第7章 果敢な牡鹿と支える牝鹿
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4.ホラス・スラグホーン
私はグリモールド・プレイス12番地でシリウスとお茶をしていた。今からダンブーがやってきてハリーと共にスラグホーン教授に教職に戻って欲しいとお願いしに行くことになっている。
ポッター親子は和やかに談笑していた。だが、みんな寂しげだった。何故なら今日からハリーは隠れ穴に向かうことになっている。
何故親子一緒にいられないかというと、ポッター夫妻は14年の時を経て生き返った夫妻として世間の関心の的になっているから。
世間というのは闇の陣営を含めてだ。奴らはポッター夫妻を血眼で追っているとセブが情報をくれた。リスクは分散するべきというのがダンブーの考え。リリーたちはここに残ることになっている。
「どうしてもクリスマス休暇にここに帰ってきてはダメ?」
「ダメよ。ハリー。出来るだけ接触は避けた方がいいの」
リリーがハリーのくしゃくしゃの髪を整えた。
「シリウスやユキに手紙を託すから。ハリーもそうしてくれ」
「分かったよ……父さん」
肩を落とすハリーの背中をジェームズがトントンと叩く。
今まで離れ離れになっていた親子。生きて再会できたのに別れ別れにならねばならない事に胸を痛める。早く平和な時代が訪れて欲しい。そう思っていると玄関の錠が開く音がした。
廊下に顔を出せば入ってきたのはダンブー。水色のゆったりとしたローブを着て、私に気が付いてニコっと笑った。
「左腕がなくなったことをつい忘れてしまうのじゃ。トイレに行った時に失敗してしまったわい」
『そんな報告いりません。それより、好きなジャムを教えて頂いても?』
警戒が強まった今、本人かどうか確認した方が良い。
「ラズベリーじゃ。耳くそ味の百味ビーンズをパンに挟むのも好きじゃ」
カッと目を見開いてダンブーが言った。
『その狂った嗜好、ダンブーで間違いなさそうね』
「みんなは中かのう?」
私はダンブーと一緒に部屋の中に入った。みんなと挨拶をしたダンブーはハリーに向かって眉を下げる。
「親子を引き離すことになってすまんのう」
「いいんです。だって、もう同じ世界にいるもの。時が来ればずっと一緒にいられます」
「ダンブルドア校長先生、お急ぎでなければポトフを食べていきませんか?」
「あー……リリー……」
鍋を見たダンブーの顔が凍った。
「儂らは直ぐに出発せねばならんのじゃ」
「そうですか……ハリー」
リリーはハリーにハグをした。その目は濡れている。
「体に気を付けてね」
「母さんと父さんもね」
「悲しそうな顔をすることない。もしかしたら、直ぐに会えるかも知れないじゃないか」
「え?」
聞き捨てならない言葉に目を細める私にジェームズは悪戯っぽくパチリとウインクをした。見ればシリウスもニヤついている。何を考えているんだか。
「さて、行くとするかのう」
私、ハリー、ダンブーの3人は玄関を出て道路へと立った。
「ハリー、儂の右腕に掴まって欲しい。気づいておるじゃろうが儂の左腕はなくなってしまったのじゃ」
「姿現しですね。分かりました」
「ユキは……」
『腰に』
ダンブーの左側に回って腰に手を回すとダンブーはくすぐったそうに体を揺らした。
「ふぉっふぉっ。セブルスに嫉妬されそうじゃ」
『馬鹿やっていないで行って下さい』
バシン
姿現しでやってきた場所は寂れたどこかの村の小さな広場だった。広場の真ん中に古ぼけた戦争記念碑が立ち、ベンチがいくつか置かれている。
『ハリー、大丈夫?』
ふらふらとしたハリーに声をかけると、目をパシパシさせながら耳を擦った。姿現しの感覚には慣れが必要だ。
ダンブーはキビキビとした歩調で村の中を進んで行った。空っぽの旅籠や何軒かの家を通り過ぎる。近くの教会の時計を見ると、ほとんど真夜中だ。
「ところで、ハリー。君の傷跡は近頃痛むかな?」
「いいえ、校長先生。父さんと母さんが帰ってきて以来、なんだか憑き物が落ちたような気分です」
「なるほど。ヴォルデモート卿もやっと君の感情に接近するのは危険だと気づいたのかもしれん。君に対して閉心術を使っておるのか、もしくは……ううむ」
ダンブーは難しそうな顔で唸った。
『閉心術の訓練は勿論続けますよね?』
「儂はそうして欲しいと思っておる」
「シリウス先生に習います……」
「セブルスは苦手かの?」
「はい……それに、はい……」
気まずそうにするハリーに何かを感じ取ったらしいダンブーは「宜しい」と言って、シリウスに閉心術を学ぶように言った。
