似たもの同士




「学校はどうしたい?」

 ご飯を食べ終えた滋さんが食後にお茶を飲みながら、ふと口にした。何気ない一言だったが、蛍の方からカタンと音がして、俺は思わず隣を見る。
 手にしていたスプーンは転がり落ち、蛍の瞳が何かに怯えたように震えていた。ただでさえ青白い肌が蒼褪めてしまっている。何も言い出せないまま戸惑いを感じていると、席を飛び降り蛍は二階へ駆け上がって行った。

「すみません。俺、追い掛けてきます!」



「蛍、どうしたんだ!」

 走った勢いのまま俺達の部屋のドアを開き、蛍を呼ぶ。ただでさえ不安定な状態の蛍を一人にしてはいけない。俺はまだ、蛍のことを全く知らなかった。心のどこかで、分かったような気でいた。
 
 だけど、全然違うじゃないか。
 それは俺じゃなくても良い。それでも、蛍が心から思いを打ち明けられる一人になりたいと願ってしまう。


「っ、と」

 開いたドアから、勢い良く何かが飛び出してきた。反射的に腕の中で受け止めたそれは、先生だった。
 こんなことをしている場合じゃないのに、一向に降りない先生。

「先生、降りてくれ。俺は今――」
「放っておけ」

 そんなこと言われても、簡単に引き下がれるはずがない。無理やり先生を床に降ろそうとしたら、肉球で頬を強く叩かれた。

「馬鹿者。お前が行ったところで、状況は何も変わらない」



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