第2章 純粋な猫
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23.秘密の部屋 後編
まだ倒れるわけにはいかない。
「お前――どうやった!?なぜ僕の力を吸うことができる!?」
『あなたのじゃなくてジニーの力を返してもらっているだけよ』
ユキは余裕のあるような表情を浮かべていたが、今にも気を失いそうになっていた。
自身の魔力を注ぎ、ジニーの容態を安定させたユキはこの時点で体力の限界を感じていたが、思い切って次の一手を打った。
リドルからジニーの体を通して魔力を奪い返すことだ。
奪うといっても元はジニーの魔力であるからユキの魔力が増えるわけではない。
減る一方の魔力でユキの目は霞始めていた。
「不死鳥……」
苦々しげにリドルが呟く。
ユキの意識は不思議な旋律によって闇の淵から引き戻される。
この世のものとは思えない旋律は ハリーとユキの心を温め、励ました。
深紅の不死鳥は金色の尾羽を輝かせ真っ直ぐに飛び、ハリーの肩に着地し、足元にボロボロのものを落とした。
フォークスが持ってきたものを見たユキは目を瞬く。
ダンブルドアがフォークスに持たせたに違いないそれは、ボロボロの組分け帽子。
これが一体何の役に立つというのか。
「ハハハ、歌う鳥に古帽子とは!頼もしい味方ができたな。さぞや心強いことだろう」
耳障りなリドルの高笑いが部屋に反響する。
しかし、ハリーはリドルの笑い声など少しも気にならなかった。
自分は一人で戦うわけではない。
フォークスとダンブルドアが送ってきた組分け帽子、それに手にはユキから渡された巻物もある。
ハリーは顔を上げてキッとリドルを睨みつけた。
「僕はお前なんか怖くない。しかも2度も僕を殺しそこねている。1度目は僕を庇った母によってお前は力を奪われた。2度目に会ったお前は落ちぶれた残骸のようになっていた。醜くて!汚らわしい!」
リドルはハリーの言葉に顔を歪めたが、すぐにぞっとするような笑顔を取り繕った。
「……なるほど。赤ん坊のお前が死ななかったのは母親の反対呪文だったわけか。僕は今までお前と僕の間に何か特別なものがあると思っていたよ。だけど、僕の手から逃れられたのは単なる偶然からだった」
リドルはクルクルと弄んでいた杖を頭の上まで振り上げた。
放たれた閃光。
ハリーは逃げることもできず、その場で身を固くする。
「……泣けるね。死にかけてるのに、そんなに生徒が大事かい?」
ハリーに放たれた術を弾き飛ばしたユキだったが、今の状態をリドルに見抜かれていた事にグッと奥歯を噛み締める。
ユキは体力がなくなってきてリドルからジニーの魔力を取り戻せなくなっていた。
再びジニーの魔力はリドルへと流れ始めている。
ユキはジニーの命が途切れないように朦朧とした意識の中で抵抗している状態。
「さて、一番初めに倒れるのは誰かな?バジリスクの餌食になるハリー・ポッターか。君を崇拝している間抜けな小娘か。無駄あがきを続ける雪野先生か」
ユキは呼吸を荒くしながらリドルによって開けられた石像の入口を見た。
入口は広がっていき、暗い大きな穴の奥からはズルズルとバジリスクが地を這う音が聞こえてくる。
『ハリー!まずは後ろに下がって距離をとって。目を薄く開けて、目線は地面に』
ハリーはつまずきながら部屋の奥へと移動した。
ジニーの上に覆いかぶさるユキの頭上をフォークスが飛んでいく。
「バジリスクにはハリー・ポッターだけを狙わせますよ。その方が面白いからね」
愉快そうに話すリドルがパーセルタングでバジリスクに指示をだした。ユキは薄目を開けて様子を覗う。
