第1章番外編
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クィレルの(妄想)新婚生活日記
朝4時00分
私の一日は愛しい新妻の声で始まる。
『朝だよー起きて下さーい』
「ぅ……ん……」
昨日は私たちの共通の趣味である魔法具研究に没頭していたので床についたのは一時すぎ。
どこの国だったかのマグルに三時間しか寝ない者がいたというのを聞いたことがあるが、私の妻もその類らしく余り睡眠を必要としない。
「うぅ……」
夢と現の間を彷徨っていると妻の急かす声が聞こえてくる。
もう少し寝ていたい、と思うのだが、
『起きないなら今日の鍛錬は一人で始めちゃうよ』
と我が新妻は拗ねてしまう。
(その拗ねた顔も可愛いのですがね)
直ぐに起きると返事をして上体を起こすが既に妻の姿はなかった。
怒らせてしまっては後で機嫌を取るのに苦労する。
身支度を済ませ、急いで外へ行きましょう。
「おはようございます、ユキ」
『おはよう。今日も暑いね』
夏って感じだよね。と言いながら素手で薪を割っている妻に曖昧な笑みを返しておく。
よく、男は暑がりで女は寒がりだ、というがうちの家庭の場合は逆。
標高の高い場所にあるこの家は真夏でもストーブが欠かせない。
私が寒がりなのだろうか?妻が暑がりなのだろうか?……という事は今は置いておこう。
そろそろ我が妻の個人授業が始まりそうだ。
『準備できたらいつでもどうぞ』
歌うように言いながら家の前に広がる草原へ駆けていく妻の背中に失神呪文を放ってみる。
瞬間、後ろで舌打ちが聞こえた。
どうやら呪文が生ぬるかったらしい。
マゾっ気の強い妻に自分の口が歪んでしまうのを感じながら地面の草に呪文をかける。
振り向けば、私の背後に回ってきていた妻が楽しそうに口角を上げながら襲いかかってくる草に火を放っている姿。
草を相手に戦う美しい妻の姿を眺めるのは楽しいがそろそろお仕舞いにしよう。
「フィニート!アグアメンティ」
草原が燃えている。
一面が焼け野原になっている。
そして家のバルコニーも燃えている。
「ユキ、あなたという人は……」
『げっ、消火お願い!』
焦る妻の横で家に呪文を放つ。
アグアメンティで消火完了。
『よかった。ちょっと焦げただけだったね、アハハ』
そうですね。ちょっとバルコニーが焼け落ちたぐらい、ですよね。
こういったおっちょこちょいで天然なところも妻の可愛いところです。
さて、妻のウォーミングアップが終わったら次は私の番。
『今日は変化の術をやってみようか』
私の妻は異界から来た忍者でホグワーツの忍術学教師。
私はそんな妻から忍術の手ほどきを受けている。
興味深い忍の術。
変化の術のやり方を教えてもらい、術を唱える。
ポンッ
『わ、わーお……』
大きく目を見開く妻に微笑む。
私が変身したのはユキの姿。
愛する妻の姿なら完璧に変身できる自信があった。
「どうです?」
『完璧デス』
「お褒めに預かり光栄です」
自分に変身されたことに照れているのだろう、ユキが私から顔を背けてしまった。
そういう照れ屋なところも可愛いです。
その他、決まった朝の鍛錬メニューをこなして家の中へ。
『シャワー空きました。ありがとう。今日は紅茶とコーヒーどっちにする?』
「コーヒーにして下さい」
『珍しいね。了解です』
お風呂上がりの艶っぽい姿のユキに答えてシャワーへと向かう。
これは自慢だが、私の妻は料理上手だ。
汗を流し、シャワー室の扉を開ければ良い香りが鼻をくすぐる。
『勝手にオムレツにしちゃった』
いつも私に食べたい卵料理を聞いてくれるユキ。今日はどうしてもオムレツが食べたい気分だったらしい。『ごめんね』などと謝る必要などないのに……いちいち可愛いです。
『スープ出来るまでもう少しかかるから待っていて下さい』
「わかりました。ええと、新聞は……」
『はい、コレ』
「ありがとうございます」
背後からもう一人現れたユキに(こっちが分身だろうか?)に新聞を手渡される。
台所で鍋がカタカタという音が聞こえてパタパタと音がしそうな様子で駆けていく妻の後ろ姿に自然と頬が緩むのを感じながら新聞に目を落とす。
コーヒーを飲みながら新聞を読む朝食前のこのひと時が私は好きだ。
ユキと結婚できて良かったと心から思う。
『お待たせしました』
「美味しそうですね」
『えへへ、たくさん食べてね。では、頂きます』
「頂きます」
温野菜のサラダに野菜が沢山入ったスープ。ソーセージに食パン、クロワッサン、ベーグル、オムレツ、スコーン、ポテトサラダ、照り焼きチキン、焼いた魚、シリアル、ミートソースパスタ……
食べている時の妻は本当に幸せそうな顔をする。
この笑顔を私が一生守り通してみせますからね、ユキ。
『!?』
「どうしました?」
『え……ううん。ちょっと寒気が、ね(今の悪寒なんだろ……)』
どうしたのだろうか?
風邪の引きはじめかもしれない。今日は一歩も外に出ない方がいいだろう。
ユキは外出したがるだろうが、私は心を鬼にして、可愛い新妻の風邪が悪化しないように今日はユキを家の中に閉じ込めておこうと決める。
どんな呪文で家に縛り付けようか、と考えていると妻が溜息をつきながら顔を上げた。
『はあぁジジイが来る』
「了解です」
私たちは慣れた手つきで杖を振り、テーブルの上の食事を避難させる。
聞こえてくる平和を乱す爆発音。
「レダクトッ」
『呪術分解!』
「プロテゴ」
吹き飛ばされたドアが私たちの前を通過していく。
鼻歌交じりでズカズカと我が新居に入ってきたのは既に見飽きた人物。
「おはよーユキ、パパじゃ『火遁・火炎砲』プロテゴッ。いきなり何をするんじゃ馬鹿娘がッ」
『それはこっちのセリフだバカンドア!』
「ぬおおお父親に向かってなんたる口の利き方じゃ。許さぬ!エクスパルソッ」
『呪術分解!からの乱れ打ち』
穴のあく天井
床に突き刺さる手裏剣
「……プロテゴ ホリビリス」
二人の争いに巻き込まれないように盾の呪文を唱え、コーヒーを啜る。
私の妻、ユキは強くて可愛い人なのです。