第二章 十人十色
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9.湯煙万歳
『ファイアーーーソオオォォルッ!!』
「うーっるせぇ!風呂くらい静かに入らせろっ」
燃え盛る火に手をかざして気持ちよく火星を守護に持つ美少女戦士の必殺技を叫んでいたら留三郎から苦情がきた。
私はお風呂の追い焚き中。
ブーブー文句を言っていたら仙蔵くんから「お湯がぬるいっ!」の一言が降ってくる。人使いの荒い姑だ。鬼姑だ!
キーっと八つ当たりのように薪を放り込んでいると足元に影。
上を見ると窓に長次君の顔。
『もう少しで温かくなるからね!大丈夫?寒い?』
長次に話すときだけ口調が違うという文句を聞き流しながら尋ねると、
「いや・・・・重労働させてしまいすまない」
と長次くんは言った。
衝撃を受けて私の手から薪がポトリと滑り落ちる。
どうして同じ六年生でこんなにも人間の出来が違うんだろう?
留三郎と仙蔵くんは長次くんの爪の垢と言わず、爪ごと飲み込めばいい。
『長次くんったら気にしないで!これは事務員の仕事なんだから。
それより、肩まで浸からないと風邪ひいちゃうよ?ゆっくり温まって疲れをとってね』
優しい彼のために働いていると思えばこの薪割りも苦じゃない。
それに、さっきの長次くん―――湯煙の中、髪から雫がポタポタと落ちている色っぽい姿。
あぁ、生きてて良かった・・・
胸のあたりまでしか見えなかったのが想像力を掻き立てるよね。
口にしたら逮捕な事を考えながら、割った薪を追加して火に空気を送っていると上から賑やかな声。
何を騒いでいるんだろう?と顔を上げる。
「どんどーん!」
『!?』
ザバーーン
「小平太!下にユキいんのにかかったらどうすんだよっ」
文ちゃんの慌てた声が聞こえるがもう遅い。
私は先ほど長次くんが顔を出していた小窓から出てきた大量のお湯をかぶっていた。
当然ながら真下にいた私はビシャビシャ。
「そうだった!ユキ、かからなかったか?」
『びーーしょ濡れだッ阿呆!ギャウッ!?』
怒りに任せて手近にあった薪を投げたら小窓の鉄格子に当たって跳ね返ってきた。薪は見事額にクリティカルヒット。
うおー頭が割れそう。
私は地面にひっくり返って仰向けに倒れる。
この時代の星空って綺麗だな、ハハハ。
「伊作っ!ユキが気絶してしまった。手当を頼むッ」
「大変。手当するからお風呂に入っておいで」
『手当する気ないよね!?』
「復活したぞ。さすがユキだなっ」
伊作くんの言葉に勢いよく立ち上がって突っ込む私を見て、二カッ笑って拍手する小平太くん。
「早く入っておいでよ」と手招きしている伊作くん。
目眩がするのは額に薪がぶつかったからじゃないと思う。
「そういや今日は一年と風呂入らなかったのか?」
くつろいだ声で留三郎が言った。
『今日はお腹痛かったから別々にしたー』
ブルーデイ中はさすがに一緒にお風呂に入れない。
胃痛、腹痛、下痢だと言って、皆のお誘いを断り続けるのは心苦しかった。
今日は一緒に入ろうと思えば入れたと思うんだけどね。
一応予備日を設けて今日まで一人で入ることにしたのだ。
「ふうん」と私の事情を察して会話を打ち切った留三郎に感心していると文ちゃんが小窓から顔を出した。
「腹痛だったんなら早く言えよ。追い焚きはもういいから部屋帰って寝てろって」
どうやら彼は私の事情を察せなかったらしい。
上の空気がピシッと固まった。
『あーー、えっと、もう治ったから大丈夫。ありがとね』
優しい彼に顔を綻ばせる私に対して表情を堅くする文ちゃん。
「バカタレ!一生懸命なのは感心するが、体壊しちまったら元も子もねぇんだぞ?
