第5章 慕う黒犬
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13.ダンスパーティー 前編
『みんな上の空ね』
「だな」
学期最後の週は日を追うごとに騒がしくなっていた。
クリスマス・ダンスパーティーが近づいているのがその理由だ。
みんなソワソワしていて授業が出来ないと判断した私たちは生徒たちに今日の授業は好きなことをして遊んでいいと言い渡した。
誰とパーティーに行くか、どんなドレスを着ていくかを興奮した様子で話している生徒を見ながら私はシリウスと雑談をする。
「そういえば、ダンブルドア校長が妖女シスターズの出演の予約をしたらしいぞ」
『妖女シスターズ?』
「ユキは魔法界のラジオを聞かないのか」
『うん。その妖女シスターズって有名なの?』
「あぁ!俺も生徒と同じくらい妖女シスターズの出演を楽しみにしている」
二カッとシリウスが笑う。
『クリスマス・ダンスパーティーでの食事は立食パーティーなんですって。しかも軽めのサンドウィッチやオードブルばかり並ぶそうよ』
「不満げだな」
『だって、いつものクリスマスディナーは豪華でしょ?私、毎年楽しみにしているのに』
残念ながら今回はおあずけだ。
「だが、その代わり昼食は普段のクリスマスディナー並に豪華だと聞いたぞ」
『それ本当?!』
「あぁ。今朝、腹が減って厨房へ下りた時に屋敷しもべ妖精がそう言っていた」
『やったー!』
嬉しくて両手でガッツポーズを作る。
「蜂蜜酒やバタービールなど飲み物も豊富に買い込んだらしい」
『たくさん飲むぞーっ』
「当日あまり飲み過ぎるなよ」
『気をつけるわ。踊れなくなったら大変だものね』
学期が終わり、休暇中にやるべき宿題を私はどっさりと出した。
生徒たちには強くなってもらわなければならない。
何年後かは分からないが、生徒たちの中には死喰人と戦う者も出るのだから。
それでも、今は平和な時。
クリスマス休暇に入った生徒たちは思いっきり遊んでいる。
「ユキ先生!覚悟!」
『まだまだ甘ーいっ!それっ』
「うわっ」
子供たちとは息を切らせるまで遊んだ。
城にも校庭にもシンシンと雪が降っている。
ハグリッドの小屋は砂糖にくるまれた生姜パンのようで、その隣のボーバトンの薄青い馬車は粉砂糖がかかった強大なかぼちゃに見えた。
ダームストラングの船窓は氷で曇り、帆やロープは真っ白に霜で覆われていた。
そして、いよいよクリスマスがやってくる。
『ふわあ。朝ね』
いつも鍛錬のため日が昇る前には目が覚める。でも、今日の鍛錬はお休みだ。
なんてったって今日はクリスマスなのだから。
私は顔を洗い、さっさと着物に着替え、リビングの扉を開けた。杖を振って暖炉に火を入れるとぼんやりと室内が照らされる。
『うわあ!』
クリスマスツリーの前にはプレゼントの小山が出来上がっていた。私はクリスマスツリーの前に座り込み、プレゼントを開ける作業を開始する。
ほぼ全校生徒からお菓子が贈られてきていた。私は生徒たち全員にプレゼントを贈っている。今年は蝶の形の紙だ。
蝶の片羽にメッセージを、反対の羽に名前を書けば、書いた名前の人にひらひらと飛びながらメッセージを送ってくれるというもの。
きっとこれなら悪戯に使われず、フィルチさんにも怒られないだろう。
貰ったプレゼントはモリーさんからはいつものように手編みのセーター。
ルシウス先輩とナルシッサ先輩からはチョコレートの詰め合わせ。
セブからは真っ白でふわふわのミトン。
クィリナスからはピンクのフリルのついたエプロン。
シリウスからは真珠のイヤリング。
レギュからは香水が贈られてきていた。