バス停を通り過ぎる時にここの村がバドリー・ババートンだということが分かった。私が素晴らしいガーデニングの家に目を向けているとハリーが口を開く。
「すみません。ここで何をするかお伺いしてもいいですか?」
「おう、そうじゃ。君にはまだ話してなかったのう」
ダンブーはハリーに自分の古い同僚であるスラグホーン教授を引退生活から引っ張り出してホグワーツに戻るように説得するのを手伝って欲しいと言った。
「僕が役に立つんですか?」
「お前さんらは餌じゃ」
『言い方ってもんがあるでしょう?』
私はケラケラ笑った。
今の魔法界について話しているダンブーとハリーの横で私は村を眺めていた。
どこの町も、村も、同じね。
両端に家の立ち並んだ狭い坂道を上る。どの家も窓という窓全部暗かった。魔法界を覆っている奇妙な冷気がこの村にも流れていた。
「ぐっ」
突然呻き声を上げたダンブーを見ると左肩を押さえて眉を顰めていた。
『問題が?』
「いいや。セブルスは完璧じゃった。人間とは不思議なものでのう。ない腕が痛む時がある」
「校長先生――――その手はどう……?」
『私がスッパリやったのよ』
ハリーはうっとした顔になった。
「ユキの潔さに助けられたのじゃ。この話は説明している時間がない。スリル満点の話じゃから、それにふさわしく語りたいでのう」
ダンブルドアは茶目っ気たっぷりにハリーに笑いかけた。
私たちはこぎれいな石造りの小さな家へとやってきたのだが様子がおかしい。手入れされた庭の小道の先にある玄関のドアの
「ハリー、杖を出して儂についてくるのじゃ」
注意して小道を進み、私は先頭に立って玄関扉を開けた。
『多重影分身の術』
家を調べるために影分身を送り込む。程なくして影分身は消え、戻ってきた影分身の記憶から異常なしと分かる。
『人はいません』
「中へ入ろう。ルーモス 光よ」
ダンブーの杖先に明かりが灯り、狭い玄関ホールが照らし出された。ダンブーは居間へと入って行く。
部屋は酷い状態だ。時計がバラバラになって床に落ちていて、ピアノは横倒しになって鍵盤がそこかしこに散らばっていた。落下したシャンデリアの残骸が杖灯りに反射して光る。
ドラゴン臭い。
壁にべったりと飛び散っているのは多分ドラゴンの血だろう。そう予想をつけていると近くに来て血を確認したハリーが息を飲んだ。
『気持ちの良いものではないわね』
「なにか恐ろしいことが起こったのじゃ」
ダンブーがこちらを振り返った。
「校長先生、争いがあったみたいです……その人は連れ去られてしまったのでは?」
恐ろしそうに言うハリーに答えず部屋の中を見渡していたダンブーは首を振る。
「……いや、そうではあるまい」
ダンブーは真っすぐに歩いて行き、膨れ過ぎた肘掛椅子のクッションに杖の先を突っ込んだ。
「痛い!」
「こんばんは、ホラス」
ダンブーが朗らかに挨拶するその前では椅子がぐにゃりと歪んでいき、スラグホーン教授に変身していき、涙目で恨みがましくダンブーを見上げていた。
「そんなに強く杖で突く必要はないだろう。痛かったぞ」
真ん丸の目と銀色のセイウチの髭。懐かしい。お元気そうだ。
「なんでバレた?」
「本当に死喰い人が訪ねてきておったのなら家の上に闇の印が出ていたはずじゃ」
「ふうむ。時間がなかったからな。部屋を片付けるのを手伝ってくれるだろう?」
「勿論じゃ」
背中合わせに立ったダンブーとスラグホーン教授は2人とも同じ動きで杖で掃くようにスイーっと振った。
家具が飛んで元の位置に戻り、シャンデリアの破片がキラキラ光りながら上へ集まっていく。裂け目も割れ目も穴も、そこら中で閉じられ、壁もひとりでに綺麗になった。
「ほっほう」
ハリーを視界に入れたスラグホーン教授が懐かしい「ほっほう」の声を上げた。
「ハリー・ポッターじゃ。ハリー、こちらが儂の古い友人で同僚のホラス・スラグホーンじゃ」
「むむ。それじゃあ、その手で私を説得しようと考えたわけだな?いや、お断りだよ、アルバス」
ダンブーは説得を試みだした。しかし、スラグホーン教授の意思は固いらしく教職復帰を承諾してくれない。話では闇の陣営から逃げ続けているということ。ホグワーツにいる方が安全な気がするのだが……。
「トイレをお借りする」
「廊下左手2番目」
ダンブーがトイレに行ったので私たち3人が残された。
スラグホーン教授は好奇心旺盛は瞳でハリーを見つめている。
「君のご両親が戻ってきたというのは本当か?」
「はい。ユキ先生とシリウスおじさんが冥界から連れ帰ってくれました」
「ユキ!あの困った子!元気にやっているだろうか」
