第三章番外編
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君が好き~Ver.不破雷蔵
※三章七話
異世界から不思議な力で僕たちの世界へとやってきた来た人。
彼女の名前は雪野ユキさん。
彼女は明るい人で、忍たま下級生と遊ぶくらい元気な人で
そうかと思ったら僕たちよりもずっと年上のような気遣いを見せる人で
そして話していてとっても楽しい人で
兎に角、僕はそんなユキさんと話す度に彼女に惹かれていた。
そんなある日の事、僕、三郎、中在家先輩は偶然に酒関連の本を図書室で探していたユキさんときり丸に会い、ユキさんが馬井屋主催の酒豪選手権大会に出場する事にしたというのを知る。
――――酒を呑む催しは危険だ。きり丸と二人で出かけてタチの悪い酔っ払いに絡まれたらどうするつもりだ・・・
中在家先輩はユキさんにこう言った。
僕も三郎もそう思った。
でも、ユキさんは頑なに出たがった。
というのも、春誕生日会の経費をユキさんがうっかりミスで計算間違いしてしまい、
経費が足りなくなっていた経緯があったからだ。
ユキさんは酒豪選手権大会で優勝して、是が非でも優勝金を手に入れたいと言う。
僕たちは絶対に出場したいと言うユキさんの思いに負けた。
その代わり、僕たちはユキさんの護衛をする事になった。
『雷蔵くん、この文字ってなんて読むの?』
「これは“発酵”だよ」
『ありがとう!』
酒豪選手権大会ではお酒に関する問題も出題される。
誰にも会わないようにこっそりと勉強するため、いつもユキさんさんは自室で勉強していた。
勉強を手伝って欲しいと言われた僕は喜んだ。
ユキさんと部屋で二人っきり。
(とは言っても殆ど三郎がいて二人きりになれたのは数回程度だけど)
ユキさんの勉強を見てあげるのは楽しかった。
「ユキさんは物覚えがいいね」
『本当?えへへ。ありがとう』
間近で見られるユキさんの笑顔。
トクリトクリと僕の心臓が早鐘を打つ。
僕はユキさんが好きなんだ。
じんわりと胸が熱くなるのを感じながら思う。
「当日、変な奴に絡まれても僕たちがいるから安心してね」
『頼りにしているね、雷蔵くん』
僕は笑顔を向けてくれるユキさんに小指を差し出す。
ユキさんは笑みを深めて僕の小指に自分の指を絡ませる。
『「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーますっ。指切った!」』
僕たちは顔を見合わせてふふっと微笑みあったのだった。
そして、酒豪選手権大会の当日がやってくる。
ユキさんはお酒についての知識が出される一回戦を難なく突破した。
お昼休憩を挟み行われた“早飲みぐるぐる棒競争”も無事通過した。
二回戦が終わって小休憩の時間に入る。
「私はきり丸の様子を見がてら冷やし飴をもらってくる」
「うん。分かったよ」
競技中は中在家先輩が、それ以外は僕と三郎でユキさんを見守っていた。
三郎の背中を見送ってからユキさんの追跡をする。
「あ・・・」
ユキさんは“厠へ”と書かれた看板に沿って小道を入っていった。
しかも、ちゃんと男性厠へ。それがちょっと可笑しくて、小さくぷっと笑ってしまう。
しかし、さて、どうしよう。
厠待ちされるのって女の子だし嫌だろうな。
ちょっと離れているけどここでユキさんが戻ってくるのを待っていようかな。
そう思って看板の場所で待っていたのだが・・・・
「来ないな」
お腹でも下したのだろうか?
そうだとしたら、余計に後をつけられている事を知ったら恥ずかしいと思うだろうし・・・でも・・・
もし、悪漢に絡まれていたとしたら?
そんな事になっていたら大変だ。だけど・・・
やっぱりお腹を壊したのかも・・・
いや、そうだとしても遅すぎるような・・・
―――当日、変な奴に絡まれても僕たちがいるから安心してね
―――頼りにしているね、雷蔵くん
―――指切りげんまん嘘ついたら針千本のーますっ。指切った!
僕は悩むのを止めて顔を上げた。
探しに行こう!
厠へ向かう路地へと入っていく。
三つ並んだ厠はどれも開け放たれていた。
顔から血の気が引いていく。
ユキさん!
僕は辺りを見渡した。
厠の横に路地が続いている。
その道を僕は走っていく。
くねくねと曲がる路地。
耳を澄まし、目を四方に走らせて走っていた僕の耳に聞こえてきた声。
『た、タイム』
「今更遅ぇぞ!その面見せやがれッ」
ユキさんの声だ!
僕は声の聞こえる方向へと走った。
椿の木でできた生垣がある。
ユキさんの顔が見える。
ユキさんに迫る三人の厳つい顔の男。
『ちょ、お、落ち着こう』
「頭をかち割ってやる」
間に合ってくれ!