あ?なんだ、仙蔵・・・あ!!・・・そ、そうだったのか」
仙蔵くんに言われたらしい。
耳の付け根まで真っ赤になった文ちゃんの顔が小窓から消えて、バシャンと水が跳ねる音が聞こえてきた。
『ありがとね、文ちゃん』
「お、おぉ。だが、あれだな。事情は違っても、その・・・女はこういう時は重いものを持たないほうがいいんじゃないか?」
やっぱり無理すんな、と照れた声がお風呂場で響いている。
私は胸をじーんと熱くさせた。
奥さんの妊娠が分かったら文ちゃんは積極的に家事を手伝ってくれるだろう。
子育てにも協力してくれそう。
『文ちゃんは良い旦那さん、お父さんになれるよ』
「!?な、なんだよ急に。変な奴だな・・」
「では子の父親には私がなってやろうか」
『お断りだッ」
仙蔵くんのせいでほっこりした気持ちが消し飛んだ。
続いて伊作くんの顔も現れる。
「僕は子供ができるまでに夫婦で色々楽しむ時間も欲しいな。
あ、でも、ライバル多いし既成事実作っちゃった方がいいのかな・・・?」
『いいわけなーーい』
小さい声でブツブツ呟いている伊作くんの後半の言葉が怖い。
私は燃え盛る火の前で体を震わせながら最後の薪を火の中に放り込む。
『じゃあ、ごゆっくり!』
絶対に一人で寝ないようにしよう。
兵太夫くんと三治郎くんにお願いして変質者撃退のカラクリも設置してもらおう。
私は逃げるように風呂焚き場から離れていった。
「お帰りなさい!」
『ただいま!』
部屋の戸を開けると乱太郎くんが可愛い笑顔でお出迎えしてくれた。
癒されるー。
「おじゃましてまーす」
「してまーす」
魔王の手から逃れて天使達のもとに帰ってこられた。
ビバ・パラダイス!
部屋の中には今日泊まりに来てくれる乱太郎くんの他に同室のしんべヱくんときりちゃんの姿もあった。
三人仲良く布団の上でゴロゴロしてたみたい。
『今日はしんべヱくんときりちゃんも泊まってくれるのかな?』
既に敷いてある彼らの布団を見ながら言うと「うん!」と元気な答え。
私の布団も敷いてくれている良い子たち。
「まだお風呂入ってないの?」
汗を拭きながら柔らかめの小袖に着替えていると乱太郎くんが小首を傾げて聞いた。
『今は六年生が入ってて、その後は夜間演習終わりの四年生が入ることになってるんだ。私はその後』
「お腹はもう平気?」
『ありがとう、しんべヱくん。すっかり良くなったよ!』
口々に良かったね、と言ってくれる皆に顔を緩ませる。
「くノ一教室長屋のお風呂は使わないの?」
『前に行こうとしたんだけど、くノ一教室長屋って罠がいっぱい仕掛けてあるでしょ?
たどり着けなくてさ』
私の言葉に何かを思い出したらしくブルブルっと小さく震える三人。
くノ一教室周辺は忍術学園の敷地の中でも群を抜いて危険な区域。
『さあ寝ようか』
4年生が帰ってくるまで時間がある。
「聞いてよ、ユキさん!今日の実技の時間にね――――
代わる代わる話してくれる三人。
布団に入った私は楽しくおしゃべりをして過ごした。
規則正しい寝息。
寝相の悪い三人にそっと布団をかけ直して、静かに部屋の外に出る。
良い子の一年生は寝ている時間。
起こさないように一年生長屋を抜けて廊下を歩いていると、前から丁度お風呂から上がったらしい四年生がやってきた。
「あ、ユキさんだ~」
私に気づいたタカ丸くんがニコリと笑い、喜八郎くんはタタッと駆けてきて私に抱きついた。
『まだお風呂入ってないから私ばっちいよ?』
「どんなユキさんも好きだからいいんですよぉ」
嬉しいけど、汗と灰まみれの体でお風呂上がりの喜八郎くんを汚したくない。
お礼を言いながらベリっと彼を引き離した。
「もしかして、ユキさんお風呂まだだったのですか!?」
「先に入ってしまい申し訳ありません」
『三木ヱ門くん、部屋で喋ってたらこんな時間になっちゃっただけだから!滝夜叉丸くんも頭上げて!』
この二人は本当に礼儀正しい子。
申し訳なさそうな表情の二人に気にしないでと言って、私はお風呂へ。
新しい小袖を籠の中に入れて着ている小袖を脱ぐ。
ヒンヤリした脱衣所から急いでお風呂場に移動する。
『たまにはこういうのもいいかなぁ』
いつも賑やかなお風呂タイム。
背中の流し合いっこをして、髪を洗っている子には上からお湯をかけてあげる。
湯船に入っている時は潜水大会をしたり歌を歌ったり。
一人で浸かる湯船はとても広く感じる。
『ん~気持ちいい』
浴槽のふちに両腕をついて、その上に顎をのせてホッと息を出す。
薪割りしたからちょっと疲れたのかな?
