鷲は飛び立ち青き空を舞う
大広間に入るなり早々、何千という蝋燭が空中に浮かび、四つのテーブルを照らし出す幻想的な光景にノアは目を奪われた。
キョロキョロと首を動かしながら天井を見上げると、本当にそこにあるかのように星が輝く夜空があって、口を開いてしまう。
「名前を呼ばれたら帽子を被って椅子に座り、組分けを受けてください」
先程の女性が四本足の椅子の上に、つぎはぎだらけの帽子を置いたのが見えて、ノアは慌てて視線を戻して前を見る。
「シリル・アンヴィル!」
最初に名を呼ばれた茶髪の女子生徒が、走るように前に進み出る。椅子に腰掛けると、被せられた帽子は目が隠れるほどになっていた。
一瞬の沈黙の後、帽子が叫ぶ。
「ハッフルパフ!」
それから次々と生徒の名が呼ばれ、遂にジョージの名が呼ばれた。振り返ったジョージは緊張の欠片も見せず、ニヤリとノアに笑い掛けてから前に堂々と進んで椅子に座る。
帽子はジョージの頭に触れた途端、「グリフィンドール!」と叫び出した。
続けて帽子は、フレッドの名前を呼ぶ。
「お先にノア。グリフィンドールで待ってるぜ」
「うん」
ノアの背中を優しく叩くと、フレッドは前に進み椅子に座った。そして、フレッドはジョージと同じく、グリフィンドールに組み分けされた。
これで、周りに知っている生徒はいなくなった。
一人。また一人と居なくなる中、心臓の鼓動が鳴り響く音が身体中を支配する。
そんな時、不意に名前を呼ばれた気がしてグリフィンドールの席を見ると、ジョージとフレッドが大きく手を振っていた。その隣で二人のお兄さんが慌てている姿が見えて、思わず可笑しくて笑いが零れた。
「―――ノア・レイブンクロー」
大広間の中心に立っているのはただ一人。そして、遂にノアの名前が呼ばれた。