第3章 小さな動物たち
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12.黒狐の入院
黒髪、黒目の私に驚いたマダム・ポンフリーによって入院は10日も延長させられてしまった。
私にとっては今の姿こそ本来の姿なのだが周りからしたら驚きでしかない。
容姿の変化は自分でも上手く説明できないので私は大人しく入院しているのだが……
『もうヤダ。暇、暇、ヒマ!』
読んでいた本を閉じてポンとベッドサイドテーブルに放り投げる。
体は元気だから動きたくて仕方ない。しかし、抜け出したのがバレたら後が怖い。
マダム・ポンフリーに入院を延長されたら堪らない。
『早く誰か来てくれないかなぁ』
決まった量の食事。夜ふかし厳禁。
自由のない入院生活。
容姿が変化した日から3日間の絶対安静を言い渡されていたため、今日まで誰かと会うのも禁止されていた。
ようやく今日から面会謝絶が解ける。
コチ、コチ、コチ、コチ
柱時計と睨めっこしていた私はベッドから飛び降りる。
時を刻む音に紛れて聞こえてきた足音。
スリッパを履いてドアへと走り出す。
『セブ!リリー!』
扉を開けると予想通りセブとリリーの姿があった。
驚いた顔をしている二人の手を引き医務室の中に引っ張り入れる。
「何だ。元気そうじゃないか」
ツンとした言葉とは裏腹にホッとした表情を見せるセブを見て嬉しくなる。
『どこも悪くないのにあと1週間も入院なんて耐えられないよ』
「だけど入学してから倒れたのは2回目だろ?マダム・ポンフリーは倒れた原因を何と言っていた?」
『分からないって。聖マンゴ魔法疾患傷害病院にも検査を受けに行ったけど、異常なしって診断だった』
「そうか……」
「いったい何が原因なのかしらね」
『そんな顔しないで、リリー。元気なんだからいいじゃない』
私はベッドに腰をかけ2人にも座るよう促す。
私が忍であることはダンブルドア、ミネルバだけが知る秘密となっていた。
この話を打ち切りたかった私は話題変える。
『ねぇ、まだホグズミード行きの掲示は出てない?』
「あぁ、それなら今日の朝に掲示が出た」
「メモしてきたわ」
『さすがリリー!』
リリーがローブのポケットからメモを出し、ホグズミードの日を教えてくれた。
ホグズミードに行ける日は来週の土曜日。予定通り退院できれば私も行くことができる。
お菓子を買って、バタービールも飲みたい。自然と頬が緩んでいく。
『セブ、リリー、ホグズミード一緒に行こうよ!』
「もちろんよ。私もユキとセブを誘おうと思っていたの」
ニコッと可愛い笑顔でリリーが笑った。
「セブも大丈夫よね?」
「あぁ」
リリーから視線をスッと逸らしながらセブは「僕もそのつもりだった」とボソボソと言った。
「ホグズミード楽しみね。私はハニーデュークスに行きたいわ」
リリーの意見にうんうんと頷く。
お菓子屋さんは外せないよね。
『三本の箒でバタービール飲みたい!」
「私も!」
「あそこは混むらしいから町に行ったら直ぐに三本の箒を目指そう」
『それがいいね。あと私が行きたいのは……』
『「「悪戯専門店“ゾンゴ”!』だろ(よね)?」
重なった私たちの声。
顔を見合わせて一斉に吹き出す。
ワイワイ賑やかに、私たちはマダム・ポンフリーが医務室に帰ってくるまで外出の相談を続けた。
そして再び静寂を取り戻した医務室。
『ひまー!マダム・ポンフリー!何かしたいよ~』
雑用でも何でもいいから手伝わせてと頼む私にマダム・ポンフリーは苦笑い。
「大人しく横になっている事が今のあなたのすべき事。退屈でしょうけど辛抱なさい」
『うぅ……』
ボスンと枕に顔を沈める。
暇過ぎて癇癪を起こしてしまいそう。手足をバタバタさせて動けないイライラを解消していると「仕方ないわね」とマダム・ポンフリーが笑った。
「薬棚の整理を手伝ってくれるかしら?」
『わぁ!是非やらせてください!』
「ただし、少しでも体調に変化を感じたらベッドに戻るのですよ?」
