第2章番外編
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バル
ある日の夏休みの夕食の時間。
ユキはポンと頭に浮かんだ名案に1人ニコリと笑った。
『スネイプ教授、今夜予定ありますか?』
「どうした?」
『良かったら飲みに行きません?』
セブルスはフッと
「すっかり酒の味を覚えたようだな」
と笑った。
「この後、少し片付けたいことがあるから9時からでもいいか?」
『もちろん』
ユキは嬉しそうに頷いて食事を再開したのだった。
そして夜9時。
2人は正門に向かって歩いていた。
「店は決めているか?」
『いいえ。どこか適当にと……誘っておいてすみません……ホグズミード村に行きます?』
「三本の箒もいいが、今夜はダイアゴン横丁まで足を伸ばしてみないかね?当てがある」
『ありがとうございます!』
ユキは姿現しが出来ない。セブルスの腕に自分の腕を絡ませる。
バシンッ
2人はダイアゴン横丁に到着した。
今は夏休み。
みんなバカンスなどに出掛けているせいか金曜の夜であったが人で溢れかえっているわけではなかった。
しかし、ある程度の人通りはある。
「はぐれては困る。このまま掴まっていろ」
『エスコートしてくれるんですね!嬉しいです』
「そういう事をいちいち口に出すな」
『わわっ』
セブルスは恥ずかしさのせいで勢い良く歩きだし、ユキは焦ってついていく。
暫く大通りを歩いた2人。角を曲がって裏通りに入り歩いていく。
セブルスは一軒の店の前で足を止めた。
「ここだ」
ユキが上を見上げると"ルーナ バル"と看板に書かれている。
『バル?なんだか異国の雰囲気が漂いますね』
「バルは英語でバーだ。しかし、朝はコーヒーも出す。夜はタパスという小皿料理をつまみながら酒が飲める場所だ。イギリスのカフェとパブを合わせたようなものだな」
入るぞ。とセブルスに促されてユキは店へと入る。
店はそこそこの賑わいを見せていた。
「いらっしゃい。2名様だね。あそこの席へ」
2人が通されたのは一番奥の席だった。
『良いところに座れましたね』
「そうだな」
2人でそれぞれメニュー表を見る。ズラリと並ぶ異国の料理の名前。
「スペインはフランス、イタリアに次ぐワインの産出国だ。ワインを頼もうと思うがいいか?」
『はい!』
飲み物の他に数皿のタパスもたのんだ。
パン・コン・トテマというパンの上にトマトとニンニクをすりつぶし、オリーブオイルをかけたシンプルなひと品。アセイトゥーナというオリーブの実の漬物。などなど。
「アルボンディガスとワインです」
初めに運ばれてきたのは肉団子をトマトソースで煮込んだ一品。
早速それぞれの皿に取り分ける。
パクリ。瞬間にユキの顔が綻ぶ。
『美味しい!』
熱々の肉団子がユキを笑顔にする。
「お前はいつも美味しそうに物を食べるな」
『だって美味しいんだもの』
「そうか」
頬に手を当てて幸せそうな顔をするユキを見て、セブルスはフッと笑みを零す。
『あ、乾杯がまだでしたね』
ユキはグラスを宙に掲げた。
「何に乾杯するのだ?」
『そうねですね……今という幸せな時間に!』
「今を大切に、か。いいだろう」
2人は微笑み合い、チンとグラスを合わせた。
『フルーティーな味ね。とても飲みやすいわ』
セブルスが選んだワインは甘いものが好きなユキが飲みやすい甘口のフルーティーなワインだった。
『渋みもちょうどいい』
「気に入ったのなら良かった」
小さく口元に笑みを浮かべ、セブルスもグラスを傾ける。
おいしい料理、おいしいワイン。
無意識のうちにユキのワインを飲むスピードが上がっていく。
『おかわり』
「飲み過ぎではないかね?」
『まだまだいけますよ」
そう言ってユキはグラスを上げてみせる。
2人は魔法薬学実験についてのような真面目な話から日刊預言者新聞に載っていた軽い話題の記事の他、お酒の力も借りて饒舌(喋っていたのは殆どユキだが)に色々な話題を話した。
喋って乾いた喉をワインで潤すユキ。
『あら、なくらっちゃっら。スネイプ教授~もう一本たのみまみょう』
「もうダメだ。ろれつが回らなくなってきているぞ」
セブルスはダダを捏ねるユキに首を振る。
「もう12時を回る。ホグワーツに戻ろう」
『いやれす。あと少しいたい』
「いくら明日が休日とはいえこれ以上はダメだ。来い」
セブルスはさっと会計を済ませてユキの腕を掴み、椅子から立ち上がらせる。
ユキは立ち上がらされる反動のままセブルスにしなだれかかった。
