第1章 優しき蝙蝠
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20.お見舞いへ
『七面鳥とローストビーフどちらがいいでしょうか?』
「知らんわい」
『まだ怒ってるんですか?』
ユキは迷った挙句七面鳥を包んでもらい不機嫌オーラ全開の大魔法使いのところへ行く。
大通りの中心で腕を組みイライラとした様子で歯ぎしりをしているダンブルドアは注目の的だ。
『アイスクリーム買ってあげますから機嫌直してください』
「儂の機嫌はアイスなんぞで直らん」
『我が儘言わないでください。そんな顔で会いに行けませんよ』
「五月蝿い。五月蝿い!どうして儂のことをパパと呼んでくれんのじゃ。パパと呼ぶまで病院にはいかん。ここを動かん。パパと呼ぶのじゃーーーーー!」
通りを歩いていた人から小さな悲鳴があがった。それはそうだろう、あの誉れ高き大魔法使いアルバス・ダンブルドアが地面に座り込み両手両足を幼児のようにバタバタさせて駄々をこねだしたのだ。
人通りの多い通りが騒然とした空気に包まれている。
『立ってください。病院閉まっちゃいますよ』
「ユキがパパと呼んでくれないなら病院なんか行かん」
『そうですか。では一人で行きます』
「あっ。本当に置いていく気か、親不孝者!不良娘!儂がいないと困るくせにっ」
遂に地面に寝転がり駄々をこね始めた。ちょっとした地獄絵図だ。
ダンブルドアとユキを中心にギャラリーの輪が出来ている。
カメラのフラッシュまで光った。来年度のホグワーツ入学者数が減ったらダンブルドアのせいだろう。
『分かりました』
「おぉ。やっと呼ぶ気になったか」
『違います。多重影分身の術』
ポンッポンッと音を立てて煙の中から影分身五体が現れた。
ギャラリーから歓声があがった。
『自分で歩かないなら担いで連れて行きます』
「六対一とは卑怯な。くらえ!アグアメンティ」
バケツの水をひっくり返したような大量の水が辺り一面に降り注ぐ。
ユキ本体は手に持っている花とケーキ、七面鳥を守るためにガス灯の上に避難して無事。しかし、見ていた人達はずぶ濡れだ。
五体の影分身はダンブルドアの両手両足を掴み、持ち運ぶ準備を完了させていた。
『強制連行します』
「もう、もう、もう、親子の縁を切ってやる。バカ娘、絶縁じゃあぁぁぁぁぁ」
ダイアゴン横丁に大魔法使いの叫び声が響き渡った。
***
白い床に白い壁の廊下を歩き、階段を上る。いくつもの部屋の前を通り、いくつものドアを開き、いくつもの角を曲がる。
そしてまた階段を上り、廊下を歩く。
聖マンゴ魔法疾患傷害病院
ユキは病院内にあるヤヌス・シッキー病棟の中にいる。騒ぐのをやめたダンブルドアに七面鳥とケーキを受付に預けていくように指示されたユキは花束を持ってダンブルドアの後に続く。
この隔離病棟の構造は非常に複雑だ。
迷路のような道順と扉に施された施錠呪文を解除しながら奥へ、奥へ。
案内なしでは辿り着けない、帰れない。
「クィレルじゃが」
先程のふざけた感じではないダンブルドアが口を開く。
「癒者が言うには精神状態がかなり不安定になっておるそうじゃ。儂も何度か会ったが我を忘れたように叫ぶか、何を言っても反応せぬような状態じゃった。君が知っているクィレルではないと思いなさい」
ユキは目を見て無言で頷く。
しばらく進みようやく扉の前で立ち止まった。ダンブルドアは施されていた施錠呪文を解除し、ユキが部屋に入って直ぐ施錠呪文をかけた。
「調子はどうかの?」
「……また、来たのですか」
苛立ちのこもった小さな呟き声。
こちらに背を向け、窓辺に立ち偽物の景色がうつしだされている窓を眺めている。
窓に置かれた手が嫌な摩擦音をたてた。