毒々しい緑色の蛇の胴体は百年生きた樫の木より太い。
毒牙や眼の光線がなくても踏み潰されれば即死だろう。
「うわっ!く……」
ドスンという音で目を向けるとハリーが石の床に倒れていた。
すぐに起き上がったものの強く顔を打ったらしく血を流している。
バジリスクはシャーッと声を上げて、ハリーに近づいていった。
『今よ。持っている巻物を投げて。さぁ、早く!』
ハリーが巻物を投げるのと同時に、ユキは親指を歯に当てて血を出し地面を叩いた。
ボンっと煙を出した巻物から出てきたのは血のように赤い羽根を持つ鳥。
<お久しぶり~。呼んでくれて炎子嬉しギャアアアア!なんで、蛇がいるのよっ!!>
『どこ行くの!?その蛇と戦わせるために呼んだのに、逃げんじゃないわよ!』
呑気な声で登場したユキの口寄せ動物は金切り声を上げて天井まで飛んでいった。
本当は車両1つ分の大鳥、炎帝を呼びたかったのだが少ない魔力で呼び出せるのは鷲ほどの大きさの炎子が限界。
ユキは焦ったように天井付近をグルグル飛ぶ様子を見て大きなため息をついた。
<初めての魔法界がこんなジメジメ薄暗い洞窟なんて最悪。ユキちゃんの馬鹿、馬鹿>
『わ、悪かったわよ。機嫌直して戦って。ね?』
<嫌よ。酷いじゃない。私がヘビ大嫌いだって知ってるでしょ>
『んもおおおおぉぉ!こんのアホ鳥、役立たず!』
<言ったわねー。もー炎子怒った。お家に帰ってやるんだからっ〉
ギャーギャーと言い合う一人と一羽に呆れた声を出しながら、不死鳥は急降下した。
勇敢なフォークスは長い金色の嘴でバジリスクの右目をズブリと攻撃する。
<わあぁ。綺麗な鳥>
うっとりとした目でフォークスを見つめる炎子。
『っハリーが危ない!』
苦痛の声をあげるバジリスクが大きく体をうねらせる。
ユキの声にいち早く動いたのは先程まで怖がっていた炎子。
ハリーの前に飛び出すと口から炎を噴き出した。
熱さに驚いたバジリスクが体を跳ねさせながらハリーから離れる。
『やれば出来るじゃない!』
「ありがとう。フォークスに……炎子さん?」
<炎子でいいわよ、人間。私があの蛇を黙らせてあげる>
フォークスに良いところを見せたい炎子は大張り切りでバジリスクに向かっていった。
その後ろにフォークスも続く。
2羽の深紅の鳥は協力し合い、バジリスクの左目も潰すことに成功した。
ふらふらする盲目の蛇に炎子は火を吹いて攻撃し、フォークスは鋭い嘴で突く。
『もう目を開けても大丈夫よ』
危険な眼が潰れたが、バジリスクには毒牙とその巨体がある。
しかし、リドルの顔には焦りの色が見え始めていた。
「鳥にかまうな!匂いで探せ!小僧を殺すんだ!」
バジリスクがハリーを追い始めたのを確認したリドルはユキの喉元に杖を突きつけた。
「ここまでやるとは……見直しましたよ、ユキ先生。僕の配下に加えてやろう」
『お断りよ―――ッ!』
ユキはリドルが放った魔法で吹き飛ばされ、柱に打ち付けられた。
「断る?誰に向かって話しているのさ。お前に拒否権などない」
『あんたなんかに私の能力はもったいないわ』
「貴様……クルーシオ!!」
振り下げられた杖。
ユキは声にならない叫びをあげながら石の床に倒れる。
引き裂かれるような激痛が全身を襲う。
「僕に屈しろ。僕のものになれ」
『断、る』
「どこまで持ちこたえるか試してやるよ」
残忍な笑顔を浮かべながらユキを見下ろしていたリドルの目が大きく開かれる。
巨大な何かが床に落ち、部屋全体が振動する。
『ハリー!』
「ユキ先生、僕、やった……よ」
