Knight!
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2.再会
障子を通して部屋に差し込んできた朝の光に目を細めながら
体を起こす。
審神者試験にうっかり合格し、審神者として本丸タワーにある
寮に入居してから3ヶ月。
『山姥切国広さん、おはよう』
枕元にある刀剣を取って挨拶するが彼から返事はない。
私は本丸に来た初日、つまり山姥切国広さんの覚醒に成功した日以来、
彼と会えていなかった。
「どうしてその刀にこだわるだい?」
『意地です』
今でも目に浮かぶ先輩審神者の苦笑。
指導してくれる先輩審神者さんに他の刀剣を選びなおすように
勧められた私はこう答えて新たな刀剣選びをお断りした。
あの日の先輩の困ったような笑顔可愛かったな、と考えているうちに
集合場所に到着した。
震える手でIDカードを通して扉を開ける。
研修に入って3ヶ月。
いよいよ今日は時空を超えて出陣する。
出陣といっても私たちはまだ新米ヒヨっ子審神者。今回は先輩たちと
一緒にワープして、戦いぶりを見せてもらう社会科見学的な感じ。
だから周りの同期審神者たちも気楽な様子で談笑している。普段なら
私も皆の輪に加わって積極的にお喋りに興じているのだが、今日だけは
そうもいかない。
「おはよう、ユキちゃん」
『おはよー瀬戸くん』
「暗いオーラ出してるから皆話しかけていいか迷ってるよ?」
顔を上げて見ると気遣わしげな皆の顔が目に入った。
心配かけて申し訳ない。でも、今日ばかりは話す気になれない。
大丈夫、と軽く手を挙げるだけに止めておく。
「緊張してるの?」
『ううん。緊張っていうより・・・』
私が刀剣に目を落とすと瀬戸くんは納得したように「あぁ」と小さく
声を漏らした。
「今日、実体化させられなかったら、その刀剣とお別れなんだっけ?」
そうなのだ。
刀剣男子を実体化させられなければ戦場で戦うことができない。
私は刀剣男子を実体化出来ないために演練に参加できず、
実技面で後れを取ってしまっていた。
そのかわり刀装だけはやたらと出来るけど・・・。
私はポケットの中入っている水晶化した刀装をジャラジャラと触った。
「山姥切国広を実体化させられなければ他の刀剣に変えなさい。」
そう指導審神者さんから提示された期限が今日。
私はこの合戦観戦ツアー終了後に指導審神者さんの前で山姥切国広さんの
実体化試験を行うことになっている。
私は腰に差す山姥切国広さんギュッと握り締めた。
このままお別れになってしまうの?
山姥切国広さん・・・
「研修審神者はワープの準備に入るのでこっちに来てちょうだい!」
ルイ先輩が一段高いところから私たちに指示を出しているのが見えた。
私たちはゾロゾロと指示された位置に移動する。
――――――3――2――1――
機械的な女性の声でカウントが始まり私たちは白い光に包まれた。
ジェットコースターから急降下するような浮遊感がおさまるとともに
足元に地面の感触を感じる。
「これは凄い・・・」
隣の瀬戸くんが呟いた。
目の前の景色はガラリと変わっていた。
木一本生えていない、草が所々にしか生えていない大地に私たちは立っていた。
「全員、刀剣男子を実体化!」
先輩審神者の声で次々に自分の近侍を実体化させていく同期審神者たち。
お願い出てきて。
私も祈るような気持ちで刀を抜く。
『ハアァだめか・・・』
手にしている刀は相変わらず一点の曇もなく美しいが、周りの刀剣のように
神々しい光を放ったりしない。
仕方ない。
私はガクリと肩を落としながら刀を鞘に収めた。
「いずれ一人で合戦に望むことになります。しっかりと見ておいて下さい。」
顔を上げるとルイ先輩が山伏っぽい刀剣男子(たぶん大将)を含めた
6人の刀剣男子と敵がいると思われる地点へと移動していくところだった。
たしかルイ先輩の好みって筋肉隆々の熱い男、だっけ?