入院患者の水色のパジャマの上に袖を通さずに羽織られたガウン姿。
頭にはターバンもないしヴォルデモートもいない。
整えられていない濃い栗色の髪がうなじを隠すほどの長さで生えている。
「今日こそアズカバンへ連れて行ってくれるのですか?」
「いいや。アズカバンには行かせん」
ガンッとクィレルが窓に拳を打ち付ける。魔法の窓は割れることはない。
背中からでも伝わってくる激しい怒り。
「それなら、私を、私をどうするつもりなんです!?」
ガンガンとクィレルは拳で窓を叩きながら怒り叫ぶ。
「落ち着くのじゃ」
「落ち着け?あなたは酷い人だ、ダンブルドア。生きる目的のない私をこんな所に閉じ込めて。死なせてもくれない! アズカバンに引き渡さないなら闇の魔法使いを誘い出す囮にしたらいい。それか新しい魔法の実験台にでもしたらどうだ?ただただ生かし続けられるだけ。私は何のために―――」
振り返ったクィレルの表情が怒りから、ゆっくりと驚愕の表情へと変わっていく。
灰色がかった青い目が揺れ虚ろだった瞳に困惑の色が浮かぶ。
「……なぜ……君がここに……」
『お見舞いに来ました』
青白い顔、黒い隈に縁どられた目、翳りのある顔。
雰囲気も全く違う。
たった十数日でここまで変わってしまうものなのか。
私はダンブルドア校長の横を通り過ぎクィレル教授の横まで歩み寄った。
小刻みに震える体。
クィレル教授は俯き、指を窓に這わせたまま壁際へと後ずさった。
差し出された花束は取られない。
「あなたの術で私は死ぬはずだった」
『あの時はそうするしかなかった』
「でも、あなたは私を助けた」
『そうです』
「何故?」
怒りで震える声。
「なぜ……私を生かした?」
憎しみに歪んだ顔。
「何故かと聞いているんだッ」
部屋中に響く怒鳴り声。
『分からない』
「分からない……だと……?」
床に落ちた花束。
ユキは唸るような叫び声とともに壁に体を思い切り叩きつけられた。
両手で掴まれた顔。
白い顔に爪が食いこんでいく。
ユキはなされるがままクィレルを見つめ続けた。
「お前は、お前は、何の意図もなく私を生かしたのか!?世間から存在を抹消され、生きる目的も与えられず、死ぬこともできない。この苦しみがお前には分かるか?」
『……すまない』
「謝るくらいなら、あのまま死なせればよかったのだ。このまま、ここで年老いていけと?どうしてくれるんだ。何故だ、何故だ、何故生かしたんだ!!!」
荒らいだ声
何も捉えていない瞳
狂気に歪んだ顔
「どうしてお前は!」
『自分でも分からない。何故、あの時助けたのか……勝手に、体が動いた』
困惑した表情と当惑気味の声で放たれた言葉。
『気づいたらあなたを助けるために術を使っていた。何故だろう。あの時、強くそうしたいと思った』
張り詰めた静寂。
ユキは眉間に皺を寄せ首を傾げてクィレルを見た。
『Mr.クィレル?』
「本当に……あなたって、人は……」
ユキの頬がクィレルの涙で濡れる。
力強く抱きしめられた体。
『具合悪いの?』
「ユキ……ユキ……」
『泣かないで』
ユキがぎこちない動作で腕を回し抱きしめると、クィレルの体が一瞬だけビクリと跳ねた。
あやすように背中を叩く。
ユキの首筋にクィレルの涙が伝っていく。
『ごめんなさい。もっと早く来るべきでした』
「謝らないで」
『でも』
「そんな顔しないで下さい」
見慣れた穏やかな微笑み。
目からは狂気の色が消えていた。
「あなたに会えてよかった」
『私もですよ。Mr.クィレルに出会えて良かった。あなたと過ごす時間は楽しいものでした』
「そう思ってくれていたんですか?本当に?」
『はい』
純粋にニッコリと笑うユキを見て、クィリナスは涙を溢しながら微笑んだのだった。
