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隙間から熊。

 あの日の流星群に、正しい名前がつくことはない。
 偉くて高名な天文学者たちも、何故急にあれほどまでの流星群が起きたのか説明ができなかった。
 当時のはその謎の流星群の話題で世間は持ちきりとなった。
 しかもその流星群が観測されたのは、僕が住んでいた街を含めたほんの僅かな町村だけであった。
 その上、正確な証拠に欠けていて、行政も、研究機関も、その力を結集して流星群の正体の究明に努めたが、あの一瞬の流星群を見たという、一部の町村に住まう人々の目撃情報くらいしか収穫はなかった。
 そしてその目撃情報には、熊の話は一切なかったのだ。
 あの日の流星群は、未だに多くの謎に包まれた出来事であった。
 僕はあの熊が、流星群に関わっていることに確信をもっていたが、大人の誰しもがこんな話を信じるはずもないと理解していた。なので、これは今でも誰にも話はしていない、秘密の夜の話なのだ。
 何もとれなかったけれど、あの溢れんばかりに流れた星たちを思いながら、僕は苦い珈琲を簡単に飲み干した。
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