「はい?」
ハリーが私を振り返った。スラグホーン教授の目が私の存在を確認する。
「うわあああああ!!!」
どうやら私の存在に今の今まで気が付いていなかったスラグホーン教授は私を見て驚きの声を上げた。
「いつからいた!」
『始めっからです』
「なんてこった!これが忍か?いやいや。君は昔からこうだった!」
カラカラと笑うスラグホーン教授にお久ぶりですとご挨拶。
「あぁ!ダンブルドアはやり手だ!」
スラグホーン教授が額をポンと打つ。
「ユキ、君は今ホグワーツで忍術学を教えているそうだね。噂では火の国というところから来たらしいではないか」
『そうです』
「実に興味深い」
『ふふ』
「その話を聞かせてくれるかな?」
『お世話になった寮監の頼みならば』
「冥界の話も?」
『勿論です』
スラグホーン教授はご機嫌に手を叩いてウキウキした表情を浮かべた。
「君とリリー・エバンズ……今はポッターだな。親友だったね」
『親友が戻ってきて嬉しいです』
「リリー・ポッター!私は君のお母さんをよく知っているんだ、ハリー」
スラグホーン教授はリリーが優秀な魔女で魔法薬学が得意だったことを話した。
「母さん、魔法薬学が得意だったんですか!?」
「驚くことかね?」
「料理がちょっと……」
『リリーは探求心旺盛なのよ。未知の領域に挑みたがるの』
「へえ……」
ハリーが遠い目をした。
「ところで、ユキ。Ms.ヴェロニカ・ハッフルパフとは今も連絡をとっているかね?」
『はい。今、ヴェロニカを通じてケリドウェン病院に協力をお願いし、解毒薬の研究をしています。こうして協力要請出来たのもスラグホーン教授がご縁を繋いで下さったおかげです』
「私もこうして教え子の役に立てて嬉しいよ。人の縁とは大事なものだよ、ハリー。私はホグワーツ在職中、スラグ・クラブという私が将来性があると見込んだ生徒を集めてクラブを作ってね。君のお母さんも入っていたよ。彼女は―――――
リリー、レギュラス、セブの話。シリウスがスリザリンに入らなかったことを残念がり、それから話は移って自分が目をかけた生徒が卒業して優秀な人物となったことを誇らしげに話すスラグホーン教授。
だが、段々と言葉に元気がなくなっていった。
「はぁ。この1年誰とも連絡を取っていない」
スラグホーン教授は自分の言っていることにショックを受けているようだった。
『戻ってきて下さい、先生』
スラグホーン教授は私をじっと見た。そしてハリーを見た。
揺れる心をもう一押し。
『ハリーを含め、ホグワーツには将来有望な生徒が沢山います』
「そうだろうが……」
『シリウス・ブラックは忍術学の助教授です。今からでも一揃い欲しくありませんか?』
「それは」
『先ほどお話した解毒薬の開発は是非ともスラグホーン教授にもご協力をお願いしたいんです。それから、フェリックス・フェリシス改良薬を作ったのですが見て頂けませんか?火の国から持ち帰った薬材もお見せしたいです。火の国の薬材といえばセブルス・スネイプがそれについて纏めた論文があります」
「興味を唆るが……」
『セドリック・ディゴリーはご存知ですよね?三大魔法学校対抗試合でハリーと共に優勝した子です。良い子なので是非スラグホーン教授にご紹介したい』
「むむ」
『今年のグリフィンドール・クィディッチチームは特に優秀』
「なんとなんと」
『この時代だから生徒たちは授業に熱心に取り込むものが多く優秀な人材が――――
「分かった、分かった!」
パンとスラグホーン教授が手を打って、降参だと手を広げた。
「引き受ける!」
私は破顔した。
『やった!』
「ただし、私の私室からパイナップルの砂糖漬けを盗むのはよすんだぞ?」
『あはは!盗んで食べるのって美味しんですよ』
「はぁ。困った子だ」
スラグホーン教授に手を差し出す。
揺れる銀色の顎髭。むしり取りたい。
「あああその視線止めなさい。いけない考えだ」
そう言いながらスラグホーン教授は私の手を取り握手してくれる。
「話は纏まったかの?」
ダンブーがニコニコしながら部屋に入ってきた。
「アルバス、世話になる」
「大歓迎じゃ。9月1日にお会いしましょうぞ」
私たちはスラグホーン教授に挨拶をして家から出て行った。
「ユキ、申し訳ないのじゃがハリーに話があるでの。ここでお別れじゃ」
『分かりました。ハリー、次に会うのはホグワーツになるかしら。元気でね』
「はい。おやすみなさい」
『校長先生、失礼します』
「真っ直ぐ帰るんじゃぞ」
バシン
私はノクターン横丁に来ていた。
カモはいないだろうか?
