第1章番外編
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僕の先生~Ver.ドラコ
―――皆さんと授業でお会いできるのを楽しみにしています
授業開始から2日目、クラップとゴイルと共に忍術学教室へと向かう途中、壇上で微笑んでいたあいつの事を思い出して顔を顰める。
入学式の日に僕たちの寮監、スネイプ教授にピンク色のローブを着せて馬鹿にした、どこの馬の骨とも分からない奴の授業を受けないといけないなんてマグル生まれの教師の授業を受けるのと同じくらい最悪だ。
「ドラコ、俺トイレ行きたい」
「あ、俺も。ちょっと待ってて」
雪野の授業なんてボイコットしてやりたい、と話そうとした僕は口を閉じる。
僕が友人のトイレ待ちなんて恥ずかしい真似できると思うか?
「僕は先に行っている」
「「ええーー!」」
どうやって教室に辿りつけばいいんだ。と情けないことをクラッブとゴイルが言っているが気にしない。
昨日だってあいつらがノロノロ歩くせいで授業に遅刻しかけたんだ。グリフィンドールの馬鹿どもじゃあるまいし、遅刻しかけて廊下を汗を流しながら走るようなカッコ悪い真似はしたくない。
たしか忍術学教室は東棟の方だったよな……
クラップとゴイルを置いて教室へと向かっていた時、
「あ!上じゃない!どうして上に行くんだよ!」
突然、階段が揺れて手すりに掴まる。動いていく階段は僕が行きたい方向とはまったく違う場所へと移動していく。
どうして階段なんか動くようにしたんだよ!
ギギギと止まった階段は動く気配がない。
このままじゃ遅刻しちゃうじゃないか。あの女に頭なんか下げたくない。
僕は取り敢えず繋がっている廊下へと行ってみることにした。
「ここは……5階か?」
甲冑が両端に並んでいる薄暗い廊下を歩いてみるが昨日はこなかった階だから全然分からない。
教室は一階だからとにかく下に行かないと。やっぱりさっきの階段が動き出すまで待っていたほうがよさそうだ。
クルリ
「うわあぁ!」
「ヘッヘヘーーーンっ」
振り向いたらピーブス。
奴は僕の驚いた顔を見てニヤニヤと笑っている。こいつは父上から聞いていた
「こんなところで何をしているんだぁーい?」
「五月蝿いぞ。お前には関係ないだろう」
気にしたら奴の思うツボだぞ。ニヤニヤ笑いを気にしないようにしながらピーブスの横を通り過ぎようとするが、奴はふわっと降りてきて、僕の行く先を塞いだ。
「どけよ」
「そーんな怖い顔しちゃダメだよ。せっかく迷子の一年生を助けてあげようと思ったのに~」
「え?本当にか?」
ぐるりと空中で回転するピーブスを見る。
なんだ。意外といい奴じゃないか。父上が卒業してから何年も経っているから性格が変わったのかもしれない。
「忍術学教室へ行く道を教えてくれないか?」
「忍術学ってことはユキのクラスか……いいぞ。こっちだ!」
一瞬考えた素振りを見せたような気がしたけど気のせいか?
しかもピーブスが向かっているのは僕が来た道とは違う。
「なぁピーブス。僕はこっちから来たんだぞ」
「んん?そっち?でも、そっちから行ったら遅刻しちゃうよ。近道を行かなきゃ君は遅刻のジゴク行き~」
遅刻の地獄
雪野の授業に遅れて叱られる自分を想像する。皆の前であいつに叱られるなんてそれこそ地獄だ。
「わかった。ついていくよ。案内してくれ」
「よーしよし。おいでスリザリンの1年坊主君!」
シューと滑るように廊下を進むピーブスに走ってついていく。廊下の角を曲がるとさらに薄暗い埃っぽい廊下にでた。
タペストリーの裂け目から階段を登って……下に行くのに上に向かっているじゃないか!
階段を上がりきった僕は汚い廊下の埃を吸ってむせ返りながら口を開く。
「ゴホッゴホッ、ピーブス!本当にこっちで合っているのか!?」
「こっちってどっちだい?」
「え?」
目を見開く僕を見て最初にあった時と同じような憎々しいニヤニヤ笑いを浮かべているピーブス。
「騙したな!」
「へへーーん。騙されるほうが悪いんだよーん」
ピーブスの言葉に顔が青ざめていく。
「あっ、ま、待て!待てったら!」
ニタッと笑って上昇していくピーブスを掴もうとするもポルターガイストを掴めるはずはなく、奴は僕の手をすり抜けて天井へと消えていってしまった。
「そ、そんな……」
急に静かになった廊下。
辺りを見回した僕は心臓がキュッと縮んだのを感じた。ここはどこだ?
