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教えて、先輩
コンコンコン
放課後、立海レギュラーメンバーが部室で部活の用意をしていると扉がノックされた。
「私が出ますね」
扉の一番近くにいた柳生が扉を開ける。
そこにはーーー
「雪野さん」
部室にいた全員がパッと戸口に視線を向ける。
『こんにちは、柳生先輩。よく私の名前ご存知でしたね。驚きです』
柳生の前に立つユキは両眉をあげて驚きを示した。
「どうしてここにいるきに?」
「雪野さん、ガムいるか?ガム!」
柳生を押し退けてユキに近づく仁王とブン太。
「コラコラ。仁王にブン太、雪野さんが驚いているじゃないか。彼女から離れなよ」
「「っ!?」」
仁王とブン太はブンっと振り返る。
そして冷や汗をタラリ。
そこにあったのは幸村の黒い微笑み。
仁王とブン太は自分達の方へとやってくる幸村から離れるように慌てて部室の奥に引っ込んでいく。
「雪野さん、騒がしくてごめんね。僕はテニス部の部長、幸村精一。用件を聞くよ」
にこりと女子生徒が即倒しそうな笑みを精一はユキに向ける。
先程からテニス部の面々がユキに釘付けになって、ユキに話しかけようと必死になった訳を説明しよう。
それはユキがそこら辺の読者モデルよりもずっと美人で可憐な容姿をしていたからである。
彼女の存在はテニス部のレギュラー陣面々と同じくらいこの学校で有名であった。
「この中の誰かに用事?」
『はい。赤也くんに用事で・・・』
「俺?あ!も、もしかして告は『今日補習の日だよ』
赤也の言葉に被せるようにしてユキが言う。
ガクリと項垂れる赤也。
「ちぇっ。告白だと思ったのに」
「それより赤也。補習とは?」
じわっとした見えない圧力をかけながら柳が問う。
「実は、この前やった中間試験の成績が悪くって・・・再試なんです」
ピカッ ドン
「ばっかもんがーー」
赤也の頭の上に真田の雷が落ちた。
「す、すみません~」
「何のテストで赤点とったんだい、赤也?」
「数学、理科、社会、英語・・・」
赤也に訊ねた幸村の黒さが増していく。
「国語を除いて全滅ってわけか」
「ひっ」
赤也は黒いオーラを背負う幸村を前に身を小さく縮める。
そんなどす黒い部室の雰囲気をぶち壊したのは一人幸村のオーラに気づかないユキだった。
『赤也くん、早く行こう。先生も待ってるし、私も補習終わったら少しでも部活に出たいから』
!?
その場の部員全員の上に浮かぶ!?マーク。
「もしかして、雪野さんも補習きに?」
『はい。お恥ずかしながら。赤也くんと同じく国語以外全滅しました』
頭の後ろに手をやってタハハと笑うユキ。
そんなユキを見て幸村はニコリ。
「その補習って何回あるんだい?」
『1教科45分、1回ずつです』
ユキはそう言ってからおずおずと
『実は、先生から再試でも赤点取ったら部活の試合に出させてもらえないって言われているんです・・・』
と言った。
部員から「「「「「「ええっ!?」」」」」」
と驚きの声が上がる。
赤也はエース。テニス部に欠かせない存在だ。彼が試合に出られなくては困る。
「1教科45分、1回ずつの補習だけじゃ足りなさそうだね・・・」
眉をひそめる幸村。
『私もそう思っているんです』
ユキはしょんぼりと肩を落とした。
実はユキは弓道部のエースなのだ。
雪野ユキ、外見は可愛いが残念な美少女である。
「どうしたらいいかな・・・」
暫しうーん。と考える幸村。
ユキが何かを考える幸村を見つめていると、彼は顔を上げて笑みをユキに向けた。
「俺たちが赤也と雪野さんの勉強をみてあげるよ」
『えっ!?』
「うちの赤也の勉強をみるついでだ。雪野さんの勉強もみてあげるよ。
うちには柳生と柳もいるし、多少なりとも俺もみてあげられると思うし」
幸村の言葉にユキの目が輝き出す。
『是非とも宜しくお願い致します!』
ユキはブンと勢いよく頭を下げたのだった。
そしてテニス部によるユキと赤也の補習授業の日がやってきた。
「まずは一番苦手な科目からいこうか。雪野さん、一番苦手な科目はどれかな?」
『英語です』
「プリ。赤也と同じじゃ」
「それじゃあ英語から始めようね」
二人は教科書とノートを広げて本日の講師である幸村、柳、柳生を見上げた。
今日の天気は雨。
よって、真田、仁王、丸井、ジャッカルも部室におり、二人の様子を眺めている状況だ。
「まずは二人の理解度を知りたいから今から英文を訳して貰おうか。まずは雪野さんから」
幸村がニコリと笑いながら教科書を指差した。
The price of rice falls.
