第6章番外編
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新聞部 part1
「ユキ先生、おはようございます」
職員テーブルに1番乗りで朝食を取っているとグリフィンドール寮4年生のコリン・クリービーがやってきた。
『おはよう』
茶色がかった鼠色の髪をしたコリンは純真な瞳をしながら私に1枚の紙を差し出した。
ホグワーツ学校新聞と書かれたその紙は校内新聞でカエルの聖歌隊のコンサートの様子が写真付きで記事にされていた。
「僕が校内新聞を作っているのをご存じでしたか?」
『もちろん。いつも読んでいるわ』
「ありがとうございます。実は、お願いがあるんです。次回の新聞はホグワーツ生のリクエストに応えてユキ先生とスネイプ教授の交際について記事にしたいと思っています。なので、取材させて下さい」
『……え?』
私はキョトンとして固まった。
今なんて?
『ええと、私とスネイプ教授の……』
「交際について、です」
コリンはハキハキと言った。
聞き間違いじゃなかったっ。純真無垢な目と笑顔で何を言っておるのだこの子は!
私は驚きを通り越して笑ってしまいながら首を横に振る。
『ダメよ』
「どうしてもですか?」
『ダメです』
「ホグワーツ生のリクエストですよ?」
『忍は個人情報を公開しません』
「そこをなんとか」
『ダメ』
残念そうに肩を落としてしまっているのを見て申し訳なさが込み上げてくるが、忍のプライバシーは伏せるもの――――
「スネイプ教授の日常を知りたいと思いませんか?」
『!?』
私の思考が止まった。
『今なんと?』
「ユキ先生の知らないスネイプ教授の顔を見たいと思いませんか?」
コリンが唆られる提案をしてくる。だって、2人でいる時と教鞭をとっている時のセブとでは違った顔を見せているに違いない。心を大きく揺さぶられていると、「撮った写真は差し上げます」と更なる提案をしてきた。
生徒に向かって豊富な知識で指導している姿、マントを翻して廊下を颯爽と歩く姿が写真となっていつも手元に置けるならば、自分の(セブの)プライバシーを差し出す価値はある。
「ダメですか?」
あぁ、それにしてもどうしてこの子は一点の曇りもない瞳をしているのだろう。言っていること結構ギリギリ、いやアウトだろう……なのに、彼は純粋にみんなが喜ぶ記事を書きたいと思っているようだった。そんな彼の熱心さに教師として応えるべき!
『いいわ』
私は決然と言った。
「ありがとうございますっ」
『ただし、私の欲しい写真も撮ってちょうだい』
「先生の撮って欲しい写真ですか?」
『うん。リストアップして渡すわね』
「はい」
『ついでに私と過ごすセブの日常も写真におさめるとしましょう』
「わあ!その写真、僕にも頂けますか?スネイプ教授の知られざる日常!大スクープだ」
『お互いバレないように頑張りましょうね』
さっそくコリン・クリービーはセブルスに捕まっていた。フラッシュと同時にカメラからボフンと煙まで出しているから見つからないはずがない。
セブルスは階段の数段上からコリンを見下ろしていた。
「何のつもりかね?」
これからこの不届き者のグリフィンドール生を締めにかかります、更には大量減点いたしますという顔のセブルスは純真な瞳を獲物を狩る目で見つめている。
そんなセブルスに睨まれれば10人中10人震えあがるだろう。現にコリンも陰険贔屓恐怖の魔法薬学教授を恐れていたが、今の彼の心はホグワーツ生の期待に応えて最高の学校新聞を作ると言う使命感で燃えている。足を踏ん張ってセブルスを見上げた。
「実はスネイプ教授を盗撮しておりました!」
正直すぎる。
なんて純真なんだコリン・クリービー。
セブルスは
「何故そのような馬鹿なことをする。答えろ。但し、自分がグリフィンドール生だという答えは結構だが」
ねっとりとチクチク言うセブルスを前にコリンは考えた。決してこの盗撮にユキが関わっていると言うなと無責任な忍術学教師に言われているのだ。大好きなユキを裏切れないと心に誓いながらコリンは口を開く。
「ホグワーツ新聞を作るのにスネイプ教授の日常を追っていました」
「新聞?」
「僕が毎月作っているホグワーツ新聞をご存じないですか?」
コリンの作るホグワーツ新聞は各寮の掲示板や玄関ホールの掲示板などに貼られていた。セブルスはそういえばそういうものもあったと思い出し、「あぁ」と呟いた。
「その新聞は人のプライバシーをないがしろにして作られていると」
随分な記者根性だと鼻で笑うセブルスにコリンはニッコリ笑った。
「はい!大スクープはそうして得られるのです!」
「いや、待て待て」
セブルスは吃驚して言葉を崩した。
お前は本当にグリフィンドールか?とセブルスは目を剥いた。百歩譲って自分の寮である狡猾なるスリザリン生なら言いそうな言葉だが……。セブルスは悪気のない天真爛漫な顔を前に怒るのも忘れて戸惑うばかりだ。
「階段を下りている姿を写真に収めたいので下りてきて頂けますか?」
そう言いながら階段を急ぎ足で下りて行ったコリンは踊り場で片膝をついてカメラを構えている。その周りを通りかかった生徒が見ていてザワザワと囁き合っていた。
「やめろ。我輩は撮影されることを許可していない。カメラを下ろし、上に上がってこい」
ボフンっ
シャッターが切られ、フラッシュがたかれて白煙が上がった。