そうそう簡単に出会えるわけではないのだが横丁を歩いて行く。
道の角に隠れてこちらを窺う人がコソコソと誰かと喋っている。特にこちらを攻撃してくる気配はない。残念。
どこかに重傷者でも転がっていないものか……。
『そう都合よくいかないわよね』
ノクターン横丁に揺れる紫色の袖
ヒラヒラと
その動きはまるで蝶
***
グリモールド・プレイス12番地。
ここにいるのはセブ、シリウス、リーマス、リリー、ジェームズ。
私は妲己に、私と関わる人の死に際を見せられた。
今まで、このことは秘密にしながら周りの大切な人を助けようと思ってきた。だが、シリウスをベールの向こうへ行かせてしまったことで自分の傲慢さに気づき、シリウス、セブの勧めもあって特に信頼できる人たちに伝えた。
信じられないようなこの話だが、リーマス、リリー、ジェームズはこの話を信じると言ってくれている。
「僕の死に際も見たかい?」
『見たわ……』
「是非知りたいな」
リーマスはシリウスが言っていたように自分の死を知ることを望んだ。
『口頭で伝えるか、憂いの篩の記憶を見るか選んでくれる?憂いの篩は……かなり生々しいから見るのに覚悟が必要よ』
「憂いの篩で見たい。見た方が分かりやすいから」
『分かった』
「僕の死は?」
ジェームズに首を横に振る。
『いいえ。ジェームズもリリーの死も見ていない。2人については何も見ていないの。ヴォルデモートに殺されるところも見ていない』
ヴォルデモートに彼らが殺されたことについては、私が過去に行き、記憶を取り戻してリリーとジェームズがヴォルデモートに殺されることを思い出した経緯がある。あの時にヴォルデモートを倒していればとリリーとジェームズがベールの向こうから戻ってきた今でも悔やまれる。
知っていたのに防げない……恐ろしい。
『私と深く関わっている人でも死に際を見せられなかい人がいる。例えばフレッドの死は見せられたが同じ双子のジョージの死は見せられていない……あの女狐。情報が中途半端だ。正直この情報を鵜呑みにしてよいのか……』
「もしかしたら穏やかな死を迎える人間の死は除かれたのかもしれないな」
『そうね』
シリウスに頷く。
『今は妲己を信じるしかない』
私は検知不可能拡大呪文をかけた巾着から憂いの篩を取り出してテーブルの上に乗せた。
ゆらゆらと揺れる水面に私の記憶が銀色の糸となって落ちていく。チョンと水面を杖でつつけば血だまりの中にセブの姿があって私は息を飲んで震えた。
「ユキ」
後ろによろめく私の体をセブが支えてくれる。
「大丈夫だ」
『え、えぇ』
動揺を隠せない私はセブに導かれて椅子に座らされる。
「見させてもらうよ」
リーマスに頷く。
ジェームズとリリーもリーマスに続いて憂いの篩に頭を突っ込んだ。
「ユキ、あれから少しは落ち着いたか?」
シリウスが気づかわし気に聞いてくれる。
『みんなに話すと決めてから気持ちが軽くなった。ありがとう』
「スニベルス、あの日の後、ユキに辛く当たらなかっただろうな」
「首を突っ込んでくるな」
「っユキ!」
『問題なしよ』
ハッとしてこちらを見るシリウスからあからさまに視線をそらしてしてモゴモゴ口を動かす。
あの日の無理矢理な行為は激し過ぎた。セブにあんな一面があったとは……今思い出すだけでも震える。
「よくも!スニベニー!」
私の様子を見てシリウスは何かを察したらしい。立ち上がって杖を抜くと同時に対面に座っていたセブも杖を抜いた。
『ちょっと!みんなが憂いの篩に頭を突っ込んでいる時にドンパチは止めてちょうだい。あなたたち2人ってどうして顔を合わせたら杖を抜きたがるのかしら』
「簡単だ。こいつが気にくわねぇからだッ。それにユキを傷つけた」
『シリウス、落ち着いて。セブも座って』
セブの腕を引っ張るが従ってくれない。
「犬は去勢されると性格が落ち着くらしい。伝手を辿って癒者を探してやろう」
「死喰い人は最近、襲われて魔力と記憶を消されているらしいじゃないか。お前もせいぜい背後に気をつけることだな」
『はあぁ。もうやめて。セブ、お茶を淹れるから手伝ってちょうだい』
ぐいぐいセブを引っ張って会議室で使っているこの部屋からキッチンへと連れて行った。
ポットにお湯を入れて杖で叩いてお湯を沸かしていると、隣の黒い人が猫背になって反省していることに気が付いた。
