第3章 小さな動物たち
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13.蝙蝠の恋心
粉雪がちらつく学期最後の週末。
今日は僕たち3年生が初めてホグズミードに行くのを許される日。
誰もが興奮した声で時間を待つ中、僕とリリーだけは表情を曇らせていた。
「ユキは来られるかしら?」
続々と庭に集まってくる生徒を見ながら隣に立つリリーが呟く。
ローブから懐中時計を取り出せば、時刻は集合時間の5分前。
それなのに一緒に行くはずのユキがまだ姿を現していない。
昨日退院する予定だったはずのユキは昨夜になっても寮に戻ってこなかった。
朝一で医務室に行ってみたのだが、そこにもおらず、マダム・ポンフリーも外出中でユキの所在を確認出来ていなかった。
「時間までに来なかったらマクゴナガル教授に聞いてみましょう」
「そうだな。もしまだ」
ホグズミード行きの許可証を確認しているマクゴナガル教授を見ながら言うリリーに相槌を打っていた僕は驚きで言葉を切った。
視線の先は正面玄関前の階段を降りてくる少女。
「わぁ、あんな子いたかしら?」
近くにいた女子生徒の声が聞こえる。
僕も同じ気持ちだ。
鼓動が早くなっていくのを感じる。
階段を下りてくる生徒はユキだった。
しかし、彼女は僕の知っている、はしゃぐのが好きな子供っぽい彼女の雰囲気とは全く違っていた。
病み上がりのせいかいつもより白く透き通った肌。
地面に降り積もる白い雪がユキの漆黒の髪を美しく映えさせる。
そして服装も普段のユキが着ているものと違っていた。
私服だとズボン姿しか見たことがなく、色も暗い色を好んで着ていた。
でも、今日は白いタートルネックの上にノースリーブの水色のワンピース姿。
「ユキ!」
膝上のスカート丈が気になるのか裾を手で引き伸ばしながらザクザク雪を踏んで歩いてくるユキを男子生徒がだらしない顔で追っているのに気がついた僕は自然と彼女の名を呼んでいた。
『セブ、リリー!』
僕の呼びかけにパッと顔を上げたユキと視線が交わった。
高鳴る鼓動。体が急に熱せられたように火照り、心臓がキュウゥと縮まっていく。
『お待たせしちゃってごめんね。晴れて良かったね』
周りの話し声が消え、ユキの声だけが耳に届く不思議な感覚。
「おはよう、ユキ。とっても可愛いわ!驚いちゃった」
リリーの声でハッと我に返った僕は目の前にやってきたユキとの距離が妙に近く感じ、何となく気恥ずかしくて俯いてしまう。
変だ……まともにユキの顔が見られない。
ユキのブーツに視線を落としながら自分の感情の変化に狼狽える。
「もう、セブも黙ってないで何か言ってあげなさいよ」
「え、あぁ……」
トンッとリリーに腕を突かれて顔を上げるが言葉が出てこない。
似合ってるの一言がまるで好きだと告白するかのように恥ずかしくて、口に出すのが躊躇われた。
期待するような眼差しで僕を見上げるユキ。
リリーも不思議そうな顔で僕を見つめている。
あぁ、何か言わなくっちゃ。
でも、熱に浮かされたように頭がぼんやりしていて自分がどうしたいのか、どうしたらいいのか分からない。
『許可書見せに行った?』
沈黙し続ける僕に寂しげに微笑んでから、ユキが肩をすくめ、リリーに顔を向けて尋ねた。
「まだよ。行きましょう」
ホッとしたような、残念なような、複雑な気持ちになりながらマクゴナガル教授の方へと向かう二人の背中を見つめているとユキが顔だけ振り返って僕を見る。
『ぼーっとしてたら置いてっちゃうよ?』
この気持ちは何だろう?