山伏っぽい刀剣男子以外の5人もイカツめの姿をしている。
きっとルイ先輩は見えない力か何かで好みの刀剣男子を引き寄せたに違いない。
根拠のない確信に頷きながらスコープを目に当てる。
ここには私たちヒヨっ子だけで取り残されているわけではない。
他にも引率の審神者さんがいるので私たちは安全にルイ先輩の
戦いっぷりを見ることができる。
『あれ?・・・刀剣女子?』
まだ戦いが始まりそうにないので一旦目からスコープを外すと
瀬戸くんの隣に並ぶ可愛い子が目に入った。
「いやいや。刀剣女子はいないよ。コレは僕の近侍。一応、彼も
刀剣男子だよ」
「は、はじめまして。五虎退と申します」
何となく瀬戸くんの話し方に引っ掛かるものを感じながら視線を移すと
雪のように白い髪の少年が少しオドオドしながらペコリと頭を下げた。
『はじめまして。私は雪野ユキ。瀬戸くんとは大学時代からの友達だよ。
よろしくね』
少し屈みながら私も自己紹介。
握手しようと手を差し出すと彼は戸惑ったような表情を見せたが
はにかみながら手を握り返してくれた。
嬉しくて思わず顔を綻ばせると彼もニコニコと可愛い笑顔で笑ってくれた。
「フフ、面白い方ですね」
『あはは。よく言われるんだヨホウッ!?』
突然おかしな叫び声を上げた私に五虎退くんの肩がビクリと跳ね上がる。
驚かせてしまって申し訳ない。でも、足に何か触ったんだよ!
このくすぐったいものは何か確認しようと視線を足元にやった私の表情が強張る。
1,2、3・・・虎が五匹
小さなホワイトタイガーが私の足を獲物に見立てて遊んでいた。
『痛いッ、痛いって!!』
ガリッと私の足に爪をたてた白タイガーを抱き上げて目線まで持ち上げる。
怒る気が失せた。
何たる可愛さだ!
この子をモデルにぬいぐるみを作りたい。
「っ血が出てる!」
頭の中でパターンを描いていると瀬戸くんが叫んだ。
「す、すみません。おみ足にお怪我をッ!」
『わわっ。このくらい大丈夫だよ』
真っ青になりながら私の足元に跪く五虎退くんの手を取って慌てて引き上げる。
「で、でも、『ただの引掻き「どうしてお前はいつもこうなんだ!?」
瀬戸くんの怒鳴り声に私は声を失う。
唖然とする私の前でさらに信じられないことが起こった。
「っ!?」
瀬戸くんが五虎退くんの頬を思い切り叩いたのだ。
その拍子に五虎退くんの小さな体は倒れて地面に打ち付けられる。
「その虎どもをしっかり躾とけって言っておいただろ!!」
「も、申し訳ありません、主さま・・」
「ユキちゃんの体に傷が残ったらどうするんだ!!」
瀬戸くんに激しく叱責されて、地面に這う様にして身を縮めている五虎退くん。
彼の白虎ちゃんたちは危険から身を守るように五虎退くんの元に走って行き
小さな体を震わせている。私の腕の中の白虎ちゃんもプルプル震えている。
「お前ッ!いったい何度言ったら――」
『もういい!止めてよ、瀬戸くんっ』
私はサッと五虎退くんの前に飛び出した。
怒りでつり上がっていた目が大きく開かれ、瀬戸くんは振り上げていた拳を
決まり悪そうに下ろした。
『私は大丈夫だから』
「ごめん。ユキちゃん」
瀬戸くんを背に、屈んで五虎退くんに小虎を返す。
涙を目にいっぱい浮かべて何度もごめんなさい、と繰り返す
彼を見て胸が苦しくなる。
「弱い上に使えない刀だなんて貧乏くじだったよ」
五虎退くんへの仕打ちに一言言ってやろうと立ち上がって、
瀬戸くんに振り向いた私は固まった。
