第5章番外編
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双子の企み
三大魔法学校対抗試合にエントリーしたいウィーズリー家の双子はユキとシリウスに変化の術を習い、見事その術を修得することが出来た。結果として年齢線によりゴブレッドに名前を入れることが出来なかった2人だが悪戯の幅は広がった。
「相棒、良い悪戯を思いついたか?」
「誰から悪戯しようか迷うところだね」
「「我々の最初の餌食になるのは誰か!」」
引っ掛けるなら大物を狙え。フレッドとジョージは無謀にも陰険贔屓の魔法薬学教授を狙うことにした。もちろん彼らが変装するのはユキの姿。
初めはフレッド。ユキの姿に変身して魔法薬学教室を目指す。
「慎重にな、兄弟」
「面白い話を持って帰ってくるさ」
トントントンと魔法薬学教室の扉を叩けば自動的に扉は開く。フレッドは廊下の角に立っているジョージにパチリとウインクをして教室へと入って行った。
「こんにちは、セブルス」
「何の用だ?」
目を逸らさずに大鍋をかき混ぜているセブルスの横に並んだフレッドは緊張していた。グリフィンドールを目の敵にしているセブルスにこんなに接近したことはない。そしてフレッドは意外なことに気が付いた。
むむむ。スネイプなのに案外顔が良い。
長い睫毛に男らしい鷲鼻、知的な印象を持たせる薄い唇。普段の陰険根暗の印象を覆されて戸惑ってしまう。
「用は何かね」
「ただ一緒にいたいだけよ。ふふっ」
きゃぴっとフレッドがそう言うと思いがけないほど吃驚した顔が向けられる。
フレッドはニンマリ顔を隠しきれなかった。
プイっと大鍋に顔を戻したセブルスの顔色は不健康な青白さからピンクがかった。ユキを意識しているのは明らかでフレッドはセブルスがユキを好きだという噂は本当だったのだと思う。
ジョージ!危険を犯しただけの収穫はあったぞ!
生徒には見せない恋する男の顔をもっと知りたいフレッドは更なる一手を仕掛けることに決めた。そっと手を伸ばしてフレッドが握ったのはセブルスのローブ。愛らしく微笑んで見せればこちらを向いたセブルスはポカンと口を開けて固まっている。
「あなたのローブに包まれたいな」
「頭を打ったか?それとも戯言薬を飲んだのかね?」
「もうっ。私の頭は正常運転よ」
「では何の意図を持ってこのようなことをしている」
「セブルスとスキンシップしたいだけ」
血色の好いセブルスは照れを隠すようにズイっとすり鉢をフレッドに押し付けた。
「暇なら手伝ってくれ」
スネイプのくせに可愛いな!
フレッドは笑いを噛み殺しながらすり鉢を受け取った。陰険贔屓魔法薬学教授にも少年のようなうぶな心が残っていたらしい。
フレッドの悪戯心は更に膨らんでくる。
すり鉢で蜘蛛をすり潰しながらあれこれ面白そうな質問を考えたフレッドは呼吸を落ち着けて口を開く。
「セブルスは……私のこと好き?」
「見ていて飽きない」
「どのあたりが?」
「ベラドンナの葉、根、茎、花を分けてくれ」
照れているのだろうか?
もう少し様子を見て見よう。
ユキのことが好きならスネイプの愛の言葉を聞けるかもしれない。そんなチャンスを逃したくない!フレッドは大人しくベラドンナを分けていく。
そして小一時間後。
「終わったか?」
「うん」
「ご苦労」
「頑張った私に甘い言葉をかけて」
「これが終わったらな」
ドンと机の上に置かれたのは箱いっぱいのドラゴンの骨。
「粉末にしてくれ。君の腕力なら直ぐに終わるであろう。頼んでもいいか?」
「え、これ全部!?」
驚かれたことに驚いているセブルスを見てフレッドは口を噤む。ユキ先生っていつもこんなにこき使われているのか!?
しかし、ここで逃げ出しては身バレするかもしれない。
「わ、分かったわ」
フレッドは渋々引き受けることに。
そして2時間後、腕を痛くしながらフレッドは机でレポートの添削をしているセブルスのもとへ作業が終わったと報告に行った。ねぎらいの言葉と共に愛を囁いたりするのだろうかと期待していたフレッドは自分の甘さに気づくことになる。
「次はドラゴンの睾丸を塩で揉んで皮袋に入れる作業だ」
「はあ!?まだ働かせる気?!しかもドラゴンの睾丸ですって!?あれくっっっっっっさいのよ!?好きな女性にさせる作業じゃなくない!?」
「礼は弾む。君の望むものを用意しよう」
「……な、なんでも?」
「あぁ」
「物じゃなくて、その……言葉でもいい?」
「今日の君は本当に戯言薬を飲んだようなことを言う。だが、いいだろう」
「約束よ?」
生徒に見せたことのない微笑を向けられたフレッドは胸をトゥンクと鳴らしながらドラゴンの睾丸に塩を揉みこむ作業に入る。
くっっっっっっっっさ!!!