『はーい!』
傷薬、頭痛薬、元気爆発薬……
『これはどんな時に使うお薬ですか?』
「それは生ける屍の水薬。非常に強力な睡眠薬で使い方を誤ると一生眠り続けてしまうの」
『ふうん』
マダム・ポンフリーは癒者。
癒者の仕事は病気や怪我、魔法疾患の人を救う仕事。私が今までやってきた暗殺とは真逆の仕事。
もし、この世界にいることが出来るなら、私は将来誰かの役に立つ仕事がしたい。
癒者を目指してみようか……
まだ思い出してない記憶が有る気がする。
これからの将来がどうなるか分からない。
でも、目標を持つことは悪くない。
不安ばかりで先行きの見えない未来への道にぼんやりとだが灯りが灯った。
お手伝いの後、ベッドでセブが持ってきてくれた授業のノートを書き写しているとマダムに声をかけられた。
「ダイアゴン横丁に薬材調達に行かなくてはならないから数時間留守にするわね」
『数時間って3、4時間ですか?』
「……抜け出そうと考えているの?」
『うっ……』
言葉を詰まらせる私にマダムは抜け出したら入院延長ですよ、と釘を刺す。
せっかくのチャンスだったのに余計なこと聞いちゃった。
「大人しくお留守番していて頂戴」
何かあったら授業をしていない教授に伝えるように、と言い残してマダム・ポンフリーは出て行ってしまった。
話し相手さえいなくなった医務室。杖もマダムに取り上げられているから魔法の練習もできない。
誰もいないから忍術の練習でもしてやろうか、と考えているとキイィと扉が開く音。
驚いて固まる。
足音が聞こえなかった。
ベッドの下に隠していた苦無を取り出し構える。
高まる緊張……
『あっ……Mr.クィレル?』
扉から顔を覗かせたのはレイブンクロー寮1年のクィリナス・クィレル。
私は、ペコリと会釈して医務室に入ってきた彼に見られないよう苦無を枕の下に隠す。
彼と会うのはあの例の夜以来。
ミネルバから元気に過ごしていると聞いていたが、医務室から出られず面会謝絶になっていた私は実際に彼と会うことが出来ていなかった。
苦無で脅してしまったこと。私を庇って呪文を受けてくれたこと。
早く直接会って謝りたいと思っていた。
『私に会いに来てくれたの?』
「はい……」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声。
私を見たり、床に視線を落としたりと挙動不審な様子の彼をジッと観察する。
これは私に対する恐怖だろうか……と思ったが、私に会いに来てくれたくらいだから違う。では何か、というと思い当たるのは……。
『髪の色と目の色が変わったから驚いてる?』
そう尋ねると「少し」とまた小さな声で返事が返ってきた。
「あ、あの……」
『何?』
「ぐ、具合はいかが、ですか?」
『元気だよ。ありがとう』
そう言うとMr.クィレルは安堵の息を吐きだした。
『嫌じゃなかったら私のベッド脇の椅子に座ってくれない?あの夜のことを話したいと思っていたの。もし、嫌じゃなかったらだけど……』
「い、嫌じゃないです」
パッと顔を上げたMr.クィレルに微笑みかけると彼の顔は一瞬にして紅潮してしまった。
ずっと私の後をつけていた彼。
彼が私の様子を見ていたのと同様に私の方も彼を観察していた。
Mr.クィレルは成績優秀で運動神経も悪くない。
性格は良く言えばきっちりしていて、物事を深く追求するタイプ。
悪く言えば神経質といったところ。
それから極度の緊張しいで人と話すのが苦手な様子だった。
そんな彼が私を訪ねてきてくれたのが嬉しい。
他人と接するのが不得意な彼には大きな勇気が必要だっただろう。
会いに来てくれてありがとう。直ぐに今の気持ちを伝えたかったが、その前に彼に言うことがある。
『ごめんなさい』
「あ、え、あの、あ、頭を上げてください」
精一杯の謝罪の気持ちを込めて頭を下げると上から慌てた声が降ってきた。
そして私は手を引っ張られて彼に上体を起こされる。
ん?今、何が起こっているのだろう?
