第3章番外編
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チョコズミード
―――次のホグズミード、一緒に行かない?
―――うん!行く!
幸運としかいいようがない。ユキとお菓子談義に花を咲かせていた流れで思いきって次のホグズミード行きに誘ったら、ユキがオーケーしてくれた。
いつもMr.スネイプとMs.エバンズと一緒にホグズミードへ行っているユキ。
断られると思ったが勇気を出して言ってみて良かった。
今日はそのユキとのホグズミード行きの当日。
僕は玄関ホールでユキを待っていた。
心臓は朝から早鐘を打ちっぱなし。
嬉しさと緊張の混じった気持ちでユキを待っていると、『お待たせー』と元気な声が耳に入ってきた。
手を僕にブンブンと振りながら地下牢教室へと続く階段をユキが上ってくる。
『ごめんね。待った?』
「ううん。全然だよ」
上手く笑えているかな?
緊張して笑顔が不自然になっていそうだ。
僕はユキに気がつかれないように何度か深呼吸。ふーっ。少し緊張は解けたかな?
『リーマス、行こう!』
「っ!?う、うん!」
突然ユキに取られた手。
落ち着きかけてきた心臓はさっき以上に早鐘を打ち始めてしまうのだった。
「まずは何処に行こうか?」
『ハニーデュークス!』
元気に声をあげるユキに即同意。
僕も同じことを思っていたからだ。
ハニーデュークスに着いた僕たち。
中は既に沢山の生徒で賑わっていた。
「はぐれないように気をつけてね」
『うん。じゃあ、リーマスの服握っとく』
「~~っ!」
この仕草にドキッとしない男などいるのだろうか?
僕の上着の端をきゅっと握り、僕を見上げてにこりと笑うユキに胸が高鳴る。
きっと僕の顔は赤くなっているだろうな。
そう思いながら、僕はハニーデュークス店の中に足を踏み入れる。
『「んーーいい香り」』
お店に入ってすぐ、同時に声をあげる僕たち。
店の中は甘い香りで満たされていた。それに色々なお菓子が並ぶ店内はポップな明るさで、僕たちの心を弾ませる。
人と人がすれ違うのがやっとなくらいの混み具合のお店の中を僕たちふたりは歩いていく。
『あ!リーマス見て。これ新商品じゃない?』
くいくいと服を引かれて振り返ると、ユキが棚の上の方を指差していた。
“遊んで楽しい 食べておいしい ピョンピョンキョンシーグミ”
『キョンシーってなんだろう?』と言いながら商品に手を伸ばそうとするユキの手は届いていない。
「僕が取るよ」
『ありがとう』
商品をユキに渡すと、はにかんだような笑顔で彼女は笑った。
その笑顔が可愛くて直視できず、僕はツイと視線をそらしてしまう。
『リーマス?』
「あ、え、えっと、結局、キョンシーって何なの?」
挙動不審になった僕に首を傾げるユキに慌てていうと、ユキはパッケージの裏を見て説明書きを読んでくれた。
どうやらキョンシーとは中国版ゾンビらしい。
『美味しそうで面白そうだけど……』
「ちょっと高いよね」
残念ながら僕たちのお小遣いは他の子達と比べて少ない。
僕の方は僕が人狼であるため薬の費用に莫大な出費を強いられてしまっているから。
ユキの方は家族がおらず、マクゴナガル教授の善意で大人になったら返すという約束でお小遣いを貰っているからだ。
僕たちはそっと商品を棚に戻し、いつもの物、チョコレートを買うために店内を回ることにした。
『リーマスは何味のチョコが好き?』
「ん~僕はやっぱりスタンダードなやつかな。ユキは?」
『私もスタンダードが一番。でも、いちごも好き。ホワイトもたまに食べたくなるなぁ』
そんな会話をしながら僕たちはそれぞれチョコレートを選んだ。
僕たち2人が持っている紙袋の中には色々な種類のチョコレート。
良い買い物ができた。と思って隣を見るとユキもそう思っているらしくご機嫌顔。
僕たち2人は次の店に向かうべく、道を歩いていく。次に向かうのは三本の箒。
三本の箒はいつも通り賑わっていたが、僕たちはスムーズに座ることができた。
席に案内されて歩いている時に隣のユキが小さく歓声をあげた。
『ねえ、あれ見て!』
くいくいと服を引かれてユキが指差す方を見るとチョコレートファウンテンがあった。
噴水のように流れているチョコレートを見てユキは目を輝かせている。
『あれは飲み物?』
チョコレートファウンテンを知らないらしい。ユキが聞いた。
「ううん。違うよ」
チョコレートファウンテンは串やフォークに果物やお菓子を刺してチョコレートに絡ませて食べるものだよ。と僕が説明する。
「期間限定のお試しなのよ。興味があるならぜひ」とマダム・ロスメルタ。
『やりたい!』と目をキラキラさせてユキが言い、僕の顔を見た。
『リーマスも一緒にやろう』
ユキと同じくチョコレートファウンテンに惹かれていた僕は二つ返事でオーケーして、僕たちはいざ、チョコレートファウンテンの真っ正面へ。
「何から食べよう」
『迷うね~』
チョコレートファウンテンの前にはりんご、苺、バナナといった果物やマシュマロ、クラッカー、栗なども並んでいて、バイキング形式に自由に取ってチョコにつけて食べていいようだった。
僕はマシュマロ、ユキは苺をフォークに刺してチョコレートの噴水の中に種をくぐらせる。
『「うわ~~」』
僕たちは同時に歓声を上げていた。
チョコの噴水に種をくぐらせると、チョコレートにコーティングされたマシュマロといちごが出来上がる。
僕たちは嬉しくなって、色々な種類の種をチョコレートの噴水の中に何度もつっこんだ。そして席に戻ってパクリと一口。
『「おいしい!」』
やっぱりここでも僕たちの声はそろって、僕とユキは顔を見合わせてふふっ笑い合う。
思う存分チョコレートファウンテンを楽しんだ僕たちは外へ。
外に出ると既に日が傾き始めていた。
見晴らしのよい場所を探して2人並んで腰を掛ける僕たち。
『夕日が随分と赤いね』
「そうだね」
沈んでいく夕日が僕たちの影をゆっくりと長く伸ばしていく。
この太陽が沈まなければいいのに……
『今日は楽しかったなぁ。太陽なんか沈まなきゃいいのに』
横を見ると、ユキが夕日を見ながらそう寂しそうに呟いた。
あ……太陽の色が変わった……
さっきまで寂しげな夕暮れの太陽の橙色が今はキラキラと輝いて見える。
「ねえ、ユキ。少しだけユキの手を握ってもいい?」
『ん?うん』
指を絡ませてユキの手を握る。
赤い夕日が美しく、地平線へと消えていった。