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そして熊はゆく。

 ここはどこだろう。そんなことを思いながら、ボクは何にも感じることのないこの闇の中で、ただ右足を前にやり、次に左足を前にやるということを繰り返した。
 次第に思考回路が明確になっていくのを感じた。同時に、どうしてボクがここにいるのか考えを巡らすようになってきた。
 思い出そうとすると頭が割れんばかりに痛んだ。きっとなんらかの防御反応か何かなのだろう。ボクはそれ以上無理に思い出すのはやめた。
 少なくとも今は。
 いずれは思い出さねばならない予感がしていたけれど、これほどの拒否反応があるのだ。それは今ではないのだろう。
 進んでいくと真っ暗闇だったそこに少しずつ光が見えてきた。光が見えてくるとその光によって今ボクが立っている場所の輪郭というのもはっきりとしてきた。
 あらわになっていったのはなんともつまらない光景だった。
 そこには何もない荒野が広がっていたのだ。
 ただボクが知っているはずの荒野は、日中は強い日差しに照らされてひどく暑くなり、夜になるとその遮るものがないそこはひどく冷えるというそんなイメージであった。
 けれども今ボクが実際に歩いているのはぼうっとした光に照らされているだけの荒野で、暑いも寒いもなく、ただぼうっとした景色の中の荒野を認識するだけであった。
 ボクはただ、とぼとぼと歩いているだけで本当に何もないのだなと感じた。
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