「ユキを連れてきてよかったわい」
すっかり存在を忘れていたよ。
顔に出ていたらしくMr.クィレルがクスクスと笑っている。
ダンブルドア校長は拗ねた顔を作っているが優しい微笑みを浮かべ青い瞳をキラキラさせて椅子に腰掛けた。
「さて、クィレル。落ち着いたようだし君の今後について話し合うとしよう」
『Mr.クィレルには休む時間が必要なのでは?』
「大丈夫です。私は大きな罪を犯しました。償えるとは思っていませんが……どんなことでもする覚悟です」
学生時代、おどおどした態度や神経質な様子をからかわれていたクィレル。
誰かに認められたいという思いから闇の魔術に関心を高めていった。
真面目で探究心旺盛、そして純粋な心の持ち主であった。
その純粋さをヴォルデモートにつけ込まれ、破滅への道を進んでいってしまった。
「ふむ。どんな事でも、のう」
ダンブルドアは髭を撫でながらクィレルの様子を見る。
一年間の修行から戻ったクィレルがヴォルデモートと共に帰ってきたのは知っていた。
知っていながら、過酷な運命を辿るであろうハリーを鍛えるため見て見ぬふりをした。
否、ハリーを鍛えるためにクィレルを利用した。
目的のために救える命を見捨てた。
「では、ユキに従いなさい」
『何故?』
この一年間、ダンブルドアが最も注意して動向を見守ってきた素性の知れぬ異界の魔女。
彼女は生徒を思い、無意識とはいえスネイプの心の痛みを和らげ、ヴォルデモートからハリーを守り、そしてクィレルの命を救った。
「クィレルの命を救ったのは君じゃ。儂がクィレルの処遇を決めることは出来ない」
「私からもお願いします」
ユキは非常に困惑した顔でダンブルドアを見た。魔法界に住んでたった一年の自分にどうしろというのだろう。
次にクィレルを見る。
この一年、魔法界にも教師の職にも慣れない自分をいつも優しく気遣ってくれた。一緒に笑い、夜通し研究をして絆を深め、ときには喧嘩、相談にものってもらった。
そして、あの日
みぞの鏡の話を持ち出して自分にヴォルデモート側につけと言ったクィレル。
ヴォルデモート側につく気はさらさらなかったが、クィレルの言葉に心を乱した。
ユキは大きく深呼吸してからクィレルを真っ直ぐ見つめる。
『Mr.クィレルは大事な友達。年の近い友人ができて私は嬉しかった。ホグワーツでMr.クィレルと過ごした時間は楽しかったです。覚えていますか?あなたが私に幸せになってもらいたい、と言ってくれたこと』
「えぇ」
『私も同じです。具体的にどうしたらいいか分からないけど。それが私の願いです」
「ユキ……」
『病院を退院したらやりたい事を見つけて、もう一度新しく人生をやり直して欲しいです。どんな形であれ、あなたに幸せになって欲しいと思っていま、ひゃおっ!?』
突然クィレルは跪き優しく、恭しくユキの手にキスをした。
『ちょっと。何してるんですか!?』
「あなたが私のことを思ってくれていたことが嬉しいのです」
『そうですか。えーと、取り敢えず手を離して頂けます?』
「離しません」
『ヒィッ!』
もう一度口付けされた。
恥ずかしさで顔が赤くなると同時にユキの頭の中で警報が鳴り響く。
『そうだ。あとは校長に協力してもらってMr.クィレルがしたいようにすればいい。今日は帰ります』
「帰しませんよ」
ニッコリ笑ったクィレルはしっかりとユキの手首を掴み離さない。
この人はこんな性格だったろうか。
「新しい人生でやりたい事は分かっています」
『……良かったです。お聞きしても?』
「えぇ。あなたにも関係あることですから」
『え?』
「私がしたいのは、ユキの傍で、ユキの役に立つことです。それが私の幸せです」