ニッと人懐こい笑みを向けてくるユキに緊張が解けるのを感じながら、僕は二人の方へと走っていった。
許可証を見せ、ホグワーツを出た僕たち。
ホグズミード村に着いてすぐに三本の箒に入ったので僕たちはスムーズに席に着くことが出来た。
「で、昨日の夜寮に戻って来られなかったのはどうしてだ?談話室で遅くまで待ってたんだぞ」
座ってすぐに気になっていた事を尋ねると横から笑い声。
「ふふ、セブったら優しいー」
「っな、リリー!違う。僕は別に……予定通りホグズミードに一緒に行けるか、それを確かめたかっただけで……」
からかう様に笑うリリーにしどろもどろになりながら言い訳していると嬉しそうにユキが頬を緩めて話し出す。
『昨日の4時間目には寮に戻ってたんだけど、ずっとナルシッサ先輩の部屋にいたの』
「「ずっと!?」」
驚く僕たちにコクンと頷くユキ。
女子の監督生であるナルシッサ先輩はユキの個人的な生活指導係にもなっていて二人は仲がいい。
夕食は一人部屋になっている監督生の部屋で食べ、一晩中お喋りし、今日は朝からひたすら出かける準備をしていたということだった。
『何度も服を着替させられたり、髪を結び直されたりで朝食に下りる暇もなかったんだよ』
少し内巻きに巻いてある毛先を手で弄びながらユキが膨れた。
「その服は先輩の服だったのね。いつもと印象が違ってビックリしたわ」
『ナルシッサ先輩が外に出る時くらいオシャレしなさいって。服は嬉しいけど……ホグズミード行きの度に朝食抜きはキツいよ』
話を聞いていたようにユキのお腹が鳴り、僕とリリーは同時に吹き出してしまう。
「食べ物も頼みましょう」
「財布空っぽになるまで頼まないでくれよ」
『はーい。あ、このゾンビポテト食べたいっ』
三人で覗き込むメニュー。
ナルシッサ先輩につけてもらった香水なのか、ユキからふわりと甘い香りがしてドキリとしてしまう。
チラと視線を横に移してユキの横顔を見る。
前々から整った顔をしていると思っていたが、黒髪黒目に変わってからグンと綺麗になったと思う。白髪に黄色の目をしていた時よりも馴染んでいるからこれが本来のユキの姿なのだろう。
「……でいい?セブ??」
「っ!?ウワッ」
急に視界に現れた手に驚き後ろに頭を反らせた僕は思い切り後頭部を壁にぶつけてしまった。目の前に星が飛ぶ。
『痛そ~』
「セブったら今日は何か変よ?」
『冷やすもの必要なら外の雪「いらない。ちょっとボーッとしていただけなんだ」
ドアの方に足を向けているユキを座らせてマダム・ロスメルタを呼び(ルシウス先輩が話していたので名前を覚えていた)注文する。
バタービール3つにゾンビポテトとおばけカボチャのグラタン。
少し早めの僕たちの昼食。
『ふわぁ良い香り』
まずきたのはバタービール。
ジョッキに浮かぶふわふわの白い泡。
甘いバターの香りが鼻をくすぐり、僕たちは顔を綻ばせながらそれぞれのジョッキに口をつけた。
「んー最高ね!」
「温まる」
『おかわり!!』
「「えぇっ!?」」
ドンとテーブルに置かれた空のジョッキ。
「ユキったら早すぎ!それに、フフ」
プッと吹き出したリリーが机に突っ伏した。
「まったく。クク、見た目は変わっても性格は相変わらずだな。口が泡だらけだぞ」
『泡……ホントだ。取れた?』
「口だけじゃなく鼻にもついてる」
顔中を手の甲でゴシゴシ乱暴にこすったので泡が鼻やおでこにもついてしまった。
ハンカチを出し、笑うのを堪えながら拭ってやる。