私はセブ、クィリナス、シリウス、レギュに寝巻きに使える浴衣を贈っていた。
午前中は生徒たちと雪合戦をして遊び、豪華な昼食を満腹になるまで食べた。昼食後はそのままホグワーツの教員たちは大広間に残る。大広間に最後の飾りつけをするためだ。
『思いっきり豪華にしなくちゃね』
「あぁ!ボーバトンとダームストラングが腰を抜かすくらい派手な装飾をしてやろう」
「派手さだけを追求して品の悪いものにしてくれるなよ、ブラック」
「お前に品がなんだと言われたくねぇな。万年全身真っ黒なその服は趣味が良いとは思えないが?」
『私はセブの服好きだけどな。毎回着るのが大変そうだって思うけど』
「お前の複雑な構造の服ほど着るのも脱ぐのも難儀ではない」
『確かに、そうね。でも、慣れたら簡単なのよ?』
肩をすくめながらクリスマスツリーに向かって杖を振る。私はユニコーンのオーナメントを出現させた。
「クリスマスプレゼントで送ってくれたのは“浴衣”だったな」
セブがクリスマスツリーに丸いオーナメントを出現させながら言う。
『そう。シリウスは深緋色、セブには常磐緑の浴衣をそれぞれ贈ったの。2人の柄は一緒。少しでも2人が仲良くなりますようにって願いを込めているんだから仲良くしてね』
「「……」」
やっぱり無理か!
あからさまに嫌そうな顔をする両隣りの2人を見て溜息をつく。
『お願いだから私が贈ったプレゼント、捨てないでよ~』
捨てたら泣くから、と付け足しておく。
大広間はホグワーツ教員総出で行われ、美しく装飾されていった。
壁はキラキラと銀色に輝く霜で覆われ、星の瞬く天井には時折流れ星が流れる。その天井の下には何百というヤドリギやツタの花綱が絡んでいる。
12本並ぶクリスマスツリーには、赤く輝くヒイラギの実から、おしゃべりをするオーナメント、ツリーのてっぺんにはキラキラと七色に輝く星。ツリーには盛りだくさんの飾りがつけられていた。
「みなさん、お疲れ様です。大広間の装飾はこれで終わりに致しましょう」
ミネルバが解散を言い、私たち教師はそれぞれ大広間から出ていく。
「パーティーまでどうやって時間を潰すんだ?」
『そうね……きっと中庭でみんな遊んでいるでしょうから混ぜてもらうわ』
「ハハ!学生の頃から本当に変わらないな。よし!それなら俺も混ぜてもらおう」
『セブも一緒にどう?……いや、その、何でもない』
ギロリと睨まれて慌てて首を振る。
「あんな根暗放っておいて行こうぜ!」
『セブの悪口はやめてってわあっ!!』
シリウスに手を引っ張られながら中庭へと行くと、予想通り生徒たちは雪合戦をして遊んでいた。
「ユキ先生!」
「シリウス先生!」
「「もしかして参加をご希望ですか?」」
ウィーズリーの双子がニヤリと笑う。
『混ぜてもらってもいい?』
「もちろんだよ。2人なら大歓迎だ」
大きく手を広げて「わーい」と両手を振るハリーの横っ面に雪玉が当たる。ケタケタと笑うロン。
「やったなー!」
「「戦闘開始だっ」」
『混ぜてもらいますか』
「あぁ!」
私とシリウスは足元の雪を丸めて中庭へと走っていったのだった。
「そろそろ疲れてきたな」
シリウスがタイムを宣言して中庭から抜ける。
『あら。情けないわ「ユキ先生!何やっているんですか!?!?」
パンジー・パーキンソンの声が中庭に響き渡る。
シリウスに雪玉をぶつけてやろうとしていた私は投球ポーズで固まった。
吹きさらしの廊下から私を見ているのはスリザリンの女子生徒たちだった。
『何って見ての通り雪合戦を……』
「そんな事をしている場合じゃないですよ!」
今度はデリラ・ミュレーが叫ぶ。
私はあっという間にスリザリンの女子生徒たちに囲まれた。
「パーティーの準備をしなくちゃいけない時間ですよ!遊んでいる場合じゃありません」
『準備?準備って言っても私は男装するだけだし……』
「でも、女性の姿に戻る時もおありでしょう?」
ずいっとデリラに詰め寄られる。
『そうだけど……』
「それなら準備をしなくっちゃいけません。今すぐドレスと化粧道具を取ってきてスリザリン寮に来て下さい!」
ミリセント・ブルストロードが私に言った。
『ど、どうしても……?』
「「「「どうしてもです!」」」」
私はスリザリン女子生徒の迫力に負けて、自室へと向かったのだった。
『純血』
昔から変わらないこの合言葉。
スリザリンのセキュリティはないに等しい。
セブに進言したほうがいいだろう。
そう思いながら談話室に入る。
『懐かしい……』
思わず呟いてしまう。
スリザリン寮に入るのは学生の時以来だ。
談話室を見渡していると、階段からデリラが降りてきた。
「ユキ先生!私たちの部屋で準備をしましょうっ」
腕を引かれながら廊下を進んで行き、彼女たちの部屋へとお邪魔させてもらう。
そこでは既に各々がメイクとヘアアレンジを始めていた。
「私のベッドを使ってください」
「ダメよ、パンジー。ユキ先生は私のベッドに来るの」
「ホント、あなたって変わったわよね」
2年生の半ばまで私のことを敵視していたデリラの変わりようを見てパンジーが苦笑いを漏らす。
私はデリラに甘えさせてもらって彼女のベッドの上に化粧道具を置いた。
『ええと……』
私は化粧道具をベッドの上に置いて眉を寄せていた。片手には雑誌。化粧の仕方が書いてある雑誌を持っている。
『これが下地、これがファンデーション……ええと、まず、下地を顔全体に塗って……』
杖を振って鏡を空中に浮かせて下地を塗り始める。
続いてファンデーション、チーク、ビューラーで睫毛を上げて、マスカラを塗る。アイライナーを引いて、アイシャドウをつける。
口紅を塗り、最後にレギュからもらった香水を2プッシュ体にかけておしまい。
さて、次は髪の毛に取り掛かろう、と思った時、私はみんなの視線に気がついた。何故かみんな私の顔を見て唖然とした表情を浮かべている。
『なに?どうしたの?』
「ど、どうしたもこうしたも……!」
「ひ、酷すぎますっ」
パンジーとミリセントが悲鳴に似た叫び声を上げる。
ユキの顔は酷い状態になっていた。
ファンデーションの色は濃すぎて顔に泥を塗ったようになってしまっていたし、マスカラは半乾きのまま瞬きをしたせいで皮膚にまつげの跡を残していた。
アイシャドウはギラギラと不気味に光り、口紅はオーバーリップ。ちょっとした地獄絵図がユキの顔面に出来上がっていた。
「兎に角落としてください!」
『そんなに酷い?ちょっと手直しさえすれば……』
「「「「無理ですっ」」」」
部屋に居た4人全員が叫んだ。
「私の化粧落とし貸しますから。さあっ」
デリラに化粧落としを握らされ、部屋を出て女子の洗面台へと向かう。
「ひっ。ユキ先生!?」
「どうしたんですか、そのお顔は!?」
『そんなに酷い?』
「「酷いですっ」」
廊下ですれ違った6年生2人にも言われてしまい、そんなに酷いのかと私は肩を落とす。
ん~書いてある通りやったつもりなんだけどな。
バシャバシャと顔を洗い、私はパンジーたちの部屋へと戻る。
「ユキ先生、私たち支度したら先生のメイクとヘアのお手伝いをしますからちょっと待っていて下さい」
『手を煩わせたら申し訳ないよ。もう一度自分でやってみる』
「「「「いーーえ!」」」」
断固とした拒否の言葉が返ってきた。
『わ、分かったよ……』
私はデリラのベッドに座ってみんなの様子を眺めることに。
皆の目は真剣で、難しい呪文でも唱えるか、O.W.L.の試験でも受けているような顔つきだった。
デリラは髪で緩やかなシニョンを作り、パンジーはボブの髪をクルリと綺麗にカールさせ、ミリセントは金色の長い髪を三つ編みにして緑色のリボンを編み込み、パリス・エアリーは三つ編みハーフアップの髪に銀色のカチューシャをしていた。
『みんな器用ね』
化粧の匂いで敵に位置を知られては困る。
私は今までこういった理由で化粧をしてこなかった。髪の毛も戦闘の邪魔にならないようにアップにして、ヤマブキからもらった抜けば短剣になる簪をさしているシンプルな髪型だった。
まるで芸術作品を作るように丁寧に化粧をし、髪を結う姿を私はぼんやりと見つめる。
「さあ、終わったわ。次はユキ先生の番ですよ!」
『あ……はい……』
私の顔が固まった。
両手を広げ、まるでオペをするように近づいてくる4人。な、なんだか怖いっ。
「ミリセント、口紅取って」
「髪の毛はどうする?」
「最新のヘアスタイルにしましょっ」
「これがいいわ」
『どれ?』
「「「「ユキ先生は動かないっ」」」」
『す、すみません!』
私はなされるがままに生徒たちに化粧とヘアアレンジをしてもらったのだった。
『凄い、これ私……?』
ユキは鏡を見て目を見開く。
パンジーたちは自分たちの力で美しくなった忍術学教師を見て顔を見合わせ合い、満足げに微笑んだ。
「さあ、先生。そろそろ大広間に行く時間です」
『そうだね、行かなくちゃ』
ユキは4人を振り返り、申し訳なさそうに眉を下げる。
『初めは男性の姿でパーティーに参加するの。せっかく綺麗にしてくれて勿体無いんだけど、変化させてもらうわね』
私はドレスに着替えた。それから印を組んで呪文を唱え、蝶ネクタイ、ベスト、その上に黒いドレスローブを着た男性の姿に変化する。
「パーティーの間には女性の姿で踊れる時間もあるんですよね?」
ミリセントが心配そうに聞く。
『もちろん』
私の言葉に4人は顔を綻ばせる。
「スネイプ教授が見たらきっと惚れ直すと思います」
『!?』
パンジーの言葉に声をなくす。と同時に顔が赤くなるのを感じる。
「ダメよ!ユキ先生は私のものなのっ」
デリラが私の腕に自分の腕を絡ませてきた。
「まったく、デリラったら……でも、私もユキ先生と踊りたいなぁ」
パリスがデリラとは反対側の腕にしなだれかかる。
「もうっ!ユキ先生の手を離しなさいよ、パリス!」
「ユキ先生はみんなのものよ」
べーっとパリスが舌を出す。
徐々に収まっていく頬に集まっていた熱。
生徒たちに気づかれずに良かった。
私は内心ホッと息を吐き出したのだった。
4人と一緒に談話室へと下りていくと、男子寮からドラコを先頭とした4年生男子たちがやって来るところだった。
「ドラコ!」
パンジーが頬を紅潮させながらドラコの元へ走り、彼の腕にしなだれかかる。
「今日の私、どうかしら?」
「あぁ。いいんじゃないか?」
小さく口角を上げるドラコを見てパンジーは満足そうに顔を綻ばせる。
「ユキ先生?」
『そうだよ。正解』
ザビニにニコリと微笑む。
「女性の姿の先生が見たいんですが?」
とノット。
『ダンスパーティーの終盤になったら女性に戻るよ』
「期待していて。ユキ先生、とっても美人なんだから」
デリラが私の腕にきゅっと抱きつきながら言う。
『私は先に大広間に行かなくちゃ。みんなもパートナーの元へ』
パンジーはドラコ。パリスはノット、ミリセントはザビニ、デリラは……
「実は、私パートナーを見つけなかったんです」
『え!?』
デリラに一斉に視線が集まる。
「それ本当!?」
驚いた声でパンジー。
そんなパンジーにデリラは首を縦に振って「だって、相手が見つからなければユキ先生がお相手してくれるって思ったから」と言った。
『デリラ!』
嬉しいような、困ったような。
でも、パートナーを見つけなかったのなら仕方がない。
『これからはこんな我が儘ダメよ?』
「という事は……?」
キラキラした目で私を見上げるデリラの頭にポンと手のひらを乗せて『今回だけだからね』とウインク。
『影分身の術』
ポン
「やったーー」
手を広げて抱きつくデリラを受け止める影分身。
『それじゃあ大広間に向かいましょうか』
私はみんなにそう言って談話室を出たのだった。
寒い地下の廊下を通り、地上へと続く階段を上がっていく。玄関ホールは人でごった返していた。
大広間のドアが解放される8時を待って、みんなウロウロしている。
自分と違う寮のパートナーと組む人はお互いを探して人ごみを縫うように歩いていた。
『じゃあね、みんな』
私はみんなに軽く手を上げて先に大広間へと入る。
ホグワーツ教員は生徒たちより先に大広間に入る事になっていたのだ。
大広間の最奥ではダンブーとスプラウト教授が何かを話している。
私も近くへ行こうとした時、後ろの戸が開いた。
『セブ……』
「ユキか」
私は驚きのあまり息を呑んだ。
いつも流れるままに下ろされている黒髪を今日は軽くかきあげたようにセットしている。
服もいつものボタンがたくさん付いた詰襟の黒一色の服ではない。
黒シャツの上に黒いベスト、首元には深緑色のスカーフをつけている。黒いドレスローブの袖口は銀と緑で縁どられていた。
『素敵……』
思わず口にしてしまい、私はハッとなり、恥ずかしさから俯く。
「男の顔で言われてもな」
ふっとセブが笑う。
セブを直視出来なくて困っていると、ギギっと扉が開いた。入ってきたのはシリウスだ。
『わあお。こちらも男前』
今日のシリウスはいつものラフな格好とは違い、きちっと正装していた。
黒い蝶ネクタイに白いシャツ、黒のベスト、黒いドレスローブ。
髪だけは無造作に後ろで束ねられていたが、その無造作さも計算されたような完璧な出で立ちだった。
『これは女子生徒からのお誘いが殺到しそうね』
「お前もな」
ニッとシリウスが笑う。
私たちは大広間の最奥、先生たちの横へと並んだ。
パッと樫の観音開きの扉が開く。
生徒たちがガヤガヤと中へ入ってきて途端に大広間は人でいっぱいになる。
全員が大広間に入り終わり、扉が閉められた。
事前にミネルバに言われていたのであろう、生徒たちはホールに円を描くように立った。
真ん中に出来た空間で代表選手たちは踊ることになる。
閉じられていた大扉が再び開く。
代表選手たちの入場だ。
大きな拍手が代表選手たちを包み込む。
それと同時にフリットウィック教授が指揮棒を振った。
三拍子のワルツが大広間に流れ出す。
代表選手たちが踊りだす。くるくると、くるくると。
「そろそろ行こうかの、ミネルバ」
代表選手が何ターンか回り終えたのを見てダンブーがミネルバに手を差し伸べた。
ダンブーとミネルバが踊りだしたのを見て他の生徒たちも踊り始める。
『みんな楽しそうね』
「そうだな」
『さて、楽しそうにしていない子はいないかしら?』
壁の花になっちゃっている生徒はいないかしら?
辺りを見渡せばつまらなそうな顔、泣きそうな顔で壁に寄りかかっている女子生徒がポツリ、ポツリ。
私とシリウスは彼女たちの元へと向かったの――――
『セブも行くわよ!』
「……その顔で女言葉を使うな」
私、シリウス、セブはそれぞれダンスを申し込みに女子生徒の元へと向かったのだった。