第3章番外編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
小さな動物たちの日常 part.1
「まーたあなた達ですか!」
ある教員の一室でバリンと窓のガラスが割れるような声が響いていた。
「ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、ユキ ・雪野 ・プリンス!あなた達は既に4年生なのですよ!」
マクゴナガルはそこまで言ってハアァと大きな溜め息を吐きながら手を額に持っていった。
下級生を脱したこの悪戯仕掛人とスリザリンの白蛇ことユキ達の悪戯はおさまるどころか学年を追うにつれて派手になるばかり。
「どうやったらあなた達のばか騒ぎを止められるのかしら?」
「それは無理ですよ、マクゴナガル教授。だって悪戯仕掛人から悪戯を取り上げたら僕たちの存在意義がなくなってしまいますから」
ニヤリとジェームズが口角を上げる。
そんなジェームズにマクゴナガルはおかんむりだ。
「ジェームズ・ポッター!あなたは追加で罰を与えますからね!」
「そ、そんな~」
眉をキッと上げたマクゴナガルは追加の罰をジェームズに言い渡した。
「あなた達がもう2度と今日と同じ理由でこの部屋に来ないよう祈っています」
「それは無理な話かもな」
「だな」
『だって悪戯は私たちの生き甲斐だもの』
「ポッター!ブラック!ユキ !」
「「「(しまった!聞こえてた!)し、失礼しますっ」」」
4人は追加の罰を与えられる前に大慌てで部屋を辞したのだった。
「ふー危なかった。これ以上の罰はごめんだよ」
『ほんとにね。4階の甲冑を全部磨くだけでも大変なのにそれ以上の罰を与えられたら大変』
「ジェームズも2人も余計なことを言うからだよ」
リーマスが眉を下げながら苦笑する。
「しっかし、直立不動ってのは疲れるな」
シリウスが腕を回すとゴキバキと音が鳴る。
『あ、みんな飴食べる?疲れたときには糖分が一番!』
ユキはローブをまさぐってピンク色の飴を取り出し皆に差し出した。
「おっ気がきくじゃねぇか」
「ちょうど甘いものが欲しかったところなんだ」
「ありがとう、ユキ」
喜ぶシリウス、ジェームズ、リーマスは知らない。
ユキ が内心でほくそ笑んでいたことを。
ぽんと口に飴をそれぞれ放り込む3人。
コロコロと舌の上で飴を転がしていた3人は異変に気づく。
「「「うん!?」」」
3人同時にぺっと飴を吐き出したが遅かった。
3人はユキの悪戯に引っ掛かった後。
「うわーなんだこれ!」
ジェームズが悲鳴をあげる。
3人の舌はみるみるうちに長く伸びていく。
『アハハ!悪戯大成功っ。油断したな、君たち!』
ケラケラと笑うユキの前にいるジェームズたち3人は舌が顎下までびよーんと伸びていた。
「ユキ~~~待ふぇ~~~!」
怒った3人がユキを追いかけてくる。
逃げるユキの腹筋は攣りそうになっていた。
だって3人は舌をべろんべろん揺らしながら追いかけてくるのだから。
『や、やめて~~可笑しすぎてお腹痛くて倒れそう』
ゲラゲラ笑いながらユキが階段を駆け下りていた時だった。
グリフィンドール寮の入口から赤毛の少女が姿を現した。
『リリー!』
「ユキ?」
『助けて!ぷはっ、くくくっ』
「助けてって?何?え?何で笑っているの――――きゃああああぁぁぁ!!」
笑いながら助けを求めてくるユキを訝しげに見ていたリリーが視線をユキの後ろに向け、悲鳴を上げる。
それはそうだろう。舌をべろーんと伸ばし、走る衝撃で舌をべろんべろんと揺らしながら駆け下りてくる3人の姿を見たのだから。
「ユキったらまた悪戯したのね!」
『そうなの。見事に引っかかってくれたの』
ユキはさっとリリーの後ろに隠れながらニンマリと笑う。
「まったく。あなたたちは相変わらずね」
そんな会話をしているうちにリリーの前に3人が到着した。
「あぁ!リリーにこんふぁ姿を見られふぇしまった!もうお嫁に行けふぁいっ」
ジャームズが顔を赤くしてしゃがみこむ。
「ユキふぉこっちに渡してもらふぉう」
シリウスがリリーに向けて言う。
「これの治し方をおしふぇてくれよ、ユキ」
リーマスが眉を下げる。
「ユキ、もう楽しんだでしょ。治し方教えてあげなさいよ」
リリーの背から顔を出したユキは再びぷぷぷっと笑いながら
『治し方はありませーん。3時間過ぎたら元に戻ります』
