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星を宿すこと

「ねえ、あなたが”ホシナシ”って本当?」

 同じ学年で、同じゼミの彼女はとてもストレートに訊ねてきた。あまりにもストレートに訊ねてくるもんだから、俺は容易に無視することができずに反射的に「ああ」と言ってしまったのだ。
 そういうと彼女はそれでも信じられないと勝手に袖を捲って俺の左腕を確認した。

「本当にないんだね」
「わかっただろ」

 他の学生の前でそれを確認されたことにより、また風