ピーブスについてくるのに必死だったから道を覚えていない。
<ホグワーツにはいまだに誰にも知られていない廊下や部屋がたくさん存在する>
入学前に父上が話していたことを思い出してゾッとする。
ここが、その誰にも知られていない廊下かもしれない。もし僕が来た道を戻れなかったら?誰かこの廊下を見つけて僕を探しに来てくれるのか?
誰にも見つけられず、このまま暗い廊下を彷徨うことになったら……
怖い……どうしよう……
「父上……母上!」
嫌だ!
こんなところで死にたくない!
「誰か!誰か助けて!!」
スネイプ教授、ダンブルドア校長でもいい
助けてくれるなら誰だっていい
「助けてくれ!誰か、誰か……ウ、ウゥ」
シンと物音一つ聞こえない廊下。
父上の言うとおりダームストラングに行けばよかった。
埃の積もった廊下の床に落ちる僕の涙だけがポタポタと音をたてる。
『いた!Mr.ドラコ・マルフォイだね』
「!?」
突然聞こえた声に弾かれたように振り向くと階段の下から僕を見上げている忍術学教師の姿が目に入る。
「雪野、せんしぇい」
『怖い思いをしたね』
あんなに授業を受けたくなかった先生なのに飛ぶように階段を上がってきた雪野先生に抱きついてしまった。
『もう大丈夫』
落ち着いた声に緊張が緩んで涙が止まらなくなってしまう。
僕の背中に回された手は母上とは違う、不器用な手つき。
でも、母上に抱きしめられるのと同じような安心感に包まれていく。
『涙を拭いて。あんまり泣くと目が腫れてしまうよ』
「どうして、ここが?」
雪野先生から受け取ったハンカチで目を拭きながら尋ねる。
『廊下でピーブスが迷子のスリザリンがどーのこーのと歌っていて、もしかしたらと思って締め上げたの』
「え?締め上げた?」
物騒な言葉に顔を上げるが雪野先生は『えぇ』と笑顔で肯定。僕の聞き間違いじゃなかったらしい。
この先生見た目の感じと大分違う性格なのかも……
「ポルターガイストを締め上げるってどうやって……」
『ポルターガイストはゴーストと違うから上手くやれば体を拘束するくらいはできるのよ。こんなふうに、ね?』
そう言って廊下の先に突き出した雪野先生の片手からドラゴンが吹く炎と同じような勢いで火が飛び出してきた。
周りの空気がぼうっと熱くなり、急に明るくなった視界に目を細める。
『炎の中に魔力を混ぜて、炎の網を作って閉じ込めてしまうの。簡易結界ってやつね』
「凄い……」
『ありがとう』
「あの、これも忍術ですよね?」
ふわりと笑ってコクリと頷く雪野先生を見て僕の胸が高鳴っていく。
杖を使わないでこんな事が出来るなんて!
「僕も、その……今みたいなの出来るようになりますか?」
『もちろんだよ』
ドキドキしながら聞くとあっさりと肯定の答えが返ってきた。
『さあ、教室に行こうか』
「ハイ!」
さっと差し出された雪野先生の手を握る。
『Mr.ドラコ・マルフォイはお父様にソックリだね』
「父上をご存知なのですか?」
『以前ダイアゴン横丁であなたに似た男性を見かけたのよ』
「あ!もしかして、スネイプ教授と夏休みにダイアゴン横丁に行かれましたか?」
『うん。そう、その時!』
そう言って笑う雪野先生。
父上がスネイプ教授と仲良く歩いていた女性を見たって言っていたけど、あれって雪野先生の事だったんだ。という事は、スネイプ教授と雪野先生は仲が悪いってわけじゃないんだ。
スネイプ教授と親しくしている先生なら悪い人のはずがない。
父上に雪野先生の事を手紙で知らせたらビックリされるだろうな。父上、いったいどこの国の人だろうって気にしていたから……
心が軽くなっていく
紫色の着物に黒い髪
イギリスの魔女じゃない、どこから来たか分からない不思議な先生。
純血かどうかも分からない。
でも、この人の事をもっと知りたい。話してみたい。
「あ、あの!」
『なあに?』
「ユキ先生って呼んでもいいですか?」
花のような笑顔
僕は『もちろん』と微笑むユキ先生が好きになっていた。