鷲は飛び立ち青き空を舞う



「そうか、そうか!初めまして、ノア。私はダンブルドア校長」


 ダンブルドアと名乗る老人はノアに近づいて、手を差し出す。ノアは躊躇いながらも、その手を取って握手をした。握り返したその指は、長くしなやかで、ペンを握って出来るには不自然な跡があった。
 そこまで考えて、ふいに、ノアは首をかしげる。

「…校長?新しいお医者様ではないのですか?」
「いや、いや。私はホグワーツという学校に勤めていて、君に入学を勧めに来たのだよ」

 ノアが医者か、と聞いたのには理由があった。
 不思議なことに、ノアは生まれて此の方、ずっと身体の免疫が低かった。外を少しの間だけ歩くだけで、呼吸が乱れる。走ることなんてもってのほか。無理をすれば、すぐに寝込んでしまう。
 長期の間、外出を控えているノアは、ただでさえ陶器のように白い皮膚をしているのに、蒼白さを帯びていた。

 そんなノアの疑問に、老人はやんわりと否定する。
 微笑んで老人が言った言葉の中に含まれる『ホグワーツ』と、一切聞いたことも無い学校の名にノアは困惑した表情を浮かべた。


「そんな名前の学校は聞いたことがありません」
「そうだろうとも。ホグワーツは、君のような特別な能力を持った者の為の学校で、魔法学校なのだ」


 特別な力、と繰り返すように呟き、ノアは瞼をぱちくりさせる。この老人は、今何と言った。

 魔法・・学校と、そう言ったのか。

 この老人は、お伽噺でも読み聞かせに来たのだろうか、と疑いたくなる。
 今の時代、魔法のような存在は信じられることが少ない。遥か昔に、魔法を使う魔女が恐れられ、魔女狩りのような惨劇が起きた事を聞いたことがある――、が多くは、所詮絵本の中のお伽噺だ。


 少年と老人の間に、沈黙が訪れた。

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