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星を宿すこと

「ここは……」

 山のふもとで、あの彼女はちょっとした有名人になっていた。
 突如として現れた記憶喪失の女の子。
 テレビに映る彼女の左腕にはもう、熊の顔の形をした痣はなかった。代わりに、俺の腕にはくっきりと痣が浮かんでいる。

「あの石を失うと、記憶までなくなるんですか?」
「いや、記憶がなくなってるのは別件でだよ。とりあえず、君は私たちの敵にならない方が身のためだし、まあきっとそんな愚劣な発想はないと信じているよ」

 その淡々とした学長の言葉と、その学長の横で眉毛ひとつぴくりともしない秘書の方の態度に背筋がひやりとした。

 俺はここで学生として、そして”お星さま”として、さらなる精進を求められている。
 どこまで信頼していいのかは、わからないけれど、少なくともここで俺は努力に見合った評価と対価を得ることが出来そうなので、それだけは安心している。

 なんかのオカルト雑誌の見出しで見かけた程度だった”星への集い”……うまく、利用してやればいいさと、軽く見ている部分がなかったと言えば嘘になってしまうが。
 妹が元気なら、今はただそれでいいと思ったのだ。
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