夢小説 短編
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初夏
日陰に居るはずなのに、太陽にじりじりと肌を焼かれているように感じる。肌に張り付く髪が気になってしょうがない。そろそろ夏が始まる。
「あづーい」
「そろそろ夏だからな」
「あいす...アイス...アイス食べたい...」
「さっき食べただろ、それに一気に食べたら腹壊すぞ」
「そうだけど、トランクスは暑くないの?」
「そりゃあ暑いよ」
「じゃあアイス食べようよ!」
「ダメだ」
「ケチ」
「お前も悟天も遠慮がないよな」
「今更遠慮する仲じゃないもん、ってそういえば悟天ちゃんは今日誘ってないの?」
「あー、あいつ今日デートだって」
「デート...あれ、この前女の子に振られたって言ってたような」
「また新しいカノジョでも出来たんだろ」
「そっか。むー、あのころの可愛い悟天ちゃんはどこにいったんだろう」
「はは...」
彼の首筋からも汗が伝って首筋へ流れていく。なるべく暑さを気にしないように振舞っていたが、無意味なようで。このままではアスファルトの熱で逆上せてしまう。室内へ戻ろうと考えていたところに、ふと別の案が思い浮かんできた。そういえば.....
「ソラ」
「んー?」
「ドライブとか、興味ある?」
「ドライブ?」
そう言われて、トランクスは胸元のポケットからホイポイカプセルを取り出した。地面にポンと投げると、煙と共にそれは姿を現す。
「じゃーん!!」
「乗り物?」
「おじいちゃんから貰った最新型のエアバイク。旧型のやつなんか比べ物にならないくらい速く飛べるんだぜ」
持ち主をイメージさせる真っ青なエアバイク。新品なのだろう。太陽の光を浴びてCCのロゴがピカピカと輝いている。
「もしかして誕生日プレゼント?」
「ああ、自分で飛んだ方が速いけど、バイクで飛ぶのも楽しいんだ」
「ふぅん」
「今日は特別にお前の事乗せてやるよ」
「え、これに私も乗るの?」
「なんだよ嫌なのか」
「ううん、嫌じゃないよ」
「じゃあ決まりだな」
先にトランクスが乗ると、続けて自分は後ろに乗ってきた。2人乗りを提案したのは自分だったが、緊張でハンドルを握る手から汗が出てくる。エンジンがかかるとふわふわと浮き始め、ソラが遠慮がちに背中に腕を回してきた。後ろに感じる彼女の熱を気にしないように、トランクスはハンドルを握り直しバイクを思いっきり発進させた。
「涼しくて気持ちいい〜」
「だろ」
それは道路に沿って只只走る、目的地のないドライブだった。右手には一面海。心地の良い風。ほのかに潮の匂い。波の音。身も心も涼しくなりソラは大満足だった。
「トランクス、乗せてくれてありがとう」
「お前も気に入ったみたいだな」
「うん!」
運転している彼の声音も先程よりずっと明るかった。楽しんでいるのが自分だけじゃないのだと感じ、さらに嬉しくなる。
「これ、悟天ちゃんも好きそうだね」
「あー、かもな」
「まだ乗せたことないの?」
「そう簡単に乗せるもんか」
「でも私の事は乗せてくれたじゃん」
「お前は良いんだよ。お、お、まえ、は特別だから.....」
「特別ってどういうこと?」
「......まだ教えない」
「えー、今教えてくれてもいいじゃん」
「ヤダ」
「トランクスの意地悪......ってわっ!?」
