第6章番外編
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目隠しニューイヤー
聖マンゴ魔法疾患傷害の一室。大晦日の夜。セブルス・スネイプは寝ながらうなされていた。
クリスマスにヴォルデモートによって瀕死に追い込まれたセブルスは癒者の治療によって大分回復していたものの安静が必要なはずなのだが……
重い……
『ブ……セ……はよ……』
重い……重い、重い……
『もうす……起……ったら……』
重い
『……ら……かしら……』
「重い!!!―――っ!?」
セブルスは夢から醒めて一気に覚醒した。
ブンッ
敵襲かと思い咄嗟に枕元に置いてあった杖に手を伸ばして振ったのだが、それは振り切られる前にガシッと強い力で止められる。真っ暗闇の中、自分の腹に跨っている何か、いや、誰か。セブルスは一瞬にして自分の状況を悟ったのだった。
「……ユキか?」
『うん!おはよう』
「我輩の上から今すぐ下りたまえ」
『ごめん。重かったよね』
ブンッ
『ぎゃああ!?!?』
ユキが悲鳴を上げたのは何故か。それはセブルスの呪文によって足首が掴まれたようにして空中に吊るされたからである。セブルスが学生の頃に開発したレビコーパスはしっかりと対象物を浮遊させた。
『は、放して!』
「その間抜けな姿を拝んでから―――っ!?」
ナイトテーブルに置いてあったランプをつけたセブルスはギョッとした。目の前で浮遊しているユキの姿は想像よりも凄かった。一生懸命にスカートが捲れないように手で押さえているのだが、白い太腿を剥き出しにしている。そもそも、スカートの丈が短いようだ。そのあられもない姿は彼女だとはいえ動揺してしまう。
無言で杖を振ったセブルスは足を引っ込めてベッドにユキを落下させた。上手く受け身を取ったユキはポンポンとベッドでバウンドしてからきまり悪そうにセブルスに笑いかける。
『えっと……サプラーイズ!驚いた?』
「非常に」
『愛しの彼女の訪問を歓迎してくれないの?』
「その服は何だ?」
『え?』
質問とは違う答えがセブルスから返ってきたユキは寸の間キョトンとしたが、直ぐににっこりとしてベッドの上に立ち上がった。
『素敵でしょ?』
そう言うユキの姿はスパンコールの金色の膝上ワンピース。派手なその衣装の胸から裾にかけて横文字ででかでかと書かれているのはハッピーニューイヤーの文字で、魔法で七色に変色している。
趣味が悪い……。
眉を顰めたセブルスだが、ピカピカ光るその文字と趣味の悪い服をニコニコ笑顔で着ている恋人を見ていると笑いが込み上げてきてしまう。いつの間にか口元に微笑が浮かんできてしまっていたセブルスはハッと気づいて表情を引き締め直した。
「面会時間は終わっている。忍び込んできたのか?」
『だって今日は大晦日よ?新年は好きな人と過ごしたいもの。セブもそう思わない?』
「……部屋の外に出るぞ。他の患者を起こしてしまう」
さっきから私の質問をはぐらかしてばかりと頬を膨らませるユキだが大人しくセブルスについて部屋を出て行った。シンとした廊下は誰もおらず、廊下は暗くその闇はどこまでも続くように見える。
入院患者用のパジャマの上にローブを着たセブルスは暗い廊下をランタンの灯りを頼りに無言で歩いて行った。
『どこへ行くの?』
「知らん」
『目的もなく歩いていたってわけ?変な人ね。行き先はこっちよ』
ユキはセブルスのランタンを奪ってニヤリとした。
『カフェテリアに行きましょう』
「見回りに見つかるぞ」
『ふふ。お金を払っておきました』
「なんて奴だ」
『年越しを2人きりで迎えられるよ。袖の下くらい渡すわ。でも、セブ……機嫌が悪い?迷惑だった?』
セブルスは上から下までユキを見た。
「いや」
カフェテリアは昼間の賑やかさはなくガランとしていた。壁には大きな窓がついていて魔法で作られた街並みが映っている。
『こっちよ』
ユキがセブルスを案内したテーブルにはちょっとした食事とシャンパンボトルがのっていた。ワンホールのケーキには火のついていない花火が突き刺さっている。
『準備していたの。景色を見ながらロマンティックに年越しよ。素敵だと思わない?んっ……』
ユキの最後の言葉はセブルスのキスによって消えていった。
『セブ、機嫌が悪そうに見えたけど私の勘違いだった?』
「どこからその服を着て来た?」
『さっきから私の質問に答えてくれないのね』
「大事なことだ」
『ホグワーツから』
「このバカが」
はぁと溜息をついて肩を落とすセブルスを見てユキは首を傾げる。
『はしたなかった?』
「それもあるが露出の多すぎる服で人前に出て欲しくない」
『セブったらムラムラしちゃってる?』
