汚い
「ここが俺達の部屋だ。布団がまだ一つしかないから、暫くは一緒に寝ることになるだろうけど」
やたらと喋りかけて来る男だと思った。
何を考えているのか、まったく想像がつかない。無視しているのに、いっこうに喋るのを止める様子が無い。今まで、中学生や高校生の人達は、僕をいないものとして扱っていたのに。
「何か分からないことがあったら、何時でも聞いてくれ」
お人好しなのか、いっしょうけんめい話し掛けて来る。
少しバツが悪くなって、僕は邪魔にならないように壁の隅っこに座って、コイツから目線を背ける。
「隣、座るぞ」
そんなこと聞かなくとも、座ればいいのに。だって、ここはコイツの部屋なんだ。返事を返すことなく、そう思った。すると、男はわざわざ僕の隣に座った。
「……なんで」
口にしてから慌てて口を閉じたが、生憎コイツは何かを考えているのか、言葉が拾われることは無かった。胸を撫で下ろした僕は、ふと窓から降りて来る何かを目撃する。
アレは―――猫?
まん丸の猫は、僕を見てから座布団の上に座る。
「ねえ」
この家で飼っている猫なのか。だとしたら、少しだけ触ってみたい。そう思って、男を呼んでいるのに、上の空で聞いてくれやしない。
「――ねえ!」
「え?あ、どうしたんだ?」
先程よりも大きな声で呼んだら、やっと反応する。
遅れて反応したコイツは、僕が何かを見ているのに気付くと、暫くして呟いた。
「先生?」