『もうシリウスやジェームズと子供じみた言い合いと馬鹿みたいに高度な魔法の打ち合いをしないでね』
セブは無言で拒否を示した。
『さっきの反省したような態度は何だったの?』
「……あの日の君への仕打ちだ……」
眉間にくっきり皺を寄せて反省を色濃く表情に出しているセブの首に腕を回す。
『あれはあれで良かったわ』
耳元で囁くと頬擦りされて頬に強くキスをされる。ぎゅうっと強く抱き締めてくるセブを私も強く抱きしめ、背中を摩った。
『紅茶を淹れるのを手伝って。あなたの方が私より上手だもの』
「茶葉を選んでくれ」
『じゃあこの呪文っぽい名前のヌワラ・エリヤにする』
セブが淹れてくれた紅茶を持って部屋に入ると青い顔をしたリーマス、リリー、ジェームズがいた。みんなに紅茶を配る。
「自分の事よりトンクスがショックだよ」
リーマスが頭を抱えた。
「見せられた記憶は時系列通りに並んでいるのかしら?」
『今のところそうだわ』
リリーに頷く。
「ホグワーツで大きな戦いがあるようだね。僕たちだけでは全員を助けることは難しそうだ」
『だからといって死を告げるのは気が進まない。若い子には酷だわ』
「対策として、ユキは守りの護符を作って配っている。また我輩たちもフェリックス・フェリシス改良薬を調合している」
「守りの護符って?」
『精神面以外の攻撃を1度、3秒間守ってくれる護符よ。シリウスを守れなかったけれど……』
「僕は神秘部の戦いで守られたよ。他の皆もだ」
私は守りの護符がリーマスに役割を果たしてくれたようでホッとした。それと同時に守りの護符を使うほどの危険な目にあったのだと背筋が寒くなる思い。
『新しいものが出来たら渡すわ』
「ありがとう、ユキ」
ホグワーツに戻ったら、神秘部の戦いに参加した生徒にも守りの護符を使ったか聞かなければならない。
『それで、今後この情報をどう扱うかだわ』
「難しい問題だな。マッド‐アイなどは積極的に知りたいと思うだろう」
ジェームズが言う。
「マグル学教授のチャリティ・バーベッジ教授には伝えるべきではない。彼女は不死鳥の騎士団ではない。ユキのこの記憶が多くの者に知れるのは避けた方がいい、それから」
「待って。書いていくわ。直ぐに燃やすにしても書いて整理したい」
シリウスを止めてリリーが羊皮紙を持って来て書記を引き受けてくれた。
「トンクスは?」
「僕から伝える」
シリウスの問いにリーマスが頷く。
私はホッとしていた。人の死の予言をその人に伝えるのは辛い。
「俺からマッドーアイに伝える」とシリウス。
みんなが私の負担を分散してくれようとしてくれているのが分かってとても有難い気持ちになった。仲間がいて良かったとしみじみ思う。
「フレッドのことだけど、成人しているとはいえまだ子供だわ。ウィーズリー夫妻に言うのがいいと思うの」
『モリーさんは……子供たちの死を心底怖がっている。ものまねボガードが子供たちの死体に変身して情緒不安定のなっている時期があったわ』
そう言うとリリーは頷いて、この話はアーサーさんに伝えて、モリーさんに伝えるのは彼に任せようと提案してくれた。皆もそれがいいと意見は纏まった。
『細かいところはじっくり詰めていきましょう。あの記憶も何回か見返して状況を分析した方がいい』
会議はお開きになって私たちは紅茶を何杯か楽しんだ。セブは帰ろうとしたが私とリリーで無理矢理に引き留めて所在なさげに腕と足を組んで会話を聞いている。
そこへガチャガチャと玄関の鍵が回る音がした。
『トンクスだわ』
「迎えに行ってくる」
先ほどの事もあってかリーマスは切羽詰まったように部屋を出て行った。
「こんにちは!」
私は目を瞬いた。トンクスが部屋に入ってきた瞬間に部屋がぐっと明るくなったからだ。
いつもトンクスは明るいムードメーカー。
しかし、いつもの明るさに加えて幸せオーラを纏っている気がする。
『トンクス、何か良いことがあったの?』
トンクスの顔がボッと赤くなったので私はリリーと顔を見合わせた。
「これはリーマス絡みかしら」
見るとリーマスも幸せオーラを放っていた。
「僕たちの間に隠し事はなしだよ?」
「そうだ!親友には正直にならないといけない」
ジェームズとシリウスの期待の眼差し、私とリリーの好奇心いっぱいの瞳を向けられて照れながらリーマスが口を開いて言ったのは「婚約したんだ」という素敵な報告!
