第二章番外編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
秘密の花園
「きり丸、どこまで行くんだ~」
「あとちょっとでーす」
先ほどから何度か繰り返されたこの会話。
私は今、きり丸に見せたい場所があると言われて森の中を歩いている。
いったいどこに連れていかれるのだろう?
そう考えていると、
「そこの茂みを抜けたら到着っす」
きり丸が振り向いてニシシと笑った。
茂みを抜けてついた先にあったものはーーー
「おおっ綺麗だな」
そこにあったのは一面のユリ畑だった。
白百合が風に揺れ、百合の甘く芳香な香りが胸いっぱいに広がる。
「よくこんなところを見つけたな」
「バイトでキノコ採りをしていた時にたまたま見つけたんすよ。どうですか、ここ?」
「うん。よい場所だ」
「そうじゃなくって~」
何故か呆れた顔のきり丸に訳がわからず首を傾げると「ユキさんを連れてきたらどうっすかって意味ですよ!」ときり丸に言われて驚いてしまう。
「ユキをここに?!私が?」
「そうっすよ。そうじゃなきゃワザワザ土井先生をここに案内したりしませんって」
再び呆れたようにきり丸が言う。
「し、しかしなあ・・・私が連れてこなくても、きり丸、お前がユキをここに案内すればいいんじゃないか?」
そう言うと、きり丸はむーっと膨れてしまった。
「土井先生!自分の状況分かってます!?先生は今、大ピンチなんですよ」
「大ピンチ?」
目を瞬く私にきり丸は「ユキさんは中在家先輩とお勉強したり・・・」「久々知先輩とは一緒にお豆腐作ったり」と、次々とユキと上級生たちとの関わり合いを話していく。
一方の聞いている私の方は冷や汗ダラダラ。
知らなかった・・・
ライバルたちが密かにユキにアプローチを仕掛けていて焦る。
「そーいうわけだから土井先生!ユキさんをここに連れてきてデートして下さい」
一所懸命に自分に訴えるきり丸を半助は見る。
いつもならば、「余計なお世話だっ」とか「大人の関係に首を突っこっむんじゃないっ」とかきり丸に拳骨を落としながら言っていたろうが今回はそうは出来なかった。
きり丸がやたらと真剣な目で私を見ていたし、ライバルたちのことを考えると余計なお世話では決してないからだ。
それになにより、きり丸が一所懸命彼なりに私を応援してくれているのが嬉しかった。
・・・・・・よし!ここはきり丸の作戦に乗らせてもらおう!
「ありがとう、きり丸。それじゃあ今度の休み、ユキとここに来てみるよ」
パッと顔を輝かせたきり丸が「うん!」と元気よく返事をする。
彼のためにもこのデートを成功させたいと思った私だった。
そして次の休日ーーーー
私はユキと共にきり丸に教えてもらったユリ畑を目指して歩いていた。
「ここの坂は急だな。私が先に登って手を貸すよ」
『ありがとうございます』
私たちの手がふれあう。
それだけで胸が高鳴る。
ああ、私はユキに恋しているんだと実感する。
『あの、半助さん、手・・・』
上まで登りきったのにユキの手を離さない私にユキが首を傾げる。
嫌がられやしないかな・・・
私はそんな不安を抱きながらも思いきって「このまま繋いでいてもいいかい?」そう聞いてみる。
『~~っはい』
顔をパッと上気させた初々しい表情のユキ。
その表情を見て、私も自分の顔が熱を持つのを感じた。
「そ、それじゃあ行こう」
私は自分の赤い顔が見られないようにユキの手を引くようにして歩き出す。
ドキドキなる心臓の音が手からユキに伝わってしまいそうだ。
『は、半助さんっ』
「ん?な、なんだい?」
『もうすぐ、です、かね・・・?』
振り返ると、ユキの顔は真っ赤になってしまっていた。
これは先ほど手を繋いだときの反応とは違う。
山道を歩いて息が上がってしまったのだ。
前を見る。
「あの茂みを抜けたら目的地なのだが、ここで少し休むかい?」
『あの茂みの先・・・いえ、頑張ります!』
ユキがにこりと笑って答えた。
私たちは繋いでいた手をお互いにきゅっと力を入れて繋ぎ直してから茂みの中へと入っていく。
そして、茂みを抜けたその先ーーーー
『わあぁ素敵!』
隣から感嘆の声が上がる。
横に顔を向ければ頬を赤く上気させながらキラキラした瞳で百合畑を見るユキの横顔。
「気に入ってくれたかい?」
『えぇ!とても!』
百合畑に咲く笑顔。
きり丸に感謝しないとな。
半助は教師思いの可愛い生徒に心の中でお礼を言った。