撮ったが勝ちである。
「ありがとうございます!」
「っグリフィンドール50点―――
ボフンっ
どこからかたかれたフラッシュ。
セブルスはハッとして手摺から身を乗り出すも玄関ホールに集まっている生徒の中にカメラを持った者はいなかった。
「コリン・クリービー!共犯者は誰だっ」
「おりません」
ギロッとコリンを睨みつけたセブルスは玄関ホールに視線を戻した。
「そこにいる者たち、先ほど写真を撮った者が誰か言え。言った者には50点与える」
4色の寮が集まっていた玄関ロビーだったが、そこにいる生徒全員は首を傾げたり、横に振ったりする者ばかり。
『コリン!』
そこへ涼やかなソプラノの声が玄関ロビーにやってくる。事の成り行きを恐々と見守っていた生徒たちはほっとした。明るく柔和な忍術学教師が来たならもう大丈夫だ。
『ダンブルドア校長がお戻りよ。話があったのでしょう?』
「教えて下さりありがとうございます」
『直ぐに行くといいわ』
コリンは心配そうにチラとセブルスを見た。
「後ほどフィルムを我輩のところまで持ってこい。良いな?」
「わ、わかりました」
射殺すほど強い眼光にコリンは震えあがりながら頷いて、校長室へと走って行った。
数時間後、コリンは魔法薬学の教室でカメラを構えていた。どんでん返しがあったのである。校内新聞を作りたいから授業中の写真撮影を許可してほしいと頼んだコリンの願いはダンブルドアによって即諾されたのだ。ちなみに、全授業の取材と撮影も許可されている。
コリンはホグワーツの最高権力者であるダンブルドアの許しを得て撮影に臨んでいる。
しかも校長は「教師の日常」と題して普段の様子も撮影していいとコリンに言ったのだ。よって先程撮った写真は没収を免れた。
セブルスが思い切り校長室のある方向を睨みつけた後、大きく舌打ちしたので教室の温度は氷点下まで下がった。
「本日は頭冴え薬を調合する。貴重な薬材を無駄にするな。始めろ」
ボフンっ
今撮られた写真はメデューサ、バジリスク顔負けの眼光だっただろう。
生徒たちは青くなりながら調合に必要な薬材を取りに行ったのだった。
シャワーの音に紛れて音が鳴る
月が傾きかける夜のしじまに明るい光が放たれる
暖炉の前でのくつろぎの時間に白煙が―――
「何をしている」
『あ、バレたか』
セブルスはこちらにカメラを向けているユキを睨みつけた。
「良からぬことを企んでいるな?」
『ただ大好きなあなたを写真に収めて手元に置いておきたいだけよ』
「コリン・クリービー」
『急にどうしたの?』
「白々しいぞ。結託しておるだろう?」
『何の事かしら』
「アクシオ」
『大事なカメラを取られてなるものですか!って私ごと!?』
ユキの体は飛んで行ってドテっとセブルスの前に落下した。
『物扱いはいつものこととして、床に放り投げるなんてあんまりよ!んっ!!』
セブルスはユキの顎を持ってぐっと上に上げさせた。意地の悪い目はこれからの尋問を楽しもうとしている。ユキはその空気を感じ取って思わず身を引いたのだが、ガっと肩を掴まれた。
「やましいことがおありのようだ」
『お、おありじゃないです』
手の中のカメラはセブルスに没収される。
『お願い!フィルムだけは容赦して』
「悪行を認めたわけだな。どんな罪がこの中に入っているのか」
『私の宝物なの。返して』
ユキは縋るようにえいっとソファーに座るセブルスの左足に抱きついたのだが、媚びるような自分の行為に恥ずかしくなって頬を紅潮させながら直ぐに離れた。
「今のは効いたぞ、ユキ」
『さっきのは忘れて。もうやらないわ』
そもそもセブルスの足元に縋り付くように座っていることにも恥ずかしくなったユキは立ち上がろうとしたのだが、体はセブルスの脚の両方で捕まえられた。
『何するのよ!』
「君は尋問を受ける容疑者だ。従順にすべきではないかね?」
『うぐ』
「媚びて許しを請えば減刑してやらんこともない」
『っ!何も悪いことはしていないわ』
「では、フィルムを取り出し燃やそう」
『やめて、やめて』
ユキは慌てた。貴重なお宝写真を灰にしたくない。だが、媚びて許しを請うなど辱めを受けるのも抵抗があった。ユキは動けないままブクーッと頬を膨らませる。
セブルスはそんな様子を見て満足そうに笑いながらフィルム入れに手をかけた。ユキの目は大きく開かれ、セブルスは色っぽく片眉をあげる。
「3―――2―――1――」
『待って!』
セブルスの腕に飛びついたユキは覚悟を決めた。
ゆったりとソファーに座り直したセブルスは2回ユキの頭を撫でる。
「やれ」
『サディスト』
悔しそうに唇を噛みながらユキは膝立ちになってセブルスの左腿に縋りつくように絡みついた。
『お願い……カメラを無事に返して』
「コリン・クリービーと結託しているのか?」
『していません』
「平気で嘘をつくな―――っ」
セブルスは息を飲みこんだ。ユキが太腿を撫でながらキスしだしたからだ。セブルスはもう少しこの状況を楽しんでやろうと目を細めた。
「どこでその厭らしい媚び方を学んできた?」
『房中術書』
「今度その本を見せろ」
『後悔するわよ。シリウスは後悔していたから』
「2人きりでいる時にあの男の名前を出すとはいい度胸ですな」
げっと自分の失敗を感じたユキは慌てて次の行動に出ることにした。
だけど、こんな破廉恥な行動を……!