私の両手を引っ張った彼はそのまま自分の方に私の手を引き寄せて手の甲にくちづけを落としていた。
思考停止
「ご無事で、な、なによりです」
『う、うん?ありがとう』
彼と同じように吃ってしまいながら私は掴まれていた両手を引き、背中に隠した。
何故だろう。この子、なんか怖い。
背中にうっすらと寒気を感じながら言葉を続ける。
『私のせいで怖い思いをしたり、お腹に呪文を受けて気絶したり、とても申し訳ないと思っていて』
「いいのです。そのことなら、もう」
『でも……』
「むしろ私はう、嬉しいのです」
『……え゛?』
俯いていた私は顔を上げる。
「私はあなたの新しい顔が見られて、あなたの役に立てて、他の生徒が知らないあなたを知ることができて嬉しいのです」
ニコッとMr.クィレルが私に微笑んだ。
「入院中なのですから、ベッドにも、戻ってください」
全く彼の考えが読めない。
頭を混乱させながら促されるままにベッドに入ると彼は話しだす。
その話は私を初めてホグワーツで見かけた時から始まって、図書館で勉強している時、食事中、クィディッチの練習中、私がどんな様子でどんな事をしていたか……というもの。
「ですが、や、やっぱり、見ているだけでは、つ、つまらないのです」
初めは見ているだけで満足していたのですがね。と肩をすくめるMr.クィレルの前で顔を強ばらせる私。
この時、私は初めて任務以外で誰かを尾行する人がいることを知った。
『わ、私もただ見られているより話しかけてくれた方が嬉しいよ』
忍という職業柄、誰かにコソコソつけ回されたり、背後を取られるのは好きではない。
「で、では、私とユキ先輩は“友達”という事でよろしいでしょうか?」
『ウン。よろしいデス』
何故かゾワリと背筋が寒くなるのを感じながら頷く。
「わ、私のことはクィリナスと、お、お呼び下さい」
クィリナスと握手を交わす。
ふと柱時計に目を向ければ休み時間が終わる5分前。
『授業の教室に移動しないと』
「そ、そうですね。名残惜しいですが、い、行かなくては」
そう言うクィリナスは本当に残念そうな顔をしているから、私は思わず彼に気を許してしまった。
『よかったらまたお見舞いに来てくれたら嬉しい。暇で暇で仕方ないからいつでも大歓迎だよ』
こんな余計なことを言ってしまったのだ。
パッと輝くクィリナスの顔。
「では、今日の放課後にまた来ます!」
『う、うん』
あ……今日中に来てくれるんだ。
ありがとう、と手を振りクィリナスを送り出す私の顔はとっても、とっても、引き攣っていた。
ひと眠りして、鐘が鳴ってお昼休み。
マダム・ポンフリーはまだ帰ってこない。
3、4時間で帰ってくるって言っていたのにな……。
普段、私とマダム・ポンフリーが食事で使っているテーブルには既に美味しそうな料理が届いている。
湯気の立つスープ、白いパン、果物の盛り合わせ。
料理を目の前にお腹から情けない音をキュルルと鳴らしていると扉の外で人の気配。しかし、足音は一人ではなく二人。
タタッと扉に走って開ける。
「よお、ユキ!ユキなのか!?」
『あはは、シリウスったら驚きすぎだよ』
「エバンズから髪と目の色変わったって聞いてたけど驚いたな」
「雰囲気もずいぶん変わるものだね」
扉の外にいたのはシリウスとリーマスだった。
私は二人が持っているものを見て小首をかしげる。彼らのそれぞれの手にはサンドウィッチ入りのバスケット。
『私の分?』
「ちげぇよっ」
間髪入れずにシリウスに否定された。残念。
「外出前のマダム・ポンフリーに呼び止められてね。急遽、聖マンゴ魔法疾患傷害病院にも寄らなくちゃいけなくなったから、食事は先に食べているように、ってユキに伝えて欲しいって頼まれたんだ」
クスクス笑いを終えたリーマスが言った。
「で、一人で食事なんてつまらねぇだろうから、俺とリーマスも医務室で食べられないか聞いたんだ」
「“静かに”“お行儀よく”っていう条件付きで許してもらえたよ」
『ワァ!嬉しい。ありがとう』
シリウスの言う通り一人で食べる食事はつまらない。
二人が私の事を思ってマダム・ポンフリーに頼んでくれたことが凄く嬉しい。
「本当はMs.エバンズも来たがってたんだけど、大人数はダメだってマダム・ポンフリーに言われてしまってね。残念がってたよ」
「あ、ついでにジェームズもユキを心配してたぜ。これはユキに渡してくれって頼まれたお見舞いだ」
対面に座ったシリウスがローブから小さな箱を取り出した。
ピンク色のリボンがかかった小さな箱。
蓋の片一方の側面が固定されている作り。
これは怪しい。
フフン、私を騙すなんて百年早いよね。
意味ありげに視線を交じ合わせるリーマスとシリウスを見て思う。
これはどんな悪戯だろう?