僕は生垣を飛び越える助走に入る。
そしてダンッと地面を蹴り上げた。
真っ青な顔で凍りつくユキさんの前に躍り出る。
間一髪
バチンッ
僕は男の拳を手のひらで受け止めた。
『え・・・?』
小さな震えた声が背中から聞こえてくる。
ごめんね、ユキさん。
怖い思いをさせてしまって。
「ごめんね。遅くなって」
前を警戒しつつ、少しだけ後ろを振り返って言う。
『雷蔵くん!!・・・で合ってる?』
ユキさんの言葉にずっこける。
「あ、合ってます!もう、ユキさんったら・・っユキさん!?」
ドシンっと強く後ろから衝撃がきた。
ぎゅっとユキさんに後ろから抱きつかれている。
「え、ええっと、ユキさん!?!?」
急に好きな人に抱きつかれて動揺しない男などいない。
驚いてどもりながら彼女の名前を呼んでいると、トンとユキさんの額が僕の背中に当たったのが感じられた。
『怖かった』
震える小さな声。
僕はそっと、自分の腰に回されているユキさんの手に自分の手を重ねた。
その後、実はユキさんを襲った男たちは山賊で、しかもユキさんをお頭と仰ぐ人たちだと分かった。
急に態度を変えた山賊に驚きつつ、苦笑い。
ユキさんったら面白い事に関するネタがつきないなぁ。
ユキさんは山賊たちに酒豪選手権大会で自分の応援をしないようにクギを刺して僕の手を取る。
『行こう、雷蔵くん』
「え?うん」
山賊から逃げるように小走りに僕の前を進むユキさんの背中を見る。
そして自分の手に視線を落とす。
ユキさんに取られた手。
彼女の手は震えていた。
怖い思いをさせて申し訳なかったと反省しているとユキさんが急に足を止めた。
『雷蔵くん』
「ん?」
ユキさんが手を離して僕の方へ向き直る。
『助けてくれて、本当にありがとう』
「ユキさん・・・」
ぺこりと頭を下げるユキさん。
小さく震えている体。
僕はユキさんがもしあの山賊たちに殴られて怪我をしてしまっていたらと考えて肝が冷える思いになった。
あぁ、ユキさんが無事で良かった。
僕は震えるユキさんを安心させたくて、華奢なこの体が無事であった事を確かめたくて、彼女の手を引き、ユキさんを抱きしめる。
「震えてる」
『あ、はは・・・バレちゃっ、た・・』
下を向くとハラハラとユキさんが涙を零しているのが見えた。
「怖かったね。でも、もう大丈夫だから。安心して、ユキさん」
僕はあやすようにユキさんの背中を摩ってあげる。
ゆっくりと、ユキさんの呼吸が落ち着いてくる。
「いつだって、ユキさんには僕たちがついてるよ」
僕たち
言ってからハッとする。
本当は“僕が”って言いたかったのに。
情けないな。
ユキさんを危険な目に合わせた上にユキさんにも無自覚に奥手な僕。
もっとしっかりしないと。
僕はユキさんが好きだ。
彼女を守れる男になりたい。
彼女に好かれる男になりたい。
ぎゅっとユキさんを抱きしめる腕に力を込める。
自分を変えたい―――――
『ありがとう。落ち着いたみたい』
ユキさんが僕の腕の中で言った。
「よかった。それじゃあ、そろそろ行こうか」
『うん・・・』
凄く惜しい気持ちになりながらユキさんを自分の腕の中から解放する。
勇気を持つんだ。さあ――――
僕はユキさんに手を差し出した。
『雷蔵くん?』
どうぞ僕の手を取って?
「人がいるところまで。ダメかな?」
慣れない事に自分の頬が赤くなるのを感じる。
ユキさんの答えを緊張しながら待っていると、彼女の表情がふにゃりと崩れた。
『ダメじゃないよ、全然。嬉しい!』
「~~っ!」
変装したままの顔なのに、ユキさんの本来の顔が見えるよう。
ユキさんが僕の手を取って指を絡めてくれる。
ピクリと自然に反応してしまう体。
細い指が自分の指に絡み、僕は赤かった顔を更に赤くさせる。
『さあ、行こう』
ユキさんは明るく行って僕を引っ張っていくように歩み始めた。
彼女の背中を見ながら思う。
明るくて、可愛い、僕の大好きな子。
「次の試合、楽しみにしているけど無理し過ぎないでね」
『分かってる。お酒は楽しく、が基本ですから』
「あはは。上級者の答えだ」
『えっ。そうかなぁ?』
両眉を上げてから首を傾げるユキさん。
どんな顔も愛くるしい。
ねぇ、ユキさん。
君が好き
もう、絶対に危険な目に遭わせたりしないよ。
僕はあなたをどんな危険からも守りたい。
だから僕は強くなる。
迷い癖も克服するよう頑張るよ。
だから、ねえ、僕の傍に居て?
君が好き
今度こそ“僕が”君を守ると伝えたい――――――