『米王子が「ちょっと雪野さん!?ストップ!ストップだ!」
立海の突っ込み役、ジャッカルが直ぐ様反応した。
「雪野さん、良く文字を見てください」
柳生が困ったように眉を下ながら文字を指差す。
『あっ・・・nが入っていない・・・』
「そうだ。では、改めてこの文の訳は何になる?」
柳に問われて暫しうーん。と考えたユキは間違っているかもと不安な気持ちになりながら
『お米の値段が下がる』
と答えた。
「正解だ」
幸村が微笑み良くできたねと言うようにユキの頭を撫でる。
「正解したからご褒美だ」
ブン太がぴょんとやって来て、ユキに飴を差し出す。
『ありがとうございます、丸井先輩』
「ブン太でいいよ?」
『あ、はい。では、ブン太先輩。ありがとうございます』
ユキが頭を下げていると面白くないと言ったように幸村が唸る。
「幸村先輩?」
ユキが首を傾げると、
「ブン太だけ名前呼びなんてズルいな」
と拗ねたように言った。
『ええと・・・』
「俺のことも名前で呼んでよ。いいだろ?」
ドキンッ
ユキの胸が跳ねる。
幸村が目の前で爽やかに笑ったからだ。
端整な顔に浮かぶ笑顔がユキの鼓動を早くする。
「呼んでみて。精一って」
ユキはゴクリと唾を飲み込んだ。
ブン太の時とは違って改まった感じが、ユキの幸村の名前呼びをしづらくさせていた。
「ほら、早く」
『せ、せい、ぃ・・・先輩・・・』
「ん?聞こえないな」
『せ、精一先輩っ』
ユキの顔は今や真っ赤だ。
照れた様子でようやく自分の名前を呼んだユキを見ながら精一はご満悦の様子。
「俺も雅治って呼んでもらいたいきに」
「私も比呂士でいいですよ」
「俺も蓮二でいい」
「じゃ、じゃあ俺もジャッカルで!」
波に乗り遅れないようにとくわっとジャッカルが言う。
そんなジャマイカルに驚くユキはレギュラー達の顔を見渡して、でも、先輩達を名前で呼ぶなんて気が引けますと弱々しい声で言った。
「ユキちゃん気にしないでよ。俺達はそう呼んでほしくて言っているんだから」
ふわりと幸村が微笑む。
「みんな、ユキちゃんと仲良くなりたいって思っているんだ」
暫し見つめ合うユキと幸村。
ユキはふっと表情を緩めて頷く。
『分かりました。では、僭越ながら、先輩たちの事、お名前で呼ばせて頂きますね』
ニコリと花が綻ぶように笑うユキに立海レギュラーたちは皆見惚れてしまうのだった。
その後、幸村が英語を教え、柳生が数学を教え、柳が理科を教える。
歴史に詳しい真田が社会の勉強の仕方を教え、柳が再試験の山を張る。
「試験まで週一回、一緒に勉強しよう」
幸村の申し出をユキはありがたく思いながら受けた。
ユキは回を重ねるごとにレギュラー達と仲良くなっていき、レギュラーたちは素直で明るく、ほんわかした雰囲気のユキに愛しさを募らせていく。
「再試験、落ち着いてやれば大丈夫だからね」
『はい、精一先輩。先輩たちも今日まで勉強を見て頂きありがとうございました!』
「ユキがもうここに来なくなると思うと寂しいのう」
「そうですね」
仁王と柳生が眉を下げる。
「ユキちゃん、試験で全教科70点以上取ったら何か奢ってあげるよ。ジャッカルが」
「俺かよっ」
丸井とジャッカルの会話にユキはクスリ。
「今日は早めに寝るように」
『はい、蓮二先輩』
「自分を信じてしっかりな」
『ありがとうございます、真田先輩』
ユキは真田から赤也に視線を移す。
そしてニコっ。悪戯っ子のように笑いかける。
『ねえ、赤也くん、勝負しない?』
「テストの点数で勝負だな!」
『うん!』
「いいけど、でも、勝負するなら何かを懸けないとな。つまらないだろう?」
ニヤリとする赤也にユキも受けて立つと言ったようににやっと笑う。
『その勝負、受けて立つ!』
後日、再試験が終わったユキが部室へと訪れる。
彼女の足取りは軽い。
『せんぱーい!良い点数取れました。こんな良い点取れたの初めてです!』
部室に響く明るい声。
立海レギュラー陣が見守る中、ユキと赤也はテストをバンっとテーブルに広げたのだった。