わっと部屋が沸いた。
「おめでとう、リーマス!」
「ハハッ!今晩飲みながら話を聞かせてくれ」
ジェームズとシリウスがガタガタと立ち上がって、リーマスのもとへ行き、背中をバンバン叩いたり肩を組んだ。私たちはトンクスを椅子に引っ張ってくる。
『トンクスじゃなくなるのね!リーマスになんて呼ばせるつもり?』
「ど、ドーラって」
真っ赤になりながら言うトンクスが可愛い。
「結婚式には是非招待してね」
「はいっ、もちろん、是非」
私、リリー、トンクスはニコニコした。
「実はこれから指輪を見に行こうってなっているんです」
『指輪?』
「はい。婚約指輪はなしにして、結婚指輪を買おうかと」
『結婚指輪?』
「あら?もしかして結婚指輪を知らない?ユキ、これよ」
リリーが左手を見せてくれて、そこには銀色のシンプルな指輪がはめられていた。モリーさんがつけている指輪に似ている。
リリーが指輪をつけていたのは知っていたが、結婚指輪というのは知らなかった。
『これ結婚指輪っていうんだったのね。私、流行りものだと思っていたわ』
鈍い輝きを放つ銀色の指輪はしっとりと落ち着いているように見えて、それは魂の色を想像させた。ジェームズも同じ指輪をつけていると思うと、彼らの愛の繋がりが指輪として目に見えるように思える。
「左手薬指に指輪をつける意味は永遠の愛、愛や絆を深めるという意味があるの」
『指によって意味があるのね』
「ユキさんは結婚とか考えないんですか?」
『私!?』
突然話を振られて目を瞬く。
「はい。実は私たち今回の神秘部の戦いで命の危機を感じたのもあって結婚を早めたんです」
『何故?』
リリーとトンクスはきょとんとした後、セブに気の毒そうな視線を向けた。何故!?
「ユキは結婚に憧れはないの?」
『前にダンブルドア校長と話したけど、ピンとこないのよね。でも、結婚式の大きなケーキには憧れる!』
「結婚式は幸せを詰め込んだ場よ。永遠の愛を誓うの。ジェームズとの式も素敵だった。トンクスも会場選び、ドレス選び、招待状の発送と忙しくなるわね」
「リーマスがしっかりしてくれているから安心なんです。家の事諸々も金銭面もって ああああ!忘れていた! 私、ユキさんのこと心配して今日会えなかったら手紙を書こうかと思っていたんですよ」
『私の事?』
「可哀そうなパフスケインへの寄付の件ですよ!」
「可哀そうななんですって?」
リリーが眉間に皺を寄せ、トンクスが大声で叫んだので向こうで騒いでいたリーマスたちもこちらへとやってきた。
「まさかあれに寄付していませんよね?」
『え……ま……まだ……ここから出たら寄付に行こうかと……』
「間に合って良かったですよ!!」
「トンクス、何をそんなに怒っているんだい?」
「リーマス。前の会議前、ユキさんが机の下でこのチラシを見ていたんです」
トンクスがズボンの後ろポケットからチラシを取り出し、セブ以外の全員がそれを覗き込んだ。
「食用とされる可哀そうなパフスケインを助ける為の寄付金……わあお。詐欺の匂いしかしない」
「というか引っ掛かる奴は馬鹿って感じの匂いしかしないぞ」
ジェームズとシリウスが憐れむ顔で私を見た。
『これ……詐欺なの?でも団体の人、こんなに美味しいからパフスケインたちは狙われているんですってパフスケイン実際に食べさせてくれて……』
「仮に食用パフスケインを助ける団体があったとして、それを助ける団体の人間がパフスケインを食べさせると思うか?お前、忍だろう?あとパフスケイン食べるとか気持ち悪いな」
シリウスが顔を顰めた。
「ユキ、いくら寄付しようと思ったの?」
『100ガリオン』
リリーの問いに答えた私。その場にいるセブ以外の皆が呻き声とともに天井を仰いだ。
「ユキ、怒らないから正直に話してごらん。今までもこういった寄付をしたことがあるかい?」
5歳の子供に言い聞かせるような口調で話すリーマスにほっとしながら首を横に振る。
『今まで100ガリオン以上の買い物をする時にはミネルバに相談するようにしていたの。だから……その……こういった事は起きなかったんだけど、今はミネルバが本調子じゃないから相談できなくて……それで……』
「ユキ」
優しーーい声でリリーが私の名前を呼んでニッコリした。
「朗報よ。結婚すると財産を共有するようになるの。お金の管理をセブがしてくれるわ」
詐欺に引っ掛かりかけて皆に怒られ、呆れられて涙目になっていた私の頭にパッと花火が上がる。くるりと首を回してセブを見る。
『私と結婚』
「帰る」
セブがすくっと立ち上がった。
