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星を宿すこと

「学長、お呼びですか?」

 彼女はとても優秀な人材だと思っていた。
 ただ”お星さま”であるだけではなく、大学からここに入って彼に対する当たりもとても柔らかなものであったから。

「あれ?あなたも呼ばれたの?」

 私の隣に立つ彼の姿に、彼女は目を丸くした。
 一瞬見えた動揺が、すっと波が引くように落ちつけられた。
 その表情をみて確信をする。ああ、確かに彼女は学生ではない。”プロ”の目をしている。侵入者だ。

「ひとつ確認したいことがあって、あなたは、こちら側の人間にはなる気はないのでしょう?」
「こちら側?どういう意味でしょうか?」
「”星への集い”の一員として、やっていく気はないんでしょう」

 彼女の目に、ようやく動揺が見えた。

「私は結構特殊でね、本当は”お星さま”ではないんだよ、他の人たちのように星を口にしたことはない。私は”優しい光”にただ生かされているだけ、死ぬことが出来ないだけ。そしてここは、ただひとつの記憶にも生きることが出来る場所。奪わせたりなんかしない」

 私は彼女の腹部めがけて左腕を刺し入れた。
 少し呻き声が聞こえたのちに、彼女はその場に倒れこんだ。

「さあ、君にはこれをあげるよ」

 さっきまでなかったはずのそれに、彼はただ驚いていた。
 私の手の中には、ピンポン玉ほどの石ころのようなものがあった。
 彼は恐る恐る手を伸ばす。

「本当は、秘書の彼女が順番的には先だったんだけどね。今回は君の功績とこれからの活躍の期待も籠めて、あの彼女から君にという申し出があったんだ。とりあえず飲み込んでくれ」
「えっ……」
「そういう話だったろう」

 私が念を押すように言うと、彼は嫌そうな顔をしながらも飲み込んだ。
 飲み込み終えると、彼の左腕にはちゃんと熊の顔の形をした痣が浮かび上がっていた。
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