麗になりたいんですか?」
『うん。色気のあるお姉さんに憧れるんだ』
「また何でです?」
『それは、うーん』
表情筋が死んでいる 人形みたい
『何となくかな』
ユキはふと暗部訓練生時代の記憶を思い出したが直ぐに肩を竦めてレギュラスに笑いかけた。
「自然が一番ですよ」
『自然か』
自信ない
「そんなに暗い顔をして……アレを焼かれたのがそんなに堪えたか?」
『っ!?』
ユキは驚いてセブルスを見た。
『私……暗い顔してた?』
「あぁ。食べたかったものを目の前で食べられたような顔だ」
ユキはパッと自分の顔を両手で挟む。
『私って……分かりやすい?』
おずおずと聞くユキにセブルスはふっと微笑みかける。
「ユキの表情はコロコロ変わる百面相。珍妙で見ていて飽きない」
ユキは暫し驚いた顔でセブルスを見、そして表情を崩した。
表情が豊か――――人間らしいと言われたような気がしたからだ。
『ありがとう、セブ』
「変な奴」
『あ!さっき珍妙って言ったわね!』
「今頃か」
フンとセブルスはユキを鼻で笑った。
そんなセブルスの涼しい顔を歪ませてやろうとユキは飛びかかる準備をする。
『意地悪言う人にはこうしてやるっ』
「ヤメロ!わあっ」
セブルスは自分をくすぐろうとするユキを慌ててはね避けようとするのだが、なにせ馬鹿力のユキだ。簡単には離れてくれない。
この行動の方があの本より問題だ!
「ユキ先輩は外見よりも内面を磨くべきですよ」
『わわっ』
レギュラスが羽交い締めでユキをセブルスから引き離す。その表情は面白くなさそうだ。それは何故ならレギュラスもまたユキのことが気になっているから。
「綺麗を目指すなら、淑女の立ち振る舞いを学んではいかがですか?僭越ながら僕が指導させて頂きますよ?」
『レギュラスの指導とか絶対スパルタじゃん。やだー!』
「あっ」
ユキはジタバタとレギュラスの手を逃れてセブルスの後ろへと回る。
『レギュラスのドS!エスエス』
「そんなこと大声で叫ぶのは止めてくださいッ」
「2人共僕の周りで追いかけっこはやめろ!」
わーわーと賑やかな声が響くスリザリン寮の談話室。
この時の2人はまだ知らない。スリザリンの白蛇ことユキがある企みをしていた事に……
「グッドモーニング、坊や」
「「ぎゃああああ!!!」」
翌朝のスリザリン男子寮寝室に響く2つの声。
違う部屋、セブルス、レギュラス、それぞれの枕元にはユキの魔法によって引き伸ばされた等身大のグラマーな女性の写真がペラペラと立っている。
「「あんの馬鹿(先輩)!!!」」
何事かと起き出した同室のからかい声に口笛。笑い声。
恥ずかしさといたたまれなさに頭を抱えるセブルスとレギュラス。
この話は寮の外にまで流れ、セブルスとレギュラスは事情を聞かせるようにとスラグホーン寮監のもとへとお呼び出しされたのだった。
「ユキ、例の本を返してくれないかい?」
『あれ燃えたよ』
「僕のお宝があああぁぁ!!」
「五月蝿いわよ、ポッター!」