『っ!?待って!わああん。置いていかないで!私のプロポーズを受けてっ』
私はトンクスにお礼を言い、皆に挨拶をしてマントを翻して去って行くセブを追いかけていく。
バシンッ
『セブ~~~』
姿現しでホグワーツへ戻ってきた。私は芝生の上をザクザクと大股で横切るセブの背中を追いかけている。
『呆れないでっ。今まで幸いにも詐欺に引っ掛かったことはないわ!ミネルバのおかげで。貯蓄も頑張っている!ミネルバの指導で』
金銭問題は人間関係を破綻しかねない。
どんなに強固な友人関係も夫婦関係だって壊す。
セブにこんな女と付き合っていられないと思われてしまっただろうか。
半泣きになりながら追いかけていると、急にセブが足を止めたのでドンと黒い背中にぶつかった。
『痛たた』
「食用にされる可哀そうなパフスケインであったか?」
ねっとりとした声と見下す視線に私はすくみ上る。
『そ、そうです……』
「それに100ガリオンも寄付しようと」
『はい……』
「君は忍だったと思うが、違うか?」
『忍でございます』
「はああああああ」
盛大な溜息を吐かれて思わずセブに抱きつく。
『セブっ。呆れて捨てないでっ』
「何があっても君と別れるつもりはない」
『っ!』
キラキラした眼差しを向けてセブを見上げると、照れたようで頭を掴まれて体から離された。扱いが酷い。
「君からのプロポーズは断る」
『そんなぁ』
「だが、今後100ガリオン以上使う時にマクゴナガルに相談できない場合、我輩に相談しろ。それからどんなものであっても勝手に寄付はするな。あとマクゴナガルに注意されていることは?」
『通販はほどほどにしなさい』
「はあぁ。確かに君の部屋でガラクタを見たことがある」
セブは本日2度目の溜息を吐きながら眉間を揉んだ。
「マクゴナガルに家計管理を習え」
『家計管理……セブが私と結婚して、私のお給料管理にして、私にはお小遣い制にすれば万事解決。結婚しましょう』
「自分の金は自分で管理しろ。それからプロポーズは断る」
『あぁ……それじゃあウエディングケーキも夢に終わったのかぁ』
「それは……」
『え?』
「君からのプロポーズは断ると言っただけだ」
君からの?ということは、セブからプロポーズしてくれるってこと?
『もしかして……結婚してくれるの?』
ポカンとセブを見上げるとふいっと顔を背けられた。
パアアァと顔が笑顔になっていく。
『早くその時がきますように!早く私のお金の管理をして!』
「だから金の管理は自分でしろ!」
『向き不向きってもんがあるのよ』
「努力しろ。今回のパフスケインの件を聞いたらマクゴナガルが泣くぞ」
『うぅ。知られたらまた反省文を書く羽目になる』
「その年で反省文なぞ書いているのか……」
呆れた視線を手で遮る。パフスケインのことは反省して、質素倹約に努めよう。
『ところで、いつ結婚してくれるの?』
「さあな。相応しい時だ」
『相応しい時にセブからプロポーズがあると。楽しみだわ。私、断らない』
「随分と気楽なプロポーズになりそうだ」
『結婚する時は指輪を買いに行きましょう。リリーの指輪を見て、とても羨ましくなった。ペアの指輪をしていると心の繋がりが目に見えるようだわ』
私はニコッと笑ってスキップして歩き出した。
『そうだわ。銀色の指輪じゃなくて腕輪を買ったの』
「今しがた無駄遣いをするなという話をしていたはずだが」
『必要だから買ったのよ。あなたがしている腕輪とお揃い。クィリナスに獣化暴走防止と忍びの地図にうつらないように呪文をかけてもらう』
「君はあの男を信用し過ぎている」
『ちょっと困ったところもあるけど、クィリナスは優秀よ』
魔法具作りに関して彼の右に出る者はいないのではないだろうか。
『ホグワーツで魔法具作りや呪い破りの授業があれば面白いのにな』
「呪い破りに関しては闇の魔術に対する防衛術でも取り上げられるだろうが……この時期だ。教えておきたいことが沢山ある。今は後回しだな」
『忍術学も実践重視よ』
私はセブを見上げてニヤリとする。
『実践と言えば、私も魔法の腕をあげたのよ?久しぶりに決闘してみない?』
「断る」
『負けるのが怖い?』
セブは目を細めた。
「……いいだろう」
チョロいわね。
お互い杖を出して相手に向ける。
「忍術は使うなよ」
『私は魔法でもあなたに勝てるようになりたいのよ』
「まるで忍術を使えば我輩に確実に勝てるような言い方だな」
「ロックハート主催の決闘クラブでもこんな会話があったわね。あの時は負けたけど、今度地面に転がるのはセブの方よ」