クィレルはユキの手を両手で包み込み立ち上がった。
笑顔が怖い。
『私には影分身もあるので手伝い不要です。間に合ってます。是非、自分のために時間を使ってください』
「酷いですね。私の幸せを願うと言ったのは嘘ですか?」
『嘘じゃないけど。でも、どうすれば……』
「簡単です。私をあなたの下僕にしなさい」
『し、下僕!?』
開いた口が塞がらない。
予想以上にぶっ飛んだ答えが飛び出した。
ユキの視界の端にダンブルドアが体をくの字に曲げお腹を抱えて笑っているのがうつった。
「私はユキの側に居られれば幸せなんです。ですから、ホグワーツを辞めて人里離れた場所で私と暮らしましょう」
『いや、いや、いや。無理だよ!』
クィレルが違った意味で怖い。
ダンブルドアは遂に床に伏して笑いだした。こっちも怖い。
『冷静になってよく考えてください。私がホグワーツ辞めたら二人とも無職ですよ?ご飯食べられませんよ?』
「フフ。私と暮らすことは受け入れてくれるようですね」
しまった。
墓穴を掘ったとユキは頭を抱える。
「ですが、お金のことは考えていませんでした。困りましたね」
自分を巻き込んだクィレルの早すぎる隠居計画を止めねばならない。救いを求めるようにダンブルドアを見る。
ようやく笑い終わったようだ。真面目な顔をしているので良い案が浮かんだのだろう。大魔法使いの権力とコネを使ってどうにかしてくれるはずだ。
「クィレルはユキのヒモになればいいのじゃ」
『火遁』
「う、うそじゃ、冗談じゃ。ユキちゃん、タイムタイムタイム!!!」
『火炎砲!』
「ぎゃああああっ」
ダンブルドアが焦げた髭を呪文で修復している対面ではヒモ呼ばわりされてショックを受けたらしいクィレルが眉間に皺を寄せていた。
ユキは勝手に助けた手前、金銭的にも安全面でも支援しようと思っていたのだが言うのをやめた。
『校長。Mr.クィレルの能力を生かせて、人前に出ない、危険な目にあわない仕事ありませんか?』
「そうじゃのう。危険な目にあわないというのは難しいかもしれんが儂の騎士団に入るのはどうじゃろう?」
「不死鳥の騎士団ですか!?」
クィレルが驚いた声を出した。
「しかし私などには騎士団に入る資格はありません」
「いや。ヴォルデモートが動き出した今、闇陣営の動きは活発になってくることじゃろう。我々も仲間を増やして力をつけていかねばならない。特に隠密に動ける者は貴重だ」
「死んだことになっている私には適した仕事、ですか」
「そういうことじゃ」
「ですが、例のあの人に従っていた私を簡単に信用していいのですか?」
「君はユキの下僕なのじゃろ?」
「はい」
『認めません』
「照れるでない。好かれておる証拠じゃ。ところで、ユキ。一つ質問してもいいかの?君は賢者の石を隠したあの部屋でみぞの鏡を見たじゃろ。その時、何が見えた?」
『ホグワーツ城の前に立つ先生達と生徒たちが見えました』
「そうなのですか!?」
『うん。Mr.クィレルも居ましたよ』
ダンブルドアの青い目がキラキラ光る。
「クィレル、これが君を信じる理由じゃ。改めて騎士団に入るかね?」
「……はい。彼女の幸せが私の幸せですから」
「フォッ、フォッ。熱いのぅ。よろしく頼むよ、クィリナス」
ユキは堅い握手を交わす二人を不思議な顔をして見つめた。
何がどうなっているのだろう。
「儂はユキも騎士団に入ってもらいたいと思っておるのじゃが、どうかな?」
『あの、不死鳥の騎士団とは?』
「おっと。すまんかった。不死鳥の騎士団とは儂が作ったヴォルデモート陣営に対抗するための組織じゃ。今の活動は情報収集や危険な死喰い人の監視に追跡や捕縛といったところかの」
『ごめんなさい。せっかくですが今回はお断りします。私はまだ新米教師です。ホグワーツの仕事に専念したいのです』