背後で聞こえた五虎退くんが息を呑む音。今の言葉でどれだけ傷ついただろう。
私は今までどこに目をつけていたの?こんな最低男と友達やってたなんて
自分が許せない。
「僕もユキちゃんみたいに打刀にしていれば良かったよ」
瀬戸くんの口を拳で閉ざそうとしていた私だが、何かに突き上げられた
ように体が揺れて拳を下ろした。
「まずい!あれは検非違使だ」
先輩審神者の叫び声に緊張が走る。
『え、うそ・・」
検非違使といえば歴史修正を目論む歴史修正主義者とは違う、まだ政府も実態を
掴めていない謎の組織。神出鬼没な上に強さは歴史修正主義者を遥かに上回る。
「ワープ中に攻撃されるのだけは避けないと」
「研修審神者たちは2時の方向に走りなさい!」
「敵のレベルが高い。全員でかかれッ」
残った引率の審神者全員で立ち向かわなければならないほどの強敵。
私たち新米は指示された通り2時の方角へと走りだした。
各自 安全を確認し 本丸タワーへ帰還せよ
イヤホンから聞こえる指令。
背後から激しく金属がぶつかる音が聞こえて振り返る。
集団の最後尾を走っていた私の目に映ったのは
青白く光りながら先輩審神者に襲いかかる検非違使の姿。
全身が粟立つ。
走ることに集中しようと前を向くと、
前方の方で白い光が柱のようにいくつも伸びていくのが見えた。
先頭の研修審神者たちがワープを開始したのだ。
あそこまで頑張って走れば私もワープボタンが押せる。
痛む脇腹を抑えながら足を前に進めていると突然右から
唸るような雄叫びが聞こえてきた。
ギョッとして音の方を見た私は青ざめた。
「待ち伏せされた!!」
誰かの叫び声が耳をつんざく。
湧き上がってくるように歴史修正主義者の一団が丘を上がってくる。
一番初めに出撃していったルイ先輩を挟み撃ちしようと潜んでいた
部隊があったのだ。
直ぐに帰還せよ
司令室からの指示が耳に響くのと同時に白い光の柱が幾つも天を突く。
「ユキちゃん、早く!」
こちらに叫ぶ瀬戸くんを振り返る。
彼の後ろに小さく見えるのは合戦の手本を見せるために出撃したルイ先輩の姿。
検非違使と戦っている先輩たちは苦戦していてこちらへは来られない。
「何やってるんだ!早く帰るぞ」
いつの間にか私のもとに来た瀬戸くんが私の手をグイっと掴みながら怒鳴った。
私は瀬戸くんの手を払う。
このままではルイ先輩は挟み撃ち。
『私は残って戦う』
「バカを言うな!」
『このままだとルイ先輩の部隊は全滅。ルイ先輩も刀剣男子たちも死んじゃうッ』
「だからって俺たちに何ができるんだよ!?俺たちの武器を見ろ!使えない
短剣と出てきもしない臆病な打刀だけじゃないか」
『うっさい!臆病言うな、バカ!!』
カチンときて思い切り瀬戸くんの胸を両手で突き飛ばす。
「もう、どうにでもなれ!」
もっと言ってやりたいことはいっぱいあったが、突き飛ばされたショックと
私の背後に迫る敵軍を目にした瀬戸くんは捨て台詞を吐いてヨタつきながら
腰を上げて走り去り、光の柱の中に消えていった。
もう私以外の研修審神者はいない。
『よっし。頑張れ、ワタシ!!』
紐をほどいて山姥切国広さんを地面に置き、私は走り出す。
実体化できない山姥切国広さんで戦うつもりはなかった。
私が彼を振るっても刀にヒビが入って最悪消滅させてしまうだけ。
山姥切国広さんはこの戦いが終わったら誰かに回収してもらえばいい。
『誰か、か』
その時私は生きているのだろうか?