だが、ここまできてはヤケである。ユキは不機嫌な様子のセブルスの脚を閉じた。
「何をするつもりかね?」
『お、落とすといけないからカメラは床に下ろして』
「くく、期待しているぞ」
セブルスから受け取ったカメラは床に置かれ、ユキは意を決してセブルスの腰を跨ごうとしたのだが、気が付いた。着物のままじゃ足が開けない!
『待って。適当に変化するわ』
「ダメだ」
『セブ?』
「その恰好以外認めん」
『でも』
セブルスは着物の裾を捲った。
「自分でだ」
ユキは赤い顔でセブルスを睨んだのだが、セブルスの視線が床に置いてあるカメラに向いたのを見て、追い詰められた。
真っ赤になりながら両手で着物の裾を捲り、生足を出してソファーへと片膝ずつ上って太腿の上に腰を下ろす。そしてセブルスの首に腕を回して、首筋に顔を埋めた。あああ恥ずかしい。
『減刑を要求します』
「可愛げのない言い方だな」
『ここまでやったんだから許してよ。苛め過ぎよ』
「プライベートを勝手に撮影した罪は重い」
『私しか見ないから』
ユキが首筋にチュッと吸い付いたのでセブルスは笑った。すっかり可愛くて色っぽい恋人を許してしまっている。
「……分かった。君を信用する」
『やった!』
顔を上げてセブルスを見つめるユキの顔は花が咲いたような笑顔。自分の写真1枚でこの笑顔が見られるなら安いものだ。とセブルスは思う。
「このままするか?」
『今日はダメな日』
「では別の機会に」
『だけど』
ユキの両手はセブルスの胸を通って行き、下へ下へ。
滑らかに交わる舌。
ユキは再び床に膝をついた。
<魔法薬学教授の日常>
各寮の掲示板や玄関ロビーの掲示板、その他各所には人が群がっていた。今月号の新聞はホグワーツ生希望のユキ達の恋愛からセブルス・スネイプ特集になっていた。
ユキはコリンに頼んで新聞を1枚もらっており、自室でうっとりと読んでいた。そこへバッターンと大きな音を立てて扉を開けてやってきたのは主役のセブルス。
「ユキ、貴様ーーーー!!」
怒りの形相のセブルスはユキの手元に新聞があるのを見て杖を取り出した。
『あらあら。校内あちこちに貼られているっていうのに私の手元の1枚を消しても仕方がないでしょう?』
「よくもこんな記事を!」
『インタビューに誠実に答えただけよ』
しれっとしながらユキは新聞に目を戻した。
1番大きい写真は授業写真で危険な行為をしていないか厳しく生徒たちをみながら教室を歩く姿。100点満点中1000点のかっこよさ。
―――普段は厳しいスリザリン寮監スネイプ教授の意外な一面をご紹介!
写真にあったのは可愛い4体の動くメレンゲと指で遊んでいる写真、森の中でウサギにニンジンを与えている写真が掲載されていた。
『最高に可愛い』
「よくも―――っ」
『大丈夫。人に見せたくない写真は私の手元にあるわ』
「何を撮った!まさか暖炉の前にいた時以外にも撮影していたとは!」
『生徒には早すぎる写真を撮りました』
「返せッ」
『お断りよ』
ユキは歌うように言ってベッドルームへ入って行く。ズンズンと後をついて行くセブルスは部屋の中をクルクルと踊るユキが新聞を壁に張り付けたのを見て杖に手を伸ばしたが、やめた。この新聞を剝がしたところで新しいものに変わるだけだ。
『媚びただけあったわ』
ニッコリ笑いながら機嫌良くベッドに腰かけるユキをどうしてくれようか。セブルスは脱いだマントを放り投げたのだった。
┈┈┈┈┈後書き┈┈┈┈┈┈┈
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