『バタービールの香りが顔に残ってる気がする。幸せ』
「プッ、ハハ。良かったな」
瞳を閉じながらうっとりと言うユキに堪らず吹き出してしまう。
リリーは笑いすぎて涙が出ているくらい。
「仲良し三人組さん。お待たせしました。ゾンビポテトとおばけカボチャのグラタンよ」
「ありがとうございます」
『「キャー美味しそーーーう!」』
手を叩いて喜ぶユキとリリー。
暖かいパブで仲の良い友達と美味しい料理を食べながら取り留めもない会話をする。
ホグワーツに入学したばかりの頃はこんなに学生生活が楽しいとは想像がつかなかった。こうやって僕が温かな時間を過ごせるのはリリーとユキのおかげだ。
僕は血に見立てたケチャップにはしゃぐ二人を見ながら心の中でお礼を言う。
「けっこうグロテスクね」
『セブが男を見せて毒見してくれマース』
「か、勝手に決めるなよ」
学年が上がってもずっとこういう関係が続けばいいと思う。
流れていく賑やかで温かい時間―――
「うぅ、寒いわね」
「ユキは寒くないのか!?」
『ちょうどいいよ。二人ともそんな格好で暑くない?』
「「寒いっていってるだろっ(でしょっ)」」
雪を舞い上げながら吹きつけてくる風。
白い視界の中で同時に叫ぶ僕たちにユキがキョトンとした顔で首を傾げた。コイツの体はどうなってるんだか……
三本の箒を出てハニーデュークスで買い物をした僕たちはホグズミードを見て回ろうという事になり雪をザクザク踏みながら適当に道を歩いていた。
クリスマスの近いホグズミードはどの家も戸口にリースを飾り、木には魔法でキャンドルが巻きつけられていてクリスマス・カードから抜け出したような世界になっている。
そんな家々を見ながら歩くのは楽しいがとにかく寒い。
手が凍えそうだ。
本当に凍えそうなほど寒いのに……
『あっちの方に広場がありそう。雪合戦しない?』
僕たちの返事を待たずにユキが走っていった。
吹雪のような風もそよ風程度にしか感じていないらしい。
その姿はあっという間に雪の中に消えていく。
「どうしてあんなに元気なのかしら」
リリーが歯をガチガチ鳴らしながら言った。
「僕がユキを連れ戻してくるから君はこの店で待っていてくれ」
雪合戦なんてとんでもない。
僕たちは今にも風邪を引いてしまいそうだった。
「私も行くわ」
「連れ戻してくるだけだから僕だけで十分だ。直ぐに戻るから」
「じゃあ、これを持っていってユキに渡してあげて」
リリーはつけていた耳あてを僕に渡して魔法用具店に入っていく。
「ユキの奴はどこに行ったんだ?」
僕はマフラーを鼻まで引き上げてユキが向かったであろう方向に歩いていく。
しばらく歩き、坂道を登りきったところでようやくユキの姿を発見した。
しゃがみこんで何やら一生懸命手を動かしている。
「ハアァ絶対にやらないからな」
ユキの足元にある物を見てゲンナリする。
あるのは大量の雪玉。
雪合戦する気満々のようだ。
『リリーは?』
首だけ振り向いてユキが聞いた。
「ダービッシュ・アンド・バングズにいる。一緒にそこまで戻るぞ」
『えーー雪合戦は??』
「こんな寒い中で雪合戦なんかしたら風邪引くだろ?僕もリリーもやらない」
『うぅ、どうしても?』
「ど・う・し・て・も、だウワッ」
ユキが投げた雪玉がボスンと顔にヒットした。
顔から雪を払い落とせばニヤニヤ笑うユキの顔。
……いいだろう。
少しだけユキの雪合戦に付き合ってやる。
「ロコモーター 雪玉!」