なんだか体がダル重い。
早めに出たほうが―――いいの、かも――――
***
「なぁ喜八郎、本当にユキさんはいらっしゃるのか?」
「ユキさんはお風呂の後に必ず牛乳飲むから」
滝夜叉丸に答えた喜八郎がトスンとテーブルに顎をのせる。
事務員のユキちゃんより先にお風呂に入って申し訳ない。
せめてユキさんがお風呂から上がるまで待つことにした僕たちだけど―――
「遅すぎないかな?」
三木ヱ門の言う通り、いくら女の人でも一辰刻(二時間)以上は長すぎる気がする。
不安がこみ上げてくる。
見ると皆も同じことを思っていたみたい。
僕たちは顔を見合わせて頷き、お風呂場へと走っていった。
「明かりは灯っているけど」
「ユキさーーん!中にいますか~?」
脱衣所扉の前でジリジリと待つ僕の耳に三木ヱ門と喜八郎の声が聞こえてくる。
「ユキさん覗きますからね!喜八郎、僕が踏み台になる」
お風呂にユキさんがいるか外から確認することになり、僕たちは二手に分かれた。
明かりが灯っているか見に行く三木ヱ門、喜八郎。
僕と滝夜叉丸は万が一の場合に備えて脱衣所の前で待機。
「倒れてる!ユキさん、ユキさんっ!」
喜八郎の声にハッと顔を見合わせた僕たちは脱衣所に飛び込んだ。
ガラッとお風呂場の扉を開け放つ。
「ユキちゃんッ」
ユキちゃんは浴槽から洗い場へ上半身を投げ出すようにしてグッタリとうつ伏せに倒れていた。
急いで彼女のもとへと走る。
倒れていたユキちゃんの白い肌は真っ赤に変わってしまっていた。
「息は!?」
動揺した声で喜八郎が小窓から叫んだ。
出来るだけ衝撃を与えないように滝夜叉丸と協力してユキちゃんの体を仰向けにする。
『・・・ぅ』
ユキちゃんの口から小さな声が漏れ、僕たちは一斉に安堵の息を吐いた。
真っ赤な顔に汗を浮かべる彼女をすぐに医務室へ連れて行かなければならない。
背中を支え、膝の下に手を差し込んで横抱きにする。
「あぁっと、えっと、服、服持ってきます!」
真っ赤になってお風呂場を出て行く滝夜叉丸。
熱い体に対してユキちゃんの髪はとても冷たくなっていた。
いつから気を失っていたんだろう?