自分の阿呆さとお人好し具合に苦笑いしながら後ろをチラと見る。
馬に乗ってなくて良かった。
追いかけてくる敵から逃げながら考える。
囮になることを選んだ私は考えなしで囮になった。
『だからって簡単に殺られないからね!』
岩陰に隠れて石を投げる。
見事に敵の甲に当たって、頭が揺れるのが見えた。
向かってくるスピードが上がった。どうやら怒らせたようだ。
最悪だ。
『ま、負けるかッ』
目の前に迫る敵陣。
多分これが最後の一投。
私は渾身の力を込めて石を敵の大将に投げつける。
グワアアァァァ
天を裂く様な不気味な声を上げて消滅していく敵の大将。
『私って凄い!』
「残念だが、今のは俺だ。」
自分の右手から視線を前に向ける。
風にはためく、お世辞にも綺麗とは言えない白いマント。
振り向いた彼は黄金色の髪にアイスブルーの瞳。
『山姥切国広さんッ!』
「そこに隠れていて下さい、主殿ッ!!」
嬉し涙を流しながら駆け寄ろうとしたら一喝された。
大きな溜息をつく山姥切国広さんの指示に従って岩陰に隠れた
私の顔が凍りつく。
『後ろ!危ない!』
「っ!?」
山姥切国広さんに振り下ろされる刃を見て反射的に目を瞑ってしまう。
ゾッとしながら顔を上げた私は驚いて息を飲んだ。
『五虎退・・・・くん?』
目の前にいたのは残りの敵を打ち倒す山姥切国広さんと五虎退くんの姿。
ポカンとする私の前で戦いは続けられていく。
「くぅ・・・」
「あっ、うぅ」
しかし、戦況は良くなかった。
新米審神者の私にも二人が苦戦しているのが分かる。
6対2。多勢に無勢。
このままでは二人が危ない。
私は加勢するため足元の石を手に取り、投げた。
「っ!隠れていろと言ったはずだッ!!」
『ごごごごごゴメンなさいいいィィィ!!』
私の投げた石は山姥切国広さんの腰にヒットした。
ちょうど鎧があってダメージは受けなかったようだ。
もう余計なことはしません。
一瞬、山姥切国広さんがこっちに向かって突撃してくるかと思った。
それくらい彼の視線は鋭かったです。
ガタガタ震えながら岩陰で地面に膝をつく。
その時、私のポケットからジャラジャラと音が聞こえた。
ポケットに入っているのは刀装水晶
ホラ、焦ると色々忘れちゃうじゃん?
いやいや、ワタシの馬鹿野郎!!どうしてこんな大切なもの
忘れることができたのよ!?
打刀と短剣って何の種類が刀装出来たっけ?
パニックになっていて思い出せない。
ダメだ。聞きに行こう。
投げても水晶重くて二人のところまで届かないし。
私は岩陰から出てダッシュした。
「主さまっ!?」
「っ!?出てくるな!早く戻れ!」
『ハァッ――こ、コレ――これ渡したら、戻るから』
私は二人に向かってポケットに入っていた水晶をポイポイ
投げつけた。
私の突飛な行動に一瞬驚いた二人だが、水晶が何か直ぐに分かったらしい。
空中に放たれた数ある水晶から自分に合う水晶がどれか瞬時に判断し、
上手く受け取ってくれた。
二人の手に触れた瞬間、水晶が光り輝く。
水晶から飛び出してきた兵士に指示を与える山姥切国広さんと五虎退くん。
勝敗はあっと言う間に決まった。
『山姥切国広さん!五虎退くん!勝ってくれてありがとう!』
すっかり腰が抜けてしまった私が尻餅をつきながら二人にお礼を言うと、
ツカツカと歩み寄ってきた山姥切国広さんにペシリと頭を叩かれた。
『痛っったーーーー』
「出てくるなと言っただろうッ!」
「あ、主さまを叩いたりしちゃダメだよぉ~」
まだ叩き足りないと言った顔をしている山姥切国広さんを五虎退くんが
必死に止めてくれている。
私は彼らの前で体育座りをして小さくなった。
『ところで、何故ここに五虎退くん?』
凍り漬けにされそうなアイスブルーの視線を無視しながら
気になっていたことを尋ねると、五虎退くんはススっと私の前に
やってきてペタンと正座した。
私も体育座りから正座に座り直す。
「あなたが瀬戸殿を突き飛ばした時に彼の腰から落ちてしまったのです。
それで加勢することができました」
『そうだったんだ。巻き込んじゃってごめんね・・・』
「いえ!ご立派な主様のために戦えて嬉しかったです」
『そう言ってもらえるのは嬉しいけど・・・ん?ちょっと待って。
五虎退くん、何でさっきから私のこと主様って呼んでるの?』
「え、えっと、それは・・・」
『五虎退くん?』
「ぼ、僕、を雪野様の部隊に加えて頂けないでしょうか?」
ギュッと服の裾を握り締めながら言う五虎退くんに目を丸くする。
凄く嬉しい申し出なのだけど・・・
「思い切ったことを言ったな。我々が主を選べないのは知っているだろう?」
山姥切国広さんの言葉に五虎退くんはキュッと唇を結んで俯いた。
刀剣が主を選べるのは審神者に覚醒させられる時の一度きり。
主を変えるには審神者が自分を手放す時を待つしかないのだ。
「無茶を言って困らせてしまい、申し訳ありません」
『ううん。気にしないで。私も五虎退くんと同じ気持ちなんだよ。
出来ればこれからも一緒にいたいのだけど』
「じゃあ一緒にいなさいよ」
『うわっ!?』
急にイヤホンから声がして私の体が跳ね上がる。
不思議そうな顔をしている五虎退くんと山姥切国広さんの前でイヤホンを
自分の耳に押し付ける。
『ルイ先輩?』
「ユキ!今からそっち行くから待ってなさい」
ブチリと切れた通信。
五虎退くんと山姥切国広さんにルイ先輩が来ることを伝えていると、
まずやってきたのは検非違使と戦っていた先輩審神者さんたち。
「よくやったな、新入り!」
初めにやってきた男性審神者さんが私の髪の毛をグシャグシャと撫で回した。
『あわわわ』
「まったく、やめなさいよ。たしかルイさんの後輩、雪野さんだったわね?
