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星を繋ぐ

 日々ニュースを賑わしている”星への集い”なるカルト集団は”落とし子”にやたらとご執心のようであった。個人所有だけでなく、大学や研究所で保管されているものから、博物館で展示されているものまで、幅広く”落とし子”が盗まれる事件が頻発していた。
 どのニュースでも”星への集い”の犯行とされているが、その実、彼らがやったという証拠は何もなく、犯人も捕まっていない。ただ、彼らがやたらとあの流星群を神聖視していて、”落とし子”が信仰の対象となっていて、新興宗教団体という謎に包まれたそれが、悪者にするにはちょうど良かったのだろう。
 どのニュース番組も、新聞記事も、何の確証もなく疑わしい疑わしいを連呼していて、”星への集い”がどんな組織かもちゃんと説明することが出来ていなかった。
 ただ漠然と、噂話よりも曖昧で、どちらかと言えば巷に蔓延る都市伝説のような論調であれやこれやと話を盛り合っていた。
 世の中の風当たりが強くなっても”星への集い”がそれを気にしている様子はなく、彼らは彼らの活動を粛々と行っているように感じられた。具体的にどのような活動をしているのかがニュース番組や新聞記事に取り上げられることは無かったけれど、遠巻きに撮影された彼らの本拠地とされる建物の映像や写真には、粛々と生活している彼らの姿が映し出されているだけだった。
 世間は彼らが”落とし子”窃盗の犯人であろうとなかろうと、本当はどうだっていいのだろう。
 疑わしい誰かを、みんなで仲良く疑って、やんややんやと騒ぎ立てるのが好きなんだろう。
 お酒を飲むために桜の下で宴会をするように、お酒を飲むために月を眺めるように、みんな誰かをやり玉にあげて、仲良く騒ぎ立てたいだけなのだろう。
 曖昧であればあるほどいいのだ。彼らにとって”星への集い”という存在が、適当な話で盛り上がれる存在であればいいのだ。
 世の中がそんな風に見えて仕方なかった。
 俺は幸いなことにそんな気持ちの悪い世間からは一歩も二歩も離れたところで生活することができていた。
 そんな悪意から離れて生きてこれた。
 左腕の熊の形をした痣を撫でる。
 これにどのような意味があるのはか、未だにわからなかったが、俺はここに来てよかったと思っている。

「”お星さま”皆が待っております」
「わかった、すぐに向かうよ」

 信仰の対象として、俺が”星への集い”に迎えられてからどれだけの時間が経過しただろうか。
 しわがれた声、しわがれた手、顔、緩やかに落ちていく筋力、俺は他の”お星さま”と比べて、随分と普通であった。それでも本物の痣を持っているというだけで、信仰の対象のひとつとされているのだ。
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