磔の術から解放されたユキの目に飛び込んできたのは銀色の剣を持ち、力なく崩れ落ちるハリーの姿。
その腕には長い毒牙が深々と突き刺さってしまっている。
「ハリー・ポッター、君は死ぬ」
絶望したように力なくハリーのもとへ行ったユキを、リドルは意地の悪い笑みを浮かべてフワフワ浮遊しついていく。
「ユキ先生、僕も一緒にあなたの可愛い生徒が死にゆくのを―――!?」
死んでいくハリーとユキの絶望した顔を見ようと、2人を覗き込んだリドルの目が大きく開かれる。
「何をした……?」
『解毒薬よ。完全な解毒はできていないけど、あなたの目論見は砕けたわね』
「貴様ッ……!」
『あとはフォークス、頼む!』
ユキの言葉に応えるように鳴いてハリーの肩に着地した不死鳥。
目からはキラキラと真珠のような涙が零れ落ちる。
「不死鳥の涙……癒しの力か!」
ハリーを守るように立つユキにリドルは呪文を放つが、いとも簡単に弾き返された。
『形勢逆転ね』
「杖も持たない小僧など僕の相手じゃない。それに、お前だって、お前だって、もう力はないはずだ!」
喚くリドルが杖を振り上げる。
ユキも途切れそうな意識の中、力を振り絞って両手を組んだ。
「アバダ『火遁・火炎砲!』ップロデゴ!」
ユキの口から出るドラゴンのような炎をリドルが弾く。
「この化物がッ今度こそ……」
怒りと憎しみの形相で怒鳴ったリドルが再び杖を振り上げる。
「そこまでだ!」
しかし、ハリーの声がリドルを阻んだ。
ハリーの膝下にあるものに目を向けたリドルの顔が驚愕へと変わっていく。
「な、何をする気だ―――」
「お前なんかに僕たちは負けない!」
「ヤメロ、ヤメロ、ヤメロ――――――」
ハリーは持っていたバジリスクの牙を日記へと突き刺した。
耳をつんざくような悲鳴が部屋中に響き渡る。
日記帳から流れ出る黒いインクが床を浸していく。
悶え苦しむリドルの姿は徐々に薄くなり、ついに部屋の中から消えた。
『ジニーが動いたわ!』
大きく息を吸い込むジニーにハリーが駆け寄る。
「先生!ジニーの目が開いたよ」
晴れやかな顔のハリーにユキは横たわったまま頷き返す。
身を起こしたジニーはキョロキョロと辺りを見渡し、日記を見つけてわっと泣き出した。
「あたし、とんでもないことを―――リドルが私を、あ、操って。ハリーに打ち明けようとしたの、でも、言えなかった。乗り移られて。あぁ、ここはどこ?あたし、お、覚えてないわ。何も―――」
「ジニー安心して。リドルはもういない。ほら!」
ハリーはジニーの背中をさすりながら、反対の手で穴の空いた日記を指さした。
毒牙で焼かれた穴からはまだインクが流れ出ている。
リドルがいなくなったと分かったジニーだが、顔を青ざめさせて俯いてしまった。
「ジニー?」
「あたし、退学になっちゃうわ」
「そんなことにはならないよ」
ジニーの手をキュッと握って笑いかけるハリー。
『そうよ。安心して』と言うユキは良い感じの雰囲気になる二人から目をそらし、助けを求めるようにフォークスを探した。
『……こっちもか』
スリザリン石像の頭の上。
見つけたフォークスと炎子はお互いを毛繕い中。
生徒と鳥の仲睦まじい様子を見せつけられたユキは大きなため息をついて虚しい心を静めた。
『さぁ、イチャつくのは後よ。さっさと地上に帰りなさい』
ユキはパチンと指を鳴らして炎子を消して、抗議の声を上げる不死鳥に目を向ける。
『みんな上で心配しているのだから先に仕事よ、フォークス。途中でロンとロックハートを連れて地上に飛んでいってちょうだい』
「ユキ先生は?」
『ごめん、ハリー。お腹が減って力が出ないの。上に行ったら校長にお菓子持って迎えに来てって伝えて』