「そうなったら責任を取ってくれるのかね?」
『夜は選ぶと言ったのは何処のどなただったかしら』
「我輩の理性を試すのか?」
『そうね。試してみましょうか』
色っぽく眉を上げたセブルスはユキを腕の中に閉じ込めて耳元で「どのように?」と囁いた。あぁ、ゾクゾクする。とユキはセブルスの甘くビロードのようなバリトンの声に酔う。
『年越し前だけど正月遊びをしましょう。椅子に座って、セブ』
椅子に座ったセブルスは自分の目の前に立つユキの顔を見て心臓を跳ねさせた。挑戦的な艶っぽさを持つその顔。性的な興奮を煽られてセブルスの鼓動は自然と早くなる。
喉を鳴らして唾を飲み込んだセブルスを見てユキは目を細めて口角を上げた。
『福笑いをします。本当は顔の輪郭を描いた紙に目隠しをした人が顔のパーツを並べていくんだけど……少し変えてもいいでしょう』
ユキは胸の谷間から出来るだけ色っぽく見えるように隠していたリボンを取り出した。
「ほう。随分と準備してくれたようだ」
『いけない大人の遊びをしましょう』
クスクスと笑いながらユキはセブルスに目隠しをする。視界が暗くなったと思ったらズシリと膝に重みを感じ、ユキが自分の上に乗ったことが分かった。重くもなく、軽くもないその心地よい重みと優しい石鹸の香り。セブルスは思い切り抱きしめて押し倒したい気持ちを堪えて言われた通りに動こうと椅子の背にもたれる。
『さてさて、私の目はどこにあるでしょうか?』
「難問だな」
『ちょっと!』
ユキは笑い声を上げた。
セブルスがグイっとお尻を掴んだからだ。
『不正解よ』
「慎重に探そう」
ユキの腰に添わされているセブルスの両手はゆっくりと体の肉を押しながら上へと上がってくる。猫のように背中を反らせるユキはそのまま天井を向いて熱い息を吐きだし、セブルスの首に腕を回し、知らずとズっと秘所をセブルスの秘所へと押し当てた。
セブルスの両手がむき出しのユキの肩をスルリと撫でてユキはその官能的な手つきにブルリと震える。首筋を通った手は顎へと到達し、頬を包み込む。
『信じている』
「信じる?」
『目を潰したりしないでしょう?』
「するわけがなかろう」
『知ってる。でもちょっと怖い』
「怖いならユキが触ればいい。交代だ」
セブルスはユキの両手を手探りで探し、自分の顔へと導いた。ほっそりとした両手がセブルスの顔を包み込むのと同時に口づけが落とされる。ぷちゅっと唇を押し付けるようなユキのキスは色気がなく下手くそで。セブルスは笑ってしまいながらユキの後頭部に右手を添えた。
じゅ、ぷちゅ、と厭らしくセブルスはわざと音を出してキスを始めた。ユキの体に震えが駆け抜け、肌が粟立った。ぞくりと背中を駆け上がっていく快感に息を大きく吸い込む。
『ん、ふぁ……ん』
滑らかな舌は絡み合い、ユキを欲するセブルスは舌に吸い付いて快感を与える。鼻にかかる甘い声に興奮は増していき、ユキははしたないと思いつつも体をくねらせながらセブルスに擦り寄った。
『セブ、ん、好き、好き』
「愛している」
『もっと』
自らリボンを外したセブルスの目に映ったのは眼球に薄っすらと涙の膜を張ったユキの顔で、キスでトロトロに蕩け切った恍惚とした顔はセブルスの情欲をそそる。
何か、ここ、気持ちいい。
ユキは勝手に動いてしまう腰に眉を寄せた。こうするともっと気持ち良くなれる気がする。それは本能からくる動きで、ユキが疑似セックスのような動きをし出したことでセブルスは息を荒くしてキスを貪るような荒々しいものへと変えていった。
初めての夜はセブルスの誕生日に旅行先で。そう決めていた。
苦しいほどの性欲が上がって来て、2人の体にグルグルと熱がこもってくる。
このまま出来ればどれほど気持ちが良いだろうか。
セブルスはそう思ったがユキを自分の方に引き寄せ抱きしめ、その熱を静めた。
「自分が酷なことをしていると知っているか?」
『私が同じ気持ちだと知っている?』
微笑み合った2人はチュッと軽くキスをして抱きしめ合い、離れていった。
ユキは甘い余韻にフラフラとしながら空いている椅子に腰かける。懐中時計を見ればいつの間にかあと5分で年が明ける時間になっていた。
ケーキにたてられた花火からはシューシューと金色の火花が上がり、その周辺を明るく照らす。その光はユキとセブルスの心にキラキラとした輝きを送り込んだ。
3―――2―――1―――
『ハッピーニューイヤー!』
パーンと魔法の景色が映し出されている窓に花火が打ちあがる。
グラスに満たされるシャンパンからは小さな泡が楽し気に上っていく。
『セブ、愛しているって言って?』
「心から愛している」
『私も。ずっと一緒にいてね』
ニューイヤーキスは爽やかなシャンパンの味がした。