いきなりエアバイクが加速し、ぐいんと後ろに引っ張られる。目の前の彼は照れ隠しなのか走行するスピードをぐんぐん上げていく。
「ほら、ちゃんと掴まってないと落ちるぞ」
「っ分かってるよ!」
「もっと飛ばすぜ」
落ちないように、落とされないようにぎゅっとトランクスの背中にしがみついた。
(あれ・・・)
しがみついていた背中をじっと見つめる。彼の背中はこんなに広かっただろうか。子供の頃から筋肉質だったが、あの頃よりずっと逞しい背中だった。
ふわり。
汗と、制汗剤と、少し角張ったような彼自身の匂いが鼻を掠める。自分の知っているトランクスではない、惹き付けられるような異性の匂い。ソラはそれに目をぱちくりさせた。途端、どくどくと心臓の鼓動が早くなる。身体が熱を持ち始める。その熱はくっついている所から彼にも伝わり、さらに匂いが濃くなっていく。何故か恥ずかしい気持ちで胸がいっぱいになった。
「ねぇ」
「なに」
「トランクス、いくつになった?」
「はぁ?お前俺の誕生パーティ参加したくせに覚えてないのか」
「へへ、ごめん」
「15、じゅうごだよ!!」
15歳
自分より歳下のはずなのに。
「自分から聞いといて無視すんなよ」
「あっ、ごめん」
「それがどうかした?」
背中からこもった声が響く。
「なんか、大きくなったなって」
「他には」
「え?」
彼の背中がさらに熱を帯びる。
「それだけ?他に思う事はないの?」
「えっと...」
ほら、またこの匂い。
「まぁ無いなら別に___」
どうしてこんなに・・・
「ドキドキした、かも」
心臓が痛くなるのかな。
「なーんちゃって...」
すーっと会話が途切れた。
「ちょっとなんか喋ってよ」
「......」
「あれ、私変な事言ってないよね」
「.....」
背中に埋めていた顔を上げ、黙り込んでしまった彼を後ろから覗き込む。
「おーい、トランクスってば」
「......ぉ」
「お?」
「お前、いつか覚えてろよ!!」
「っわぁ!?」
バイクが一気に加速した。涼しさが冷たさに変わる。今まで心地よかった風に、ばしばし顔を叩かれ思わず目を瞑った。
「スピー、ド、だし、すぎ〜!!」
「落とされるなよ」
離れないように必死にしがみついた彼の背中から、
あの匂いはもうしなかった。
再放送のドラマの自転車二人乗りを見て思いつきました。
永遠の憧れ。
日陰に居るはずなのに、太陽にじりじりと肌を焼かれているように感じる。肌に張り付く髪が気になってしょうがない。そろそろ夏が始まる。
「あづーい」
「そろそろ夏だからな」
「あいす...アイス...アイス食べたい...」
「さっき食べただろ、それに一気に食べたら腹壊すぞ」
「そうだけど、トランクスは暑くないの?」
「そりゃあ暑いよ」
「じゃあアイス食べようよ!」
「ダメだ」
「ケチ」
「お前も悟天も遠慮がないよな」
「今更遠慮する仲じゃないもん、ってそういえば悟天ちゃんは今日誘ってないの?」
「あー、あいつ今日デートだって」
「デート...あれ、この前女の子に振られたって言ってたような」
「また新しいカノジョでも出来たんだろ」
「そっか。むー、あのころの可愛い悟天ちゃんはどこにいったんだろう」
「はは...」
彼の首筋からも汗が伝って首筋へ流れていく。なるべく暑さを気にしないように振舞っていたが、無意味なようで。このままではアスファルトの熱で逆上せてしまう。室内へ戻ろうと考えていたところに、ふと別の案が思い浮かんできた。そういえば.....