「ハハハ、了解!」
おどけて言うユキにジニーもクスクスと笑みを零す。
ハリーとジニーはフォークスを先頭にトンネルへと戻っていった。
ジニーもハリーも無事で本当に良かった。
安堵の息を漏らすユキの手に冷たい感触。
『――――ッ』
いつの間にか流れてきていた黒いインク。
生き物のように伸び上がり、インクがユキを襲う。
驚きに見開かれたユキの目。
逆立つ白い髪、黄色い瞳の中で細くなる瞳孔。
自身でも気づかぬうちに発動した術。
空中でぶつかった白い光と黒いインク。
一命を取り留めたユキだが、意識は暗い闇の中に沈んだ―――
***
秘密の部屋へと降りたマクゴナガルは、床に横たわっているのがユキだとは気がつかなかった。
血の気のない顔に手を持っていき呼吸を確認し安堵の息を漏らす。
「ユキ!」
「クィリナス!?あなたついてきていたのですか」
マクゴナガルはいつの間にか背後にいたクィリナスを見て両眉を上げた。
クィリナスのほうはユキしか目に入っていないようだ。
ユキの手を取って口づけし「生きていてよかった」と震える声で繰り返している。
「上に運んでマンドレイク回復薬を投与しなければなりません」
マクゴナガルはポケットから出した小さな担架を杖でチョンと叩いて拡大させた。
「もう手放したくない。私が運んでいきます」
「気持ちは分かりますがユキを担架にお乗せなさい。あなたは姿を見られてはいけないのですよ」
「……誰に見られたって構わない」
「まったく。普段の冷静さはどこにいったのです?よく考えなさい。ユキが目覚めた時にあなたがアズカバンにいると知ったら彼女はどう思うかしら?」
渋々頷いてクィリナスはユキを担架に横たえる。
胸の上下の動きは注意して見なければわからないほど浅く、ちゃんと生きているか不安になる。
「マクゴナガル教授、ユキを運び終わったら私たちの部屋に石化した体をもう一体取りに来て頂けますか?」
「もう一体ですって!?いつの間に増えたのです?」
「ユキからは黙っておくように言われていまして」
「……いいでしょう。運び終わったらあなたたちの―――私たちの部屋とはどういう事です!?」
「……」
クィリナスは無言でアニメーガスに変身しユキの担架に飛び乗った。
頬に気遣わしげに擦り寄る姿は知らない者が見れば飼い主思いの従順な猫なのだが……
「あなたには色々言わなければならないことがありそうね、クィリナス」
重大な規則違反をした生徒を見るような目でクィリナスに鋭い目を向けてから、マクゴナガルは杖を振って担架を移動させた。
事件が解決してホグワーツが歓喜と安堵に包まれ、生徒たちがパジャマでお祝いをする夜。
ここ医務室にはパーティーの喧騒は届かず静まり返っていた。
部屋に集まる教授たちと1匹の猫は一様に厳しい表情を浮かべている。
「では、薬が効かないわけではないのじゃな、セブルス」
完成したマンドレイク回復薬で次々と石にされた生徒(もちろんニックも)が石化の状態が解け元の状態に戻る中、ユキの石化は一体も元の姿に戻らなかったのだ。
ユキだけが元の姿に戻らない原因は何なのか。
「一つは……これは我輩とマダム・ポンフリーの仮説ですが、雪野は毒にも、そして薬にも耐性があるため効果が出にくいのだと考えられます」
石化した4体にかけた薬は充分だった。
だが、ユキの石化は他の者と同じようには解けてくれない。
ユキ本体にもマンドレイク回復薬を飲ませてみたが結果は同じで石化は解けない。
しかし皆が焦りを募らせ始めた夜半、セブルスはある変化に気がついた。
