鷲は飛び立ち青き空を舞う



 毎年行われる、新入生の組分けの儀式。
 ホグワーツ魔法魔術学校の副校長である、マクゴナガルに続いて入場して来る姿は、親鳥を追い掛ける雛鳥のようで微笑ましい。

 グリフィンドール、スリザリン。レイブンクローにハッフルパフ。次々と生徒は寮に組み分けられ、ついに大広間の中心に立っている最後の一人に注目が集まる。

 艶やかで黒く細い髪に、硝子玉のように青い瞳。酷く整った目鼻立ちに、病的なまでに白い肌。その生徒は何処か一点を見つめて、ふわりと笑顔を浮かべていた。
 淡く色付いた頬が肌に相俟って、その少年は儚げな雰囲気を漂わせている。


「ノア・レイブンクロー」


 少年の名が呼ばれるのを、まだかまだかと固唾を呑んでいると、耳に届いた姓に辺りは静まり返ってしまった。

 ―――レイブンクロー。
 その名は、かつてホグワーツ魔法魔術学校を創設した四人の一人、ロウェナ・レイブンクローの姓である。その姓を名乗ることが出来るのは、純粋な血を引く者だけに許された唯一の権利。

 次第に騒めきが大きくなり、波紋が広がった。

 しかし、少年が座に着いた途端、先程の騒めきは嘘かのように収まった。教師を含め、あらゆる生徒が少年の組み分けに注目しているのだ。

 願わくば、自身の寮へと願いながら。

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