「喜八郎、先に行って新野先生を呼んできて」
無言で頷いた喜八郎の顔が小窓から消える。
脱衣所に出て行くと滝夜叉丸がユキちゃんの体を彼女の小袖でおおった。
ユキちゃんの体に負荷をかけないように気をつけながら廊下を小走りに進む。
抱いている彼女が思っていたより軽くて不安だった。
『さ・・・ぶ・・ぅぃ』
「ユキちゃん!?気がついた??」
小さく呻いた彼女の目がゆっくりと開かれ、僕は足を止めた。
焦点の合わないぼんやりとした瞳を左右に動かしているユキちゃん。
自分がどこにいるか、どうなったのか分からないみたいだ。
二、三度瞬きをした彼女と視線が交わる。
『タカ丸、くん?』
体に溜まる熱で胸を大きく上下させながら不思議そうにユキちゃんが尋ねた。
『私・・・』
「お風呂の中で倒れてたんだよ」
『あぁ、そっか・・私ったら。うっ』
「気持ち悪い?」
『グラグラする・・・』
ユキちゃんはそう言って辛そうに眉を顰めた。
「医務室に運ぶから、ユキちゃんは目を閉じて楽にしてるといい」
『ごめんな、さい。ありがと』
ユキちゃんは瞳を閉じて僕の胸に頭を預けた。
相変わらず肩で息をしている彼女の呼吸は荒い。
いつも元気なだけに、弱っている彼女の姿は僕を激しく動揺させた。
僕が苦しみを取り除いてあげられればいいのに。
「もうすぐ着くよ。すぐに良くなるからね」
祈りを込めて抱き寄せるようにして囁く。
ユキちゃんの顔が少しだけ柔らいだ気がした。
「君たちが雪野くんに気がついてくれて良かったよ」
診察を終えた新野先生が大きく息を吐き出した。
ユキちゃんはお風呂でのぼせ、意識を失ったらしい。
新野先生の話だと休んでいれば明日には元気になるという事だが、今はまだ辛そうに横になっている。
「雪野くん、今日はここで休むといい。明日の朝、様子を診に来るよ」
『ありがとうございます』
「雪野くんは大丈夫だから、君たちも休みなさい」
新野先生はユキちゃんが心配で表情を曇らせている僕たちに微笑み、保健室から出て行った。
『みんな、ごめんね』
揺れるような細い声でユキちゃんが言った。
「もう!喜八郎が倒れてるって言ったとき、心臓が止まるかと思ったんですからね」
『ごめんね、三木ヱ門くん』
弱々しく微笑むユキちゃんに扇子で風を送っている三木ヱ門。
『溺死する前に見つけてくれて良かったよ』
「ユキさんったら!冗談でもそんな事言わないで下さいッ」
『ご、ごめん、ごめん。滝夜叉丸くん、怒らないで~』
キッと目を釣り上げる滝夜叉丸に慌てているユキちゃん。
本当に、冗談抜きで最悪のことも考えた。
浴槽の中で倒れていたユキちゃんの姿を思い出してゾッとする。
「もう一人でお風呂入っちゃダメですからね」
『気をつけるよ、喜八郎くん』
「気をつけるじゃダメです!ちゃんと約束してください」
『や、約束する。ちゃんと守るから、そんな泣きそうな顔しないで』
「じゃあ指切り」
甘えるように言って小指を出す喜八郎を見て、ユキちゃんの顔に優しい笑顔が戻った。
指きりげんまん 嘘ついたら 針千本 飲ーます
指を上下に振りながら言葉を唱えるユキちゃん。
少し元気が戻ってきたかな?
そう思いながら見ていると、ふと彼女と目があった。
瞬間、目を逸らされる。
どうしたんだろう?