「ソラ」
「んー?」
「ドライブとか、興味ある?」
「ドライブ?」
そう言われて、トランクスは胸元のポケットからホイポイカプセルを取り出した。地面にポンと投げると、煙と共にそれは姿を現す。
「じゃーん!!」
「乗り物?」
「おじいちゃんから貰った最新型のエアバイク。旧型のやつなんか比べ物にならないくらい速く飛べるんだぜ」
持ち主をイメージさせる真っ青なエアバイク。新品なのだろう。太陽の光を浴びてCCのロゴがピカピカと輝いている。
「もしかして誕生日プレゼント?」
「ああ、自分で飛んだ方が速いけど、バイクで飛ぶのも楽しいんだ」
「ふぅん」
「今日は特別にお前の事乗せてやるよ」
「え、これに私も乗るの?」
「なんだよ嫌なのか」
「ううん、嫌じゃないよ」
「じゃあ決まりだな」
先にトランクスが乗ると、続けて自分は後ろに乗ってきた。2人乗りを提案したのは自分だったが、緊張でハンドルを握る手から汗が出てくる。エンジンがかかるとふわふわと浮き始め、ソラが遠慮がちに背中に腕を回してきた。後ろに感じる彼女の熱を気にしないように、トランクスはハンドルを握り直しバイクを思いっきり発進させた。
「涼しくて気持ちいい〜」
「だろ」
それは道路に沿って只只走る、目的地のないドライブだった。右手には一面海。心地の良い風。ほのかに潮の匂い。波の音。身も心も涼しくなりソラは大満足だった。
「トランクス、乗せてくれてありがとう」
「お前も気に入ったみたいだな」
「うん!」
運転している彼の声音も先程よりずっと明るかった。楽しんでいるのが自分だけじゃないのだと感じ、さらに嬉しくなる。
「これ、悟天ちゃんも好きそうだね」
「あー、かもな」
「まだ乗せたことないの?」
「そう簡単に乗せるもんか」
「でも私の事は乗せてくれたじゃん」
「お前は良いんだよ。お、お、まえ、は特別だから.....」
「特別ってどういうこと?」
「......まだ教えない」
「えー、今教えてくれてもいいじゃん」
「ヤダ」
「トランクスの意地悪......ってわっ!?」
いきなりエアバイクが加速し、ぐいんと後ろに引っ張られる。目の前の彼は照れ隠しなのか走行するスピードをぐんぐん上げていく。
「ほら、ちゃんと掴まってないと落ちるぞ」
「っ分かってるよ!」
「もっと飛ばすぜ」
落ちないように、落とされないようにぎゅっとトランクスの背中にしがみついた。
(あれ・・・)
しがみついていた背中をじっと見つめる。彼の背中はこんなに広かっただろうか。子供の頃から筋肉質だったが、あの頃よりずっと逞しい背中だった。
ふわり。
汗と、制汗剤と、少し角張ったような彼自身の匂いが鼻を掠める。自分の知っているトランクスではない、惹き付けられるような異性の匂い。ソラはそれに目をぱちくりさせた。途端、どくどくと心臓の鼓動が早くなる。身体が熱を持ち始める。その熱はくっついている所から彼にも伝わり、さらに匂いが濃くなっていく。何故か恥ずかしい気持ちで胸がいっぱいになった。
「ねぇ」
「なに」
「トランクス、いくつになった?」
「はぁ?お前俺の誕生パーティ参加したくせに覚えてないのか」
「へへ、ごめん」
「15、じゅうごだよ!!」
15歳
自分より歳下のはずなのに。
「自分から聞いといて無視すんなよ」
「あっ、ごめん」
「それがどうかした?」
背中からこもった声が響く。
「なんか、大きくなったなって」
「他には」
「え?」
彼の背中がさらに熱を帯びる。
「それだけ?他に思う事はないの?」
「えっと...」
ほら、またこの匂い。
「まぁ無いなら別に___」
どうしてこんなに・・・
「ドキドキした、かも」
心臓が痛くなるのかな。
「なーんちゃって...」
すーっと会話が途切れた。
「ちょっとなんか喋ってよ」
「......」
「あれ、私変な事言ってないよね」
「.....」
背中に埋めていた顔を上げ、黙り込んでしまった彼を後ろから覗き込む。
「おーい、トランクスってば」
「......ぉ」
「お?」
「お前、いつか覚えてろよ!!」
「っわぁ!?」
バイクが一気に加速した。涼しさが冷たさに変わる。今まで心地よかった風に、ばしばし顔を叩かれ思わず目を瞑った。
「スピー、ド、だし、すぎ〜!!」
「落とされるなよ」
離れないように必死にしがみついた彼の背中から、
あの匂いはもうしなかった。
再放送のドラマの自転車二人乗りを見て思いつきました。
永遠の憧れ。