初勝利おめでとう!」
男性審神者さんの手をベシンと叩きながら笑顔で女性審神者さんが微笑んでくれる。
「あなたがいてくれて助かったわ。私からもおめでとう。あら、ルイ様よ」
三人目の女性審神者さんが私の肩ごしに視線をやった。
振り向けばルイ先輩と刀剣たち。
『ルイセンパーーイ!!ブヘエェッ!?』
両手を広げて走ってきた先輩に抱きつこうとしたら思い切り頭を叩かれた。
ハグと見せかけて叩くなんて酷いフェイントだ。
「ユキの大馬鹿!」
怒鳴られて思わず目を瞑る私の体はルイ先輩に抱きしめられた。
「心配したんだからね。新米のくせに無茶するんだからッ」
でも、ありがとう。と涙声のルイ先輩に胸が熱くなる。
私もルイ先輩もひとしきり泣いた。
『あの、ルイ先輩。先ほど言っていたこと、お聞きしてもいいですか?』
落ち着いた私はルイ先輩を見る。
五虎退くんと一緒にいたいと言う私の言葉にルイ先輩が言った言葉の意味。
「雪野ユキ!」
『は、はい!?』
「跪きなさい」
『女王様プレイ!?(先輩ならいいですよ!ドキドキ)』
「ち、違うわよ!いいから跪いて」
プッと一斉に吹き出す先輩審神者さんと彼らの刀剣さんたち。
私が跪くとルイ先輩は自分の近侍の刀を持って私の肩に置いた。
「上級審神者、三笠ルイの名において、雪野ユキをここに初級審神者に任ずる」
不思議に思っているとルイ先輩が凛とした声で言った。
刀の平で3回、軽く叩かれた私の肩。
周りの先輩審神者さんと刀剣男子さんからの拍手。
ポカンとした顔で周りを見ると、同じくポカンとしている五虎退くんと
事態が飲み込めず眉を寄せている山姥切国広さんと目があった。
「初級審神者になると刀剣を二振り持つことができるのよ」
ルイ先輩は私を立ち上がらせてニコリと笑った。
「二振り目の刀剣は決まっているわね」
ルイ先輩の視線の先には五虎退くん。
「ぼ、僕ですか!?あの、でも・・・」
「今の主なら気にしなくて結構よ」
慌てる五虎退くんにきっぱりと言うルイ先輩。
「刀剣を置いてワープする奴に主の資格はないってわけさ」
戸惑う私たちを見て男性審神者さんが言った。
『それじゃあ、本当に・・・』
「良かったわね、ユキ」
ルイ先輩の言葉を合図に私と五虎退くんは手を取り合って喜び合う。
嬉しくて私の目から涙が零れてきた。
「これから宜しくお願い致します、主様!」
『こちらこそ宜しくね、五虎退くん』
新しく私の本丸に来ることになった五虎退くん。
三ヶ月ぶりに姿を現してくれた山姥切国広さん。
『あ、五虎退くん。虎ちゃんたちの餌はキャットフードでOK?』
「ほえ?えっと、はい・・・??」
今日から我が本丸は賑やかになりそうだ。
「山姥切国広さん、あなたがしっかりしないとね」
「・・・・。」
ルイの言葉に山姥切国広は地面まで届きそうな長い溜息を吐き出していた。