セブルスの胸がドクっと音を立てる。
ユキはセブルスの想い人だ。
そんな彼女に甘えられて嫌なはずがない。
「付き添い姿現しで帰る。しっかり掴まっていろよ」
『は~い』
「~~~っ!」
ぎゅっと両手でセブルスの左腕にしがみつくユキ。
セブルスは赤面していた。
お酒のせいではない。
ユキの胸が手に当たっているからであった。
折しも今日のユキの服装は魔女の服。
和服と違って胸の柔らかさがダイジェストに腕に伝わってくる。
まったく……少しは身の危険を感じろ……
バシンッ
煩悩を追い払いながらセブルスはユキを連れて姿現し。
『わわわ』
酔っぱらいのユキは姿現し独特の体が捻られるような感覚にホグズミードに足を着いた瞬間に体勢を崩す。
前のめりに倒れそうになるユキはやってくる痛みを想像し目を瞑ったが、痛みはやってこなかった。
代わりに柔らかい感触と、薬草の香り。
「大丈夫かね?」
『は、はい。ありがとうございます』
「顔が赤いぞ。酔いすぎか?それとも……別の理由が?」
ニヤリと口の端を上げるセブルスに慌てるのはユキだ。
『えっと、その……」
ユキはセブルスにすっぽりと抱きしめられていた。
意識するなという方が無理なものだ。
ユキは顔を真っ赤にさせてセブルスの腕の中で身じろぐ。
『は、離して……』
「もう少しこのままでいさせろ」
『スネイプ教授!?酔っているでしょ!?』
「お前ほどではない」
『私は酔ってなんかいないわ』
「どうだかな」
セブルスはすっと両手をユキの肩から手に向かって動かし、ユキの手を握り締めながら、ユキと一歩距離をとった。
寄りかかるところを失ったユキはふにゃりとその場に座り込む。
『あれれ……?』
ふっとセブルスはユキを見て笑う。
「自分が飲める以上に飲み、姿現しまでしたのだ。体が限界を迎えたのですな」
自分よりも自分のことを分かっているセブルスにユキは面白くないと頬を膨らませる。
「手を貸そう」
『じ、自分で立てるわよ』
そう言うが、ユキは『おっとっと』と途中でへたりこんでしまう。
地面にアヒル座りで座るユキは悔しそうに口を尖らせる。
どうしよう……
これでは帰れないとユキが思っていると浮遊感。
『えっ。ちょ、あの!』
セブルスがユキを横抱きしたのだ。
カーっと赤くなっていくユキの頬。
「口を閉じていたまえ。舌を噛みたくなければな」
意地悪な言い方にユキは更に顔を赤くする。
『お、降りる』
「やめておけ。また座り込むのがオチだ。大人しくしていたまえ」
反論したいがセブルスの言う通り。
ユキは大人しくセブルスの腕に抱かれる。
「……」
酔っているのはユキだけではなかった。
セブルスも同じ。
普段は考えもつかないような事を思いつく。
こちらを見ていないユキの上でニヤリと小さく口角を上げるセブルス。
『きゃあっ!!!』
ユキから悲鳴が上がり、ユキはセブルスの首に勢いよく手を回す。
セブルスがパッと一瞬だけユキを抱いていた手を離したからだ。
『な、何するんですか!』
「部屋につく前に寝られては困るのでな。これで目が覚めたであろう」
『覚めましたけど酷いじゃないですか!心臓飛び出るかと思いましたよ!』
ポカポカとセブルスの胸を叩くユキ。
セブルスは自分の悪戯が成功してクツクツと喉の奥で笑う。
「落とされないようにしっかり掴まっていたまえ」
今度は優しく情熱的な瞳で。
ユキはそんなセブルスを見て胸の鼓動を早くさせる。
『はい……』
小さな声で言い、頷いて、ユキはおずおずとセブルスの首に手を回す。
ホグワーツの敷地に入り、セブルスはユキの部屋の前までユキを送った。
ユキの部屋は吹きさらしの階段を上った場所にある。
セブルスはそっとユキの自室前の階段の踊り場にユキを下ろす。
『今日は楽しかったです。ありがとうございます』
「あぁ。我輩もだ」
『最後は迷惑かけちゃってごめんなさい』
「あのくらいなら問題ない」
2人は顔を見合わせ合い、ニコリと口元に笑みを作った。
『それじゃあ、これで』
「あぁ……。雪野……」
『何でしょう?』
ユキの瞳が大きく開かれる。
パッと頬に手を持っていくユキ。
彼女の左頬がじわりと熱を持つ。
「イギリス流の別れの挨拶だ」
そう言って妖艶に笑い、セブルスは階段を下りていく。
階段を下り切り、角を曲がって見えなくなったセブルスの姿。
『もう……これは反則だよ』
ユキはお酒のせいではなく、彼の別れのキスによって力なくその場に座り込んだのだった。
┈┈┈┈┈後書き┈┈┈┈┈┈┈
アンケート第1位≪教授セブルス≫甘設定