おええええと吐きそうになりながら作業をして1時間。途中、教室を抜けて戻ってきたセブルスが連れてきたのはユキとセブルスに首根っこを掴まれているジョージ。
「あ、あ、あああああ!!」
フレッドの大絶叫が教室に響き渡る。いつからか知らないがフレッドがユキに変身していたことはセブルスにバレていたのだ。
『フレッド!私に化けて何をしようとしていたわけ?』
「別に何も、ですよ。ただ自分の変化が上手く出来ているか試していただけです。ユキ先生だって授業でいつも完璧を目指しなさいって仰られるでしょう?」
『ううむ。言っているわね』
「納得してどうする。このような真似、我輩は許しませんぞ」
『でも、熱心な学生を罰するだなんて私には出来ないわ。それにセブだってフレッドと気づきながらこき使っていたでしょう?今回はこれで手打ちとしましょうよ』
「君は生徒に甘すぎる」
『フレッド、それにジョージも次に悪戯をしたら罰則ですからね』
優しいユキによってこの時は難を逃れた双子であったが……彼らは悪戯に関しては向上心の塊だ。
「前はどこがバレる原因だったのだろうな?」
「観察したところ、ユキ先生はスネイプをセブと愛称で呼んでいるようだ」
「なるほど!ジョージ、次は君の番だ。覚悟はいいか?」
「もちろんさ!」
再トライ!
今度はジョージの挑戦。名付けて“行き倒れ作戦”が決行された。
セブルスの歩いている先にいたのは廊下で倒れているユキの姿。
「ユキ」
セブルスは慌ててユキに駆け寄り、彼女の身を起こした。ボロボロの忍び装束は血が滲んでいて顔には青あざ。汗をかいていてぐったりとしている。
「セブ……」
「何をしてこうなった?」
「鍛錬」
「そうではない。呪文は?何の術だ?」
「呪文の類ではないわ。普通の傷として処置できる……けど、自室につく前に力尽きちゃって」
「ここからだと我輩の部屋の方が近いな。連れて行く」
ジョージは浮遊感に心臓を跳ねさせた。
スネイプのお姫様抱っこ!
陰険根暗のイメージが強いセブルスが力強く自分を抱き上げて颯爽と歩いて行く様子にジョージは不覚にも甘くときめいた。
いやいや、相手はスネイプだぞ?
自分に幻滅しているジョージが連れていかれたのはセブルスの自室。奥のベッドルームまで連れていかれてベッドに下ろされたジョージは知られざる教師の部屋の奥深くまで入りこめたとガッツポーズ。
「どれだけ心配しようとも行動を改めようとしない君には落胆しかない」
「怪我をしない鍛錬なんか生温いでしょう?」
ユキ先生、ごめんなさい!
ジョージは悪戯っぽいセブルスにウインクを向けながらぐいっと上の服を脱ぎ去った。紫色のブラジャー姿のユキを目の前にセブルスは固まってしまう。想い人のあられもない姿に頭の中で理性が崩れる音がする。
それでも治療が目的だとハッと我に返り、セブルスはベッドに横になるようにユキに促した。
ジョージは悪戯の為に自分を犠牲にして体中に傷を作っていた。呪文で傷を治したセブルスはハナハッカ入りの塗り薬をユキに手渡す。
「あとは自分でするのだな」
「背中は塗ってくれるでしょう?」
「……いいだろう」
セブルスがこんなに優しいと生徒の誰が知っているだろうか。ジョージはフレッドに、それから皆に自分の冒険を話したいとウズウズしている。
「怪我を治した礼があってもいいと思うが」
「もちろんよ。何でもするわ」
「前にフレッド・ウィーズリーがドラゴンの睾丸を塩漬けしたのを覚えているか?」
「えぇ……」
「あれの次の作業を頼みたい。次の工程は睾丸を輪切りにして天日干しする作業だ」
「え、え、うげっ、あれくっっっっっっさいのよ!?好きな女性にさせる作業じゃなくない!?」
「君は何でもやると言った。頼むぞ、ウィー……ユキ」
「うぐ!?」
「助っ人を連れてくることを許そう」
影分身があれば背中に自分で薬を塗ることが出来る。そのことでセブルスはジョージの変身を見破ったのだ。
鼻の曲がるような罰則を受けた後に1人50点ずつの減点。しかし、ウィーズリーの双子はこんなことではめげたりしない。ユキに変化の術禁止令を出されようともこっそり変化して悪戯を仕掛けることに精を出す。
楽しい楽しい悪戯の日々。
「「ユキ先生!」」
「執事のスネイプ教授と」
「王子様のスネイプ教授」
「「どちらがお好みですか??」」
『ぶははっ。禁止令を出したはずよ。でも、どっちも似合ってる!ねえ、ねえ、何か台詞言ってよ。お帰りなさいお嬢様、とか。お手をどうぞ姫君とか……あー、急にお腹が痛くなってしまった』
黒いオーラを放つセブルス・スネイプからの減点100点。
3人は仲良く、干乾びたドラゴンの睾丸を粉末にする作業をしたのだった。