第三章番外編
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巡り逢い
*3章7話
翁の仮面を被った怪しい男。
一回戦を一位の成績で通過し、二回戦は何故かドクタケ忍術教室の講師の男に手助けされた男。
「ふざけた仮面なんか被りやがってよぉ。なめてんのかぁ?」
正体を探る絶好のチャンスがやってきた。
二回戦と三回戦の間の小休憩。
厠を終えた私は偶然、我らタソガレドキ忍軍の間で要注意人物として名が挙がっていた酒呑童子を見つけ、後をつけている。
「おいっ何とか言いやがれっ」
ドクタケ忍術教室講師、魔界之小路に助けられたという事はあいつはドクタケ忍者の可能性が高い。
さて、その実力はいかほどか・・・
井戸の影から三人の山賊に囲まれている男を見る。
ふむ。随分と余裕そうに構えているじゃないか・・って、あれ?
『た、タイム』
「今更遅ぇぞ!その面見せやがれッ」
あれ?今、ずいぶん声が高くなかったか??
気のせいだろうか?と首を傾げながら見ていると、先ほどの余裕は何処へやら。急に酒呑童子が慌てた様子を見せ、後退していった彼は背後の壁に背中を打ち付けた。
山賊の頭と思しき者に仮面を剥がされた彼の素顔。
美丈夫なその顔は気の毒なほど怯えてしまっている。
これも演技なのだろうか?
そうだったら厄介な相手になりそうだ、と観察しているうちに山賊たちは酒呑童子との距離をジリジリと詰めていく。
『ちょ、お、落ち着こう』
声を震わせる酒呑童子はブルブル震えている足でやっと立っているといった様子。
ん~これは助けに行った方がいいだろうか・・・?
とも思ったが、私も任務中だ。
可哀相だが騒ぎに巻き込まれて私の素性が誰かにバレてしまっては大変だ。
それにまだ彼が忍でないことは確定したわけではない。
そのまま様子を見ることに決めた私。
追い詰められた酒呑童子に向かって山賊が大きく拳を振り上げる。
避けるか、受けるか、はたまた・・・・
「っ!?」
バチンッ
意外な展開に目を瞬く。
突然、酒呑童子がいる横の垣根から少年が飛び出してきて酒呑童子に振り下ろされるはずだった拳を受け止めた。
ということは、あの少年は酒呑童子の守人?
そうすると酒呑童子は相応の身分のある者ということか??
なおさら正体が知りたい。お前の正体は――――――――
「ごめんね。遅くなって」
『雷蔵くん!!・・・で合ってる?』
「あ、合ってます!もう、ユキさんったら・・っユキさん!?」
え・・・嘘だ・・・・
酒呑童子の大きな声がハッキリと私の耳に届き、私の中の時が止まる。
ドキドキと次第に速度を上げていく心臓。
短い言葉、しかも震えた声で今まで聞き分けられなかった声を今はっきりと聞くことが出来た。
忘れもしないその懐かしい声、懐かしい名前。
あの日のことが頭の中に鮮明に蘇ってくる。
思い出す、あの日のこと――――――――
「え、ええっと、ユキさん!?!?」
『怖かった』
ユキ・・・さん・・・・
間違いない。彼女だ。
私はようやく、彼女に巡り会えたのだ!
『もうっ。雷蔵くんったら話鵜呑みにしないでよ。子分っていうのはこいつらが勝手に言っているだけなの。私は認めていません。非公認です!』
私は急に打ち解けたように話し出す彼らに目を向ける。
今までどこをどう探しても手がかりさえ見つけることの出来なかった彼女が私のすぐ近くにいる。
私の心が嬉しさに打ち震えている。
「「「え~~俺たち公認じゃないんすか!?」」」
『あったりまえだッ』
あの日以来、ずっと探してきた人。
あの日以来、ずっと想い続けていた人。
あなたに会えて嬉しい・・・!でも、ユキさん。
その風貌は?その少年との関係は?あなたは何者なんですか??
もし、もしも彼女も忍だったなら。そしてもし、彼女がタソガレドキ城と敵対する城の忍だったとしたら・・・いや、想像だけで悲観するのはやめよう。兎に角、今は様子を見てみよう。
ユキさんと少年がこちらへやって来る。
急いで井戸の裏から出てどこかの家の裏口を開けて身を隠す。
私の前を通り過ぎていくユキさんたち。
「震えてる」
『あ、はは・・・バレちゃっ、た・・』
甘い雰囲気が漂う路地。
私は、少年に抱きしめられ、慰められているユキさんを見て胸を焦がす。
あなたは忍・・・?それとも、どこかの姫・・・?
『さあ、会場の方へ行こう』
私は笑顔が戻ったユキさんと少年が手を繋ぎ、歩き去るのを見送る。
クスクスと楽しそうな笑い声が風に乗って私の耳に届き私の胸を悲しく軋ませる。
君は、誰・・・・・?
知るのが怖い。でも、知りたい。
「痛ッ」
『っ!?(チャンスだ!)』
三回戦の出場者が集まる天幕の中から外へと逃げた彼女を見送る。
「ねぇ、君。一組目の試合、どうなっていると思う?すごい歓声だよね」
「えっ?あ、あぁ。そうっスね」
君は誰?そう思いながら変装がバレるのを恐れているらしい彼女を助けるために、ユキさんに話しかけていた少年の気を逸らすように、少年に声をかける。
少年と雑談をする私の心は天幕の外。
私は、夢でもいい。もう一度会いたいと思う人にようやく会うことが出来たのだ。
私の命の恩人
私の想い人
積もり積もった想い・・・・
知るのが怖い。
でも、私は君が誰であるかを知りたいのです。
ユキさん、あなたは何者なのですか ―――――――?