「ロックハートが言っていたな。決闘は何かを賭して行われると。何を賭ける?」
『相手に1つ命令できる権利を賭けましょう。因みに、セブは以前に私に負けているわ。勝って命令出来る権利を2回に増やしてやる』
「お前がカウントしろ」
ぶっきらぼうにセブが言った。
『えぇ。作法に
頭を下げてお辞儀をし、杖を構える。
『1―――2―――3―――!』
ビュンと杖が空を切る音。
私たちは初めから無唱呪文で打ち合いを始めた。
相手をやっつける必要はない。相手を負かせばいいから呪文は盾の呪文と武装解除呪文に絞っている。考える時間を与えないだけの速さが私にはある。
ただ……力では負けるのよね。
じりじりと後ろに下げられている。フィールドがあったら場外に出されて負けだろう。
このまま押され続けるのはよくない。一気に勝負に出よう。
バンッ
セブの呪文を弾いた瞬間、地面を蹴りバッと前へ出る。一瞬見開かれたセブの目がスッと細くなる。距離はセブの2メートル前まで詰めた。
バンッ
お互いの呪文がぶつかって火花が弾けた。
バンッ
再び呪文がぶつかって弾けたがまずい。力負けして体が仰け反ってバランスを崩す。
バンッ
『んっ』
踏ん張っていた後ろ足が崩れて地面に尻餅をつく。
「いい眺めだ」
私に杖を向けて片方の口角を上げるセブ。まだ勝負はついていないわよ!私は杖を振った。
「っ!」
バンッ
『あっ!』
空中に飛んでいく杖は私のもの。
セブは屈んで倒れる私の顎の下に杖を置き、くっと私の顔を上げさせた。
「負けを認めろ」
『くぅ』
「さあ、言え。ユキ」
悔しいっ……!
でも完全に人を甚振っている様子のこの人は負けたと言うまで杖を下ろさないだろう。私はギイイと食いしばった歯の間から声を出す。
『ま……負け……まし、た……』
満足したように鼻を鳴らすセブにタックルすると、後ろにドッターンと倒れる。仰向けにひっくり返ったセブの上に私は跨った。
落ちていた自分の杖を拾う。
セブが杖腕を動かす前に私はセブの胸に杖を突きつけた。
『負けましたっていいなさい』
「決闘の決着はついたはずだ」
『そうね。でも、私の気が済まないから、あなたに負けましたって言わせたい』
「さっさと上からどけ」
『リクタスセンプラ 笑い続けよ』
「っく、くはは、く、やめろ、ユキ!く、覚えていろ、ふっ」
急いで杖を振ってセブの杖を遠くに吹き飛ばし、更には両手を掴んで私の体の前に拘束した。
『負けましたは?上手に言えたら呪文を終わらせあげるわよ』
「くっ、く……ふっ……くく……」
『セブったら頑固ね』
笑いながらも頑なな様子のセブがいつ降参するだろうと見ていると、暫くしてふっと拘束していた腕の力が緩まった。
『言う気になった?』
「く、ふっ、く……負け、く、くくっ、た」
『良く出来ました!』
セブから負けたの言葉が聞けて、更には貴重な笑い顔も見られたし大満足。
私は杖を振って笑いを止めた。
『お疲れ様。笑いつかれたでしょう』
「……喉が渇いた」
『何かスッキリしたものを飲むのはどう?レモネードシロップを作ったの。ソーダもあるから割って飲まない?』
「あぁ。頼む」
『じゃあ私のお部屋へ行きましょう』
一緒に私の部屋へ戻ってレモネードソーダを飲み、談笑する。
セブの後にシャワーを浴びてバスルームを出た私は凍り付いていた。ベッドには以前通販で購入したラブグッズが散乱している。メイド服、バニーの衣装、大人の玩具が色々。
「どれか選べ」
『え……?』
ゆっくりとこちらへ近づいてくるセブ。私は後退してバスルームの扉に背中をぶつけた。
「決闘で勝った方は負けた方に命令出来る。君も承諾し、君は負けた」
耳元で低く響く滑らかなベルベッドの声に震える。
「特別にどれを使うか選ぶ権利をやろう、ユキ」
『っ!さっき笑わせられたのを根に持っているわね!』
「そうだ」
『んっ』
顎を掬われて顔の上がった私の唇にセブの唇が重なる。
くちゅ ちゅぷ
艶めかしい口づけ。離れていく舌は最後の最後まで繋がっていて、私は舌を伸ばしたまま官能的なキスの余韻に浸って惚けている。
「たっぷり仕返しをさせてもらう」
頭がぼんやりしてセブを欲することばかり考えている。
ニヤリと色っぽく笑うセブに腰を抱かれて私はベッドへと向かう。
「拘束プレイなど如何かな?」
『……い、いいわ』
すっかり興奮してしまっている心で答える。
セブの杖の一振りでラブグッズが箱にしまわれ、ベッドに残されたのはピンク色の手錠。
今度は激しいキス。
『セブ、めちゃめちゃにして欲しい』
「君の意のままに」
腰紐が解かれ、私の寝巻は床に落ちた。