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星と命と限りあるもの

 私に”魔法”が発現してからというものの、私のからだは時間を忘れたように成長することも老いることもなかった。
 不気味なまでに若いままで、年老いた両親を看取った。同い年の子どもたちだったはずなのに、彼らには子どもどころか孫までいて、ある子にはひ孫までいるという話を聞いた。もちろん独り身という子もいるにはいたのだけれど、それは年老いた者の一人暮らしであって、傍目で見ていても何ら不自然なところはなかった。
 私は自身に何が起きているのかを何となくではあったが、理解しようとしていた。
 それは決して、幼かった私が諦めていた夢とか希望とかを与えてくれる”魔法”ではなく、私を縛り付ける”呪い”のような存在であった。
 老いていく両親は、最期の最後まで私の身を案じていた。気にかけていてくれていた。
 からだの自由が利く間は、住む場所をあえて転々としてくれた。この不自然に成長も老いることもない我が子を、世間の目から隠すようにひっそりと生きてきた。
 今となっては、その全てが私のためであったという確信はないけれども、それでも私一人残して死んでいくことをひどく不安に思っていてくれていたのは確かであった。それくらいは純粋に親の愛情だと感じていいとは思うのだ。
 私は両親が亡くなったあとも、一人でひっそりと生きることに努めた。
 そんなある日、とある週刊誌の見出しが目に入ったことがった。

ーー”星への集い”、また”落とし子”盗難に関与かーー

 普段はそんな週刊誌なんて気にはしなかったけれど、この”落とし子”には少し興味があった。
 あの、突如として流星群が降り注いだ日、思わず伸ばした両の掌には、ピンポン玉サイズの黒い物体があった。流れ星を「塵粒」と知っていた私には、それはあまりにも不可思議な存在であった。
 それでも子どもながらに貴重な存在であると感じてはいた。
 それから一週間ほど経過したころだったろうか、まだ世間が局所的な流星群の目撃情報を面白おかしく取り上げていたころ私の心臓はひどい発作を起こしたのだ。
 よりにもよってこんなときに両親が急用で家を出ていたために、幼い私は一人で死を覚悟したのだ。
 私は苦しみもがきながら、発作用の薬に手を伸ばした。
 でも伸ばした先にあったのは、あの黒い物体だった。
 もうどうにでもなれと、半ばやけにでもなった幼い私は、薬の代わりにそれを一飲みにしてしまったのだ。
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