と楽しげに言った。
「「「えーーーー3時間!?」」」
長すぎる!と3人が絶叫していると
「ユキ、お前こんなところにいたのか」
声が聞こえてくる。
ユキが振り向くと、そこには階段を上がってくるセブルスがいた。
「セブ」
「やあ、リリー」
『見て、セブ!私がかけた悪戯、大成功なの!』
ジャーンと効果音をつけてユキはジェームズたちを指し示す。
セブルスから返ってきた反応は……
「いつもと変わらないんじゃないか?」
と淡々とした答え。
セブルスは3人の長くなった舌を見て堪えられなくなりくつくつと笑う。
「「なんだとシュニベルフ!!」」
真っ赤になって怒るジェームズとシリウスは舌足らずで言葉が上手く言えない。
それも可笑しくて、セブルスは侮辱されても鼻で笑うだけだった。
そんな様子のセブルスにジェームズとシリウスは怒り心頭。2人同時に杖を取り出した。
「け、喧嘩はダメよ!」
リリーが叫ぶ。
「今のお前たちがまともに呪文を唱えられると思っているのか?」
そう言いながらもセブルスも杖を抜く。
慌てるのはユキだ。
悪戯は楽しんでも魔法の掛け合いでの喧嘩は望んでいない。
『ダメダメダメ!一時退却!リリー私たちを守ってね!』
ユキはリリーを盾にしながらセブルスの手を引き、勢いよく階段を下りて行ったのだった。
***
夕食が終わったくつろぎの時間。
ユキ、セブルス、そして2つ学年下のレギュラスは暖かな暖炉の前でくつろいでいた。
『あ、そうだ。レギュラス、飴食べる?』
何気ない風を装ってユキは隣に座っていた後輩に飴を差し出すが、
「結構です」
セブルスが注意を促す前にズバッと断りを入れた。
『え~何で~。せっかくあげるって言っているのに』
「ユキ先輩から物をもらうなんて絶対やっちゃいけないことですよ。何かあるに決まっています」
冷静な後輩はそう言って紅茶をすする。
『じゃあセブは?』
「食べる訳ないだろう。それはポッターたちに使った悪戯用品だろ?」
『ちぇっ。バレたか』
面白くなさそうにぐでーっとソファーの背もたれにもたれ掛かるユキ。
「そんなことよりクィディッチですよ」
レギュラスは間近に迫っているレイブンクロー戦を話題に上げる。
「今年はレイブンクローに良いシーカーとチェイサーが入ったらしいですよ」
『ふうん。そうなんだ。でも、負けないよ』
ユキの瞳が輝く。
『私がブラッジャーを打ってぶっ飛ばしてやるんだから!』
そして、その日はやってくる――――――
クィリナス・クィレルは空を見上げて恍惚とした表情を浮かべていた。
彼の視線の先にはユキの姿がある。
髪を靡かせ、縦横無尽に空中を飛び、レギュラスを守る。
あぁ、なんて美しい……
周りの生徒が歓声を上げる中、クィリナスは一人、感嘆の溜息を吐いていた。
クィリナスは親にねだって買ってもらった万眼鏡を目に押し付け、ユキの姿を万眼鏡に記録し続ける。
もちろん記録されたものは何度も何度も見返される予定だ。
レイブンクローのチェイサーは上手かった。
どんどんと点を入れられてしまう。
しかし、スリザリンも負けてはいない。
試合はデットヒートが繰り広げられていた。
そして、レギュラスとレイブンクローのシーカーがほぼ同時にスニッチを見つける。
「行きます!ユキ先輩!」
『任せといて!』
体のスレスレを通り過ぎるブラッジャー。
「ユキ先輩っ危ない―――――あぁっ!」
クィリナスを含め観客から悲鳴が上がる。
ブラッジャー2つを同時にレギュラスに打ち込んだレイブンクローのビーターたち。
ユキは1つは打ち返し、そしてもう1つは自分の体に当ててレギュラスを守った。
その状況を分かっていたレギュラスだったが振り返らない。何があっても前へ進めとユキに言われているからだ。
ユキも体勢を立て直し、レギュラスに追いつく。
『当ったれーーー!』
今度はユキがレイブンクローのシーカーにブラッジャーを打ち込む。
箒の穂にぶつかるブラッジャー。
レイブンクローシーカーが吹き飛ばされるのとほぼ同時。レギュラスはスニッチを手にしていた。
大爆発する歓声。
力強い握手を交わすユキとレギュラス
並んで試合を観戦していたセブルスとリリーから笑顔が弾け
悪戯仕掛け人たちはそれぞれ次は自分と勝負だ!というように声を上げ
クィリナスは恍惚とした表情で万眼鏡のシャッターを切り続ける
彼らはそれぞれに
ホグワーツでの青春を謳歌していた