石化の灰色が若干ではあるが本来の色へと戻ってきていたのだ。
「しかも1体しか変化が見られなかったなんて……」
マクゴナガルはそう言ってユキの頭を撫でた。
マンドレイク回復薬によって効果が現れたのは1体だけ。
ユキの石化が解除されるには他の者の何倍もの時間がかかりそうであった。
「一体何日かかるのかしら?その間、ユキの体力が持つかも心配だわ」
「それには心配及びません。栄養薬を投与し、我輩とマダム・ポンフリーが注意深く見守ります」
「私もそばにいる」と言うように猫がユキの枕元でミャーと鳴いた。
「必要なものが出てきたら言ってくれ。可愛い娘のためじゃ。何だって取ってくるわい」
「言っておきますがアルバス。ユキはあなたのではなく、私の娘です」
「おっ。それじゃあ儂とミネルバは夫婦じゃな」
「フッ」
「え?苦笑!?せ、せめてツッコミを入れてくれんかのう、ミネルバ」
「……そろそろハメを外しすぎるウィーズリーの双子が心配なので私は寮へ見回りに行きます。あとは頼みますね」
「私も先に休ませてもらうわね。6時間後に交代しましょう」
「ミ、ミネルバー儂を置いて行かんでくれ!いい子にするから無視せんでくれよーー」
「いい子って何ですか!?殴りますよ?……何喜んでるのです?気持ち悪い」
苦笑するマダム・ポンフリー、校長を邪険に扱うマクゴナガルと久しぶりに人に構われてご機嫌な校長が医務室から出て行く。
医務室に残ったのは魔法薬学教授とユキの飼い猫。
「飼い主が心配か?」
威嚇するような鋭い目。
スネイプは猫に話しかけた自分に苦笑しながらベッド脇の椅子に腰掛けた。
本体のユキの髪は雪のように白い。
そして顔色も髪に負けないくらい真っ白だった。
どうしていつも自分の知らないところで倒れるのか。
どうして大事な時にユキの隣にいることができないのか。
去年、そして今回……3度目があったら命が助かるかわからない。
「我輩は君の目にそんなに頼りなく見えるかね?」
スネイプはユキの冷たい頬をそっと撫でた。
目を覚ましたら言ってやりたいことが山ほどある。
自分の小言に口を尖らせて反論する元気な姿が見たい。
瞳を輝かせて自分を見上げるあの笑顔を見せて欲しい。
「目を覚ませ……起きろ……」
――――目を覚ませ!!……起きろ!!―――
「何だ、今のは……」
スネイプは息を飲んで、顔を上げた。
突如聞こえた声。
その声は聴き慣れた声、少年時代の自分の声だった。
そして頭の中に流れる映像。
「記憶……?どうなっている?」
頭の中に突如形成されたある期間のまとまった記憶。
記憶が現れる。
それはおかしな体験だった。
新しく作られた幼い日の思い出。
ホグワーツ入学直前の記憶。
――――すまない。怪我はないか?――――
暑さの残る昼下がり。
幼馴染とよく遊んだ公園で出会った少女。
――――これ、あなたがやったの?――――
雪のように白い髪。
一度見たら忘れることのない琥珀色の瞳。
奇妙な黒い服。
「雪野……まさかこんなことが」
――――お前も明後日からホグワーツに行くのか?―――
――――ほぐわぁつって何?――――
「……雪野」
震える体。
慌てた様子で医務室へと駆け込んでくるダンブルドアとマクゴナガル。
「ここにいるユキの意識は過去へ行ったようじゃ。まことに、信じられんことじゃが……」
――――お前、この辺の奴じゃないだろ。どこから来たんだ?―――
――――どこから……私、どっから来たんだろう?――――
一人話についていけないクィリナス。
猫は神経質そうな鳴き声をあげて飼い主の体にピッタリと寄り添った。
第2章 純粋な猫《おしまい》