「開けてみろよ」
シリウスに頷く。
もちろんそのつもり。
でも、悪戯に引っかかるのは私じゃなくてあなたたち二人だよ。
『いくよ!』
「ユキっ、こっち向けないで!」
「うわぁ待て、待て、待て!」
焦った顔で椅子から立ち上がる二人にニヤリと笑って箱の蓋を開ける。
ボンッ
箱から勢いよく飛び出した白い煙。
リーマスとシリウスの姿が見えないくらいの煙だ。
ゴホゴホ咳き込む音。
徐々に薄くなっていく白煙に目を凝らしていた私は二人の変わり果てた姿に大笑い。
「ゴホッ午後も授業あるのにどーすんだよ」
『悪戯仕掛け人の諸君。まだまだだね』
涙目でこちらを睨むシリウスにニヤーと笑ってやる。
「ハアァやっぱりユキは手ごわいな」
リーマスは自分の髪を一本引っこ抜いて苦笑い。
二人の姿はペンキを頭からかぶったように全身真っ赤に染められていた。
ローブやズボンだけでなく顔や爪まで真っ赤だ。
赤くないのは目と口の中くらい。
『派手な悪戯グッズを買ったね』
「買ったんじゃなくて作ったんだ」
少し得意そうにシリウスが言う。
「5時間は持続するように作っちゃったんだ。もっと短い効き目にしておくべきだったと後悔してるよ」
「ユキをグリフィンドールカラーに染めてやりたかったのに残念だ」
『自作するなんて凄い!ねぇ、その作り方教えてくれる?』
食事をしながらリーマスとシリウスが代わる代わる作り方を説明してくれる。
最近の悪戯仕掛け人は悪戯グッズを自分たちで作るようになったらしい。
授業で習った魔法薬を改良したり、図書館で悪戯に使えそうなネタを探しているそうだ。
彼らに負けていられない。
退院したら私も悪戯グッズを自作してみようと心に決める。
「そういや、ユキ。ホグズミード行きの日が決まったって誰かから聞いたか?」
『朝にセブとリリーから聞いたよ』
「もしかして、もう彼らとホグズミードに一緒に行くって約束しちゃった?」
約束した、と頷くと二人の顔は曇ってしまった。
『シリウス?リーマス?』
「あぁ、ごめん。実は僕たちと一緒に行かない?ってユキを誘うつもりだったんだ」
残念そうに眉を下げるリーマスの前で私も同じ顔になる。
悪戯仕掛け人とセブは仲が悪い。それにジェームズはリリーにしつこくするだろうからな……。
皆で一緒に、は残念ながら無理な話。
『せっかく誘ってくれたのにごめんね』
「ううん。気にしないで。ホグズミード行きは一年に何度もあるから」
「ちょっと気が早いような気もするけど次の」
ドアがノックされる音がしてシリウスが口をつぐみ、私たちの意識は医務室の入口に移る。
マダム・ポンフリーの足音ではない。けが人だろうか。と考えていると扉を開けてレギュラスが医務室に入ってきた。
「失礼しま……失礼しました」
『え!?何で出て行くの!?』
こちらを見て思い切り顔を顰めたレギュラスは扉をバタンッと閉めて出て行ってしまった。
そんな彼を急いで追いかけて掴まえる。
掴まえたのは階段の手前。
ここまでならギリギリ脱走じゃない、よね。
『医務室に用事じゃなかったの?』
「うわっ!?気配消すのやめて下さいっ」
『ごめん』
謝る私はさらに「走ってきたんですか?病人だって自覚あります?」とレギュラスに怒られてしまった。
『そんなに怒ることないのに……。それより、医務室へはどうして来たの?マダム・ポンフリーに用事なら伝えておこうか?』
レギュラスの様子から怪我や病気ではないと判断した。
彼の返事を待っていた私は目を瞬く。
返事の代わりに私に差し出されたのはリボンのかかった箱。
「チョコレートです」
『私にくれるの!?』
「それ以外に何があるんですか」
押し付けられるように手渡された箱を見る。
―――毒が抜けるまでどのくらいかかる?
―――1週間あれば。
―――5日で治せ。次の任務がある。
どんなに酷い怪我をしてもお見舞いの言葉さえかけられなかった暗部の時とは違う。
人の温かさが胸に染みる。
鼻がツンとして、じんわりと目に涙が浮かぶ。
「泣くほどひもじかったのですか?」
『違うよっ』
レギュラスのせいで感動が台無しだ。
むっとする表情に変わった私の目から涙が一粒零れてしまう。
頬に伝った涙を手で拭こうとしたが、それより早くレギュラスがハンカチで涙を拭い去ってしまった。
『痛っ。痛いって!』
執拗に頬をゴシゴシ擦るレギュラスの手を払いのける。
「前のお返しです」
『??私、何かしたっけ?』
凄く睨まれた。
覚えてなくてごめんね、レギュラス。
「では僕はこれで。思ったより先輩が元気で安心しました」
『シリウスには会っていかないの?』
「会っても話すことなんかありませんから」
『ふうん』
そういうものかと相槌を打つとレギュラスが盛大なため息をついた。
彼はなかなか私に厳しい人だと思う。
「しっかり治して早く退院して下さい。先輩がいないとクィディッチの練習がつまらないですから」
『わわっ』
少し背伸びをしてレギュラスは私の頭を乱暴に撫で、階段を降りて帰っていく。
『レギュラス!来てくれてありがとう!』
振り向いたレギュラスの顔に小さな笑み。
暇で暇で仕方ない入院生活だけど、たまにはいいかもしれない。
私は貰ったチョコレートの箱を胸に抱きしめながらそう思っていた。