ようやくおさまってきていた顔の火照りが見る見るうちに戻っていく。
目眩がぶり返してきたのかも。
僕は水の入った桶を持ってユキちゃんの枕元に移動した。
「手ぬぐい変えるね」
「では、水枕も新しくしましょう」
『タカ丸くん、滝夜叉丸くん。ありがとう』
ユキちゃんの頭を手で支えて浮かせると、滝夜叉丸が水枕を引き抜いて保健室から出て行った。
枕がないとしんどいよね。
「滝夜叉丸が帰ってくるまで、僕の膝に頭のせてて」
『!?・・ま、枕なくても大丈夫だよ。まだ髪濡れてるからタカ丸くんの服が濡れちゃうしさ』
慌てた様子のユキちゃんに僕は首を左右に振った。
「僕のことは気にしないで。辛い時に遠慮しちゃダメだよ」
『あ、ありがと・・・』
ユキちゃんは小さな声で言い、僕に背を向けるようにして頭を膝の上にのせた。
その時、僕はハッと気がついた。
僕の膝に頭を乗せているユキちゃんを見る。
耳の付け根まで真っ赤になった顔。
緊張しているように体が強ばっているのが膝から伝わってくる。
加えて、さっき目を逸らされたことを思い出す。
ユキちゃんの顔が火照っているのは体調が悪いからじゃない。
恥ずかしいから
照れているから
この事に気がつくまで、僕は純粋にユキちゃんの体調だけを心配してた。
でも今は心配よりも別の感情が出てきてしまった。
思わず濡れた彼女の髪に手を伸ばす。
『ッン・・』
首筋にまとわりついていた濡れた髪を指で払い除ける瞬間、ユキちゃんの口から色っぽい声が漏れた。
「ごめん。髪の毛が鬱陶しそうだったから」
震える声で御礼を言うユキちゃんは僕の邪な心に気がついていないのだろうな。
君はいつも無防備すぎるから。
「髪を乾かすね」
『そ、そのままで大丈夫だから』
焦ったように振り向くユキちゃんは僕を意識してくれてるんだよね?
「風邪ひいたら困るでしょ?」
肌に僕の手が触れる度、ピクっと反応する彼女に満足感を覚えてしまう。
僕は四年生。
でも、年齢は六年生と同じ。
君と同じ年齢の大人の男なんだ。
この事を、ユキちゃんの胸に刻み込んでしまいたい。
「水滴がついてるよ」
触れるか触れないかのタッチでユキちゃんの頬を指先で撫でると、彼女の目が熱を帯びたように潤んでいった。
僕を見て
輪郭をなぞる様に指を彼女の唇へと動かしていく。
「な~にやってるんですかぁ?」
「っ!?」
ユキちゃんを挟んで僕の対面に座った喜八郎。
柔らかい声に対して彼の視線は鋭い。
「何がって、ユキちゃんが気持ち悪くないように髪を拭いているだけだよ」
「ふうん。それじゃあ、次は僕の番です」
『うわっ!?』
喜八郎がユキさんを抱いて立ち上がった。
『ど、どこ行くの!?』
「ここじゃ休めないので、僕の部屋に行きましょう」
『サッパリ意味がわかりませんよ!?』
「暴れないで下さ~い。っ!!」
手足をばたつかせるユキさんに気を取られた喜八郎の隙をついて彼女を奪い返す。
「部屋に連れて行くなんて、そんな冗談言っちゃダメだよ」
「ここにいたら狼に襲われる危険がありますから」
『おおかみ?もしやモンちゃんがお見舞いに!?』
「!?」
僕の足を払った喜八郎にユキさんを奪われる。
でもね、喜八郎。
元辻刈りの僕にスピードじゃ勝てないよ。
「病人に乱暴しちゃダメだよ(グイッ)」
「乱暴なのはどっちですか?僕の部屋に連れて行きます(グイッ)」
「無理やりキスしたことのある喜八郎と二人きりにできないよ~(グイッ)」
「僕はタカ丸さんほど強引じゃありませんよぉ(グイッ)」
「僕が何かしたかな?(グイッ)」
「とぼけないで下さいっ(グイッ)」
「コラーーー!!いい加減にしなさいッ!!」
あ、三木ヱ門いるの忘れてた。
「二人とも、ユキさんを見てくださいッ」
真っ赤な三木ヱ門が視線を天井に泳がせながら指さした先。
僕と喜八郎の間。
「「あ」」
ユキちゃんの寝巻きを掴んでいる僕と喜八郎。
しかし、中身がなかった。
視線を下に落とす。
僕たちの間に座っていたのは自分の胸を手で抑えながら
目を吊り上げて僕たちを睨んでいるユキちゃん。
「わわわ!ご、ごめんなさいっ」
「おぉ。ナイスバディ」
ガチンと頭突きされた喜八郎。
僕と喜八郎は元気になったユキちゃんのお説教を受けたのだった。