『うわぁ魔法使うなんてズルいよっ』
ユキの足元めがけて呪文を放つ。
フワフワと浮き上がった雪玉がユキの頭上に降り注ぐ。
身のこなしの素早い優秀なビーターでもこれは避けきれない。
ユキはあっという間に雪まみれ。
『やったわねー!』
言葉とは対照的に楽しそうなユキが地面の雪で新たな雪玉を作る。
ヒュンと飛んでくる雪玉。僕はそれをプロテゴで防ぐ。
防いで、ぶつかって、笑って、弾き返す。
息を切らしながら僕たちは雪上を走り回った。
「ハァ、ハァ、もう終わりにしよう」
『私も、ハァごほっ、動けない』
僕とユキは並んで雪の上に体を投げ出した。
体が熱くてマフラーも手袋も脱ぎ捨ててしまう。
小降りになった雪が灰色の空から降ってくる。
『えへへ、楽しかったね』
「まあ、寒くはなくなったな」
寝返りを打ってユキの方を向くと彼女も僕の方に寝返りを打った。
ゾクリと震える体。
寒かったからではない。
ユキの顔はハッと息を呑むほど美しかった。
浮世離れした美しさはこの世界の人間ではないような印象さえ持たせる。
瞳孔が分からないほど黒い瞳がさらにそう思わせる。
どうしてこんなに鼓動が早くなるのだろう……
『ふふふーえへへ』
「な、何だよ。いきなり笑い出して気味悪いな」
ユキは美人だ。それに可愛い。
そんなことを思ってしまった僕の体温は一気に上昇する。
僕が好きなのはリリーだったはずなのに……
もしかして、僕はユキの事を―――
『このままセブを独占していられたらいいのに!』
再び仰向けになったユキが空に叫んだ。
灰色の空に吸い込まれていく声。
僕は大きく目を見開いた。
―――僕はユキを好きになったのかもしれない……
ユキがどういう意味で告白めいた今の言葉を叫んだのかは分からない。
僕がユキとリリー、本当はどちらを好きなのかも分からない。
だが、確かにユキとの関係が今までと変わったと感じる。
ユキの横顔から視線を逸らし僕も空に顔を向ける。
自分の心を見極めようと目を瞑っていると、耳元でシャリっと雪が潰れる音。
目を開けた僕は驚愕した。
「な、え……ユキ?え……えぇっ!?」
目を開ければ僕の顔を挟むように手をついたユキに見下ろされていた。
頬に触れる黒髪。
唖然とする僕に近づいてくるユキの顔。
こ、これってまさか―――
胸がはち切れそうになりながら目を強く閉じる。
ボスボスッ ボスッ
おかしな音。目を開けて横を見る。
白い雪の上に散っている泥。
頭をフルフルと振りながら上体を起こしたユキの視線を追うと、そこにいたのはグリフィンドールの悪戯仕掛人四人。
「ったく、何でユキが泥かぶってんだよっ」
焦ったようなイラっとしたようなブラックの声。
僕はそれを無視し、さっきのドキドキも忘れユキの顔を凝視していた。
『紛らわしいことを……』
低い呟き声。
目の前にいるユキは僕の知っているユキではなかった。
半月を描いた口と光のない漆黒の瞳。
背中に悪寒が走る。
ユキから発せられる気のようなもので僕の体は震える。
『怪我はない?』
「大丈夫だ。ていうか、余計なことするなよ」
『えー酷いなぁ』
「いいから早く僕の上からどいてくれ」
『はあい』
ユキが僕の上からどいてホッとする。
隣に立つユキを見ているとグリフィンドールの4人が小走りにやってきた。
雪に足を取られて転んだブラックを見てユキがケタケタ笑った。
今のユキに変わったところはない。普段のユキだ。
さっきユキに感じたものは何だったのだろう?
