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星を繋ぐ

 あの流星群を観測できたのはごく一部の地域だと、テレビや新聞で取り上げられたのはしばらく経ってからだった。
 天文学の専門家だけではなく、やれUFOだ、やれどこぞの国が秘密裏に開発を進めているミサイルだ、戦闘機だと、玉石混交、陰謀論よろしく胡散臭いもへったくれもないコメンテーターが眉間にしわを寄せてそれらしい表情で意見を投げ合っては、時間が来たと司会者が結論がないという結論を出して終わるのはワイドショーだけではなかった。
 時にお堅そうなニュース番組でさえそんな茶番劇を繰り広げている。真面目で有名なあのアナウンサーが、そんな茶番と真剣に向かい合っている様は出来の悪いコメディーそのものであった。
 あれから俺のからだに何か異変があったのかと言えば、驚くほど何もなかった。熱が出ることも、頭痛がすることも、腹痛も、それどころが激しく打ち付けたはずのからだにはかすり傷のひとつもなかったのだ。
 もしかしたら、全ては夢だったのかもしれないとそんな考えがよぎった反面、1箇所だけ生じたからだの異変が気になって仕方なかった。
 左腕に急に浮かび上がった奇妙な形をした痣、ここはからだを打ち付けたときにぶつけてはいないはずなので、なぜここに痣が浮かび上がったのか心当たりはない。
 ただただ不気味であった。
 だからと言ってあの日の夢か幻のような出来事を誰かに話すことは憚られた。
 あんな突飛な出来事、残念ながらこの不真面目な俺が話したところで友達はおろか親だって信じてはくれないだろう。信じてくれないなら信じてくれないでいいけれど、下手に信じられてモルモットにされるのが最悪のパターンだよな。
 俺は想像する、貧相な想像力で、昔観た映画で囚われた宇宙人の胸部がすっとメスでなぞるように切り開かれて、心臓や肺、胃といった人間と同じ内蔵きれいに見えるようになる。それをひとつずつズルズルと取り出して、薬液が入った透明な瓶におさめていく。最後には頭がが切り開かれて、ひとのものよりひと回りもふた回りも大きな脳みそをごっそりと手で取り上げる、そんな安いつくりの映画だったろうか。
 名前は覚えていない。亡くなった祖父が、そんな安っぽい映画が好きで、よく一緒に観ていただけだったから。
 今となってはその映画の名前を尋ねられる相手もいないので、その映画が本当に存在しているのか、自分の記憶に不安が残る。
 あの晩の出来事だって、今となっては本当に存在していないのかもしれないと、左腕の痣を撫でながら拭いきれない不安は広がった。
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