第二章番外編
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恋に落ちるは一瞬で
*2章頭くらい
太陽が燦々と真っ青な空の中に輝いている。
そんな太陽とは対照的に、私はいつものようにどろ~んと暗い雰囲気を漂わせながら休憩を楽しんでいた。
午前中にろ組の良い子達に授業をした私は今、お気に入りの日陰に来ていた。
今は皐月。
柔らかな春の日差しを皆は喜ぶが私は違う。
皆が暖かいというこの日差しは私には暑すぎて、私は日差しを避けるように古びた倉庫と
木の間にできた、他の人に言わせると暗くてどんよりした空気を醸し出す、この日陰で休んでいた。
この場所を私は気に入っている。そしてこの場所には滅多に人が
近づかない。
この倉庫の中にあるのは壊れた梯子などで、普段は人が来ないというのもあるのだが、もう一つは、私の周囲を舞う青い人魂のせいだと思う。
私のこの暗い雰囲気のせいか、みんなには私の周りに人魂が見えるらしい。そこまで私は暗いのか、と半ば感動のような気持ちまで起こってしまう。
それにしても、暑いですね・・・・
季節はまだ皐月なのに夏のように暑い。
いつもならばこの場所はとても涼しいのに、今日はうっすらと汗が滲んできてしまう。
まだ皐月なのに・・・今年の夏を越せるでしょうか・・・
そんな弱気なことを考えていた時だった。
『うわっ!!斜堂先生!?』
大きな驚き声と共にこの春から事務員になったばかりのユキさんが現われた。
道具箱を抱えた彼女が私の前までやってくる。
『こんなところで何を?』
「暑いので日陰で休んでいたんですよ。言うなれば、日陰ぼっこをしていました」
『ぷっ。日陰ぼっこっなんて聞いたことありませんよ。面白いですね』
カラカラと笑いながら私の横に並んだ彼女はストンと私の横に腰を下ろした。
私はそんな彼女の行動に目を大きく見開く。
彼女は私や私の周りに浮かんでいるように見えるという青い人魂が怖くないのだろうか。
忍たまでも私を見て叫び声を上げながら走り去って行く者も多いのだから、くのたまでは尚更だ。
女子生徒たちが私を不気味がって近寄りたがらないのは私も知っていた。
それなのにユキさんは私の横に座り、手で顔を仰ぎながら『あぁ気持ちいい』と顔をほころばせている。
そんな彼女を、私はまじまじと見てしまっていた。
「斜堂先生?どうしたんですか?」
『私の顔になにかついてます?』と困った笑みで笑いながら言われてしまった。
「すみません」と私は彼女に慌てて謝る。
「ですが・・・」
『???』
「君は、私が怖くないのですか・・・・?」
「え?怖い、ですか?」
ポロっと疑問を零す私にユキさんは不思議そうな顔で目をパチパチと瞬かせる。
同じ学園の同僚で数々の経験を積んでいるくノ一の山本シナ先生ならばいざ知らず、 まだ会ってから日の浅い彼女が、私を怖がらない理由が分からなかった。
私に免疫の無い女性(男性もだが)は私を見ると驚いて逃げてしまうのが常だからだ。
まさか私の横でこんなにもくつろいだ姿で笑う女性が現れるなんて・・・
『斜堂先生は怖がられたいんですか?』
「へ!?」
『ぶふっ。冗談ですよ。私、斜堂先生のこと、怖いなんて思ったこと一度もありませんよ』
間抜けな声を出してしまった私を見て楽しそうに顔を綻ばせた後、ユキさんはそう言った。
きっぱり、ハッキリ言った彼女の私を見つめる黒い瞳。
意志の強そうなその瞳は、私の心をしっかりと捉えた。
あぁ、胸が高鳴っている・・・・
ザッと春の甘やかな風が吹き付けてきて私たち二人を包み込む。
その爽やかな心地よさに、私はそっと目を閉じる。
あぁ、これは恋ですね。
私には一生縁のないものだと思っていたのに、恋は突然に私のもとへとやってきた。
私が誰かに恋をすることなどないと思っていたのに、その人は、私のすぐ隣に存在している。
ライバルが多いから頑張らねばなりませんね。
冬が好きで、春など来なければいいと思っていた私のところへ、今、遅い春がやってきた――――――