あれは僕の気のせいだったのだろうか。
そういえば、前にもユキに似たような事を感じた時があったような―――
「アレ!?リリーがいないじゃないか」
僕の思考はポッターの声で中断された。
「あ?エバンズならここに来る時通った魔法用具店にいたぞ」
「何イイィ!シリウス、どうして教えてくれなかったんだい!?ここに来る意味ないじゃないか」
「俺たちは雪合戦しに来たんであってエバンズの尻を追っかけにきたわけじゃねぇよ」
「君はそうでも僕はリリーのお尻を追いかけにきたんだっ」
「胸張って言うことじゃねぇから、って帰るなジェームズ!」
「雪合戦するなら人数合わせたほうがいいよね。僕はユキのチームに入ることにするよ」
「ちょっと待て、勝手に決めるな。ピーター、リーマスを止めろ」
「え、え!?む、無理だよぉ」
「そうそう。君には無理だよ、ピーター(僕に文句あるの?)」
「ヒイィ(ほらやっぱり!)」
「リリーに会いたいーー僕のリリイイイィィ!」
「うーーるせえエエェ」
前にいる馬鹿4人から視線を外して下を向くと、隣にはせっせせっせと雪玉を作っているもう一人の馬鹿がいる。
やめてくれ。雪合戦はさっきので十分だ。
このままではまたユキのペースに巻き込まれる。
どうしたものか、と考えていると遠くから僕とユキの名を呼ぶ声。
顔を上げるとこちらに走ってくるリリーの姿。
「愛しのリリーー!!僕に会いに来てくれたのかい!?」
ポッターを見据えながら手を差し出す。
「ユキ」
『そうこなくっちゃ』
ニヤリと笑ったユキから雪玉を受け取り投げると、ボスンッと良い音をたててポッターの顔面にヒットした。
「ユキ、セブ!」
ポッターが雪に沈んだのを横目で見ながらリリーが僕たちのところまで走ってきた。
「二人ともなかなか来ないから迎えに来ちゃったわ」
「ちょっと色々あって……」
『ごめんね、リリー』
腕を組んで怒った顔をしていたリリーだが、謝る僕たちに直ぐいつのも笑顔を向けてくれた。
「私が寒さにギブアップしてユキを追いかけられなかったんだから気にしないで。それよりナイスコントロールだったわね、セブ」
リリーが悪戯っぽく笑った。
そんな彼女に僕もニヤリと笑みを返す。
『リリーも雪合戦するでしょ?私たちのチームに入ってよ』
「っ!?ユキ、リリーを誘うな。リリー、無理しなくていい。相手は男子ばかりだし、雪玉でも当たったら痛い」
「あら、私を甘くみないで。これでも運動神経は悪くないのよ」
『やったー!』
「リリー!」
「セブったら心配しないで。雪玉はこれね。雪合戦なんて久しぶりだわ」
腕をグルグル回して準備運動しているユキとワクワクした顔のリリー。
僕も参加するしかないようだ。
「男女と人数のバランスが悪いね。やっぱり僕は向こうのチームに入れてもらうとするよ」
『リーマスなら大歓迎だよ』
こちらにやってきたユキとルーピンがハイタッチをした。
胸に苛々を感じて僕は眉を寄せる。
もしかしてこれは嫉妬なのか?じゃあ、今僕が好きなのは――
「リリーがいるなら僕はあっちのチームに入る」
ポッターが叫んだ。
僕の思考をいつも邪魔するのはポッターだ。
「お前が来たらあっちが二人になるだろ。戻れ」
「嫌だね。文句があるならスニベルス、お前が抜けたらいい。あっちに座って黙って見ててくれ」
僕たちは同時に杖を取り出した。
考えていることは同じらしい。ポッターの視線の先にあるのはユキが大量に作った雪玉。
しかし―――
「「うわっ」」
顔に雪玉が当たって尻餅をつく。
前では同じようにポッターが尻餅をついている。
誰も呪文を唱えていない。という事はやったのは一人しかいない。
『魔法なんか使ったらつまらないよ。ルールは杖なし。敵は自分以外の全員。マフラーを取られたら負けってことでどう?』
ニヤリと口角を上げるユキ。
その場の全員が自分のマフラーをキツく巻きなおす。
『みんな覚悟してね?』
雪の野原に僕たちの声が響き渡った。