「そうか。残念じゃが、仕方がないの」
「すみません」
今言った理由も本当だ。しかし、ユキにはもう一つ入りたくない理由があった。
組織に入りたくない。命令され、忠誠を誓い、任務を行う。暗部時代のあの日々に戻るようで入りたくなかったのだ。
『Mr.クィレルは何時退院できるのでしょう?』
「ユキ。私はあなたの下僕です。クィリナスと呼んでください」
「この様子ならすぐにでも退院できると思うがの」
どうしてだろうか。
ユキは退院後のクィレルの身の危険より自分の身の危険を感じた。
「もしかして、私に頼みたいことがあるのですか?」
「初仕事じゃな、クィリナス」
クィレルが胸に手を当てて跪いた。
どこまで本気なのか分からないところも怖い。
「なんなりとお申し付けください」
『あ、ありがとう。じゃあ、こんな雑用お願いするのは申し訳ないのだけど、退院したら家探しを手伝って欲しくて』
「家探しですか?」
クィレルがキョトンとした顔をした。
『うん。荷物も増えてきたし、長期休暇に帰れる家を買おうと思っているんです。でも、魔法界の事よくわかっていないから、どう探したらいいか分からなくて。大きい買い物だし手伝ってもらえたら嬉しいのですがお願いできますか?』
「もちろんですよ」
『ありがとうございます』
「そうと決まれば早速退院じゃ!」
『本当に退院しちゃって大丈夫なの?』
「はい。私は一秒でも長くユキの側にいたいです」
クィリナス・クィレル退院。
ダンブルドアが偽の身分証明書を用意してくれていた。
クィレルが不死鳥の騎士団に入団することを見通していたのかもしれない、とユキは思う。
『校長先生、良い夏休みを』
「お世話になりました。これからもよろしくお願い致します」
「うむ。二人とも気をつけての」
ポリジュース薬(スネイプと作った改良版)でユキに変身したクィレルと適当に変化したユキは病院の入口でダンブルドアと分かれてダイアゴン横丁の不動産屋へと向かった。
結果、家はユキの一目惚れであっさり決まった。その日のうちに支払いも済ませ、すでに新しい家の中にいる。
『退院直後に連れ回してすみません。付き添い姿現しまでさせてしまって』
「大丈夫ですよ。素敵な家ですね」
見晴らしの良い緑豊かな丘の上に立つ可愛らしい木造の家。外壁は白く、屋根はペパーミントグリーン。
一階はリビングに台所。二階は小部屋がいくつか。地下の部屋は実験室にするつもりだ。
「明日にでもマグル避けの呪文を施しましょう」
『それから、結界もね』
「結界ですか?」
不思議そうにクィレルが首を傾げる。
『うん。Mr.クィレルは闇陣営だけでなく一般の魔法使いに見つかってもまずいもの。厳重にかけましょう』
「えっ!?私もこの家に住むのですか?」
『え!?ごめん。一緒に暮らすみたいなこと言ってたから勝手に思い違いしてたみたい。ごめんなさい。忘れて』
「いえ。まさか本当に一緒に暮らせると思っていなかったものですから。この家に置いて頂けたら凄く有難いです。でも、本当に私などが一緒に住んで良いのですか?」
『もちろん。私がホグワーツにいる間は空家になってしまうから人がいてくれた方が私も嬉しい。それに休暇中は一緒に遊べるから楽しいでしょ?』
「ユキ……ありがとうございます」
『こちらこそ。よろしくお願いします』
魔法による結界と忍術による結界。
強力な結界に守られた家で二人の奇妙な共同生活が始まった。
ちなみに引越し作業で忙しかったユキが日刊預言者新聞に載った“ダンブルドア隠し子発覚”の記事に気づいたのはかなり経ってからのことであった。
ユキがダンブルドアに殴り込みに行ったのは言うまでもない。