似たもの同士
「貴志君ー!蛍君ー!」
二人のじゃれ合う姿を眺めながら思い耽けていると、俺達の名前を呼ぶ塔子さんの声が部屋に響く。
「もうすぐでご飯が出来上がるから、そろそろ降りてらっしゃい!」
「はーい、今降ります!」
負けじと、一階へ聞こえるような声で返事を返す。急に、先生と蛍の楽し気な声が消えて、不思議に思って隣を見ると、蛍がぎょっとした顔で俺を見ていた。
ああ、驚いたのか。
瞳孔が開いたその瞳を見て、何となく察した。
「じゃあ、行くか」
今度はしっかりと目を見て、そして―――名を呼ぶ。
「蛍」
「……うん」
そう呼ぶと、今度は返事を返してくれた。
たった一言ではあるけれど、控え目に応えてくれたことにも、蛍、とその名前を口に出来ることが、何よりも嬉しかった。
「ん」
「……どうしたんだ?」
部屋から出ようとしたら、蛍の何かを促すような声が聞こえて振り返る。そこには、先生を前に膝を付いて両手を広げる蛍の姿があって、理解した。
「っ、ああ、そうだな。先生も一緒だ」
「
結局、何か文句を言いながら小さな腕の中で大人しくなっている先生を見て、暫く笑いが収まらなかった。