汚い
ああ、またか。
これで何度目になるだろう。嬉しそうに笑うおじさんの後ろを追いながら、そう思った。
通りで、何時になく機嫌がいいと思った。
「いやあ、すまん。俺も君と離れ離れになるのは寂しいが、ある事情でな」
今までで一番、一緒に居てくれたのがおじさんだった。数少ない間、過ごして来た中で信頼していた大人の人だった。それが今、あの人達と同じ怖い顔をして僕を見ている。
「でも、大丈夫だぞ。また何時でも会いにくるからな」
この顔が意味するものを、僕は良く知っていた。
厄介払い。つまり、僕の押し付け合い。所詮、人の子供なんて生活の邪魔なんだと思う。あんなに優しくしてくれたのに、結局はおじさんも一緒だったんだ。
嘘つき。
「新しい場所でも元気で居るんだぞ」
裏切られるのは分かっていた。
いつものことなのに、涙が出てきて止まらなくなった。
大人なんて大嫌いだ。
「迎えが来るまでご飯にしよう。好きな物を頼んでいいぞ」
おじさんに連れらて、やって来たご飯屋さん。僕と過ごす最後の日だからといって、おじさんは好きな物を頼んでいいといった。いつもなら嬉しいのに、今日はちっとも嬉しくない。
「じゃあ、オムライス」
「蛍はオムライスが本当に好きだなぁ。……すみませーん!」
「お待たせ致しました」
お店の人に注文してしばらくして、オムライスが目の前にやってきた。とても美味しそうなのに、いざ食べようと思っても食欲がわかない。
「っ」
無理に口に入れても喉を通らない。
大好きなはずなのに、どうして。
それでも、おじさんが見ているから無理にでも口に運ぶ。
「美味しいか?」
「うん」
嘘だ。美味しくないし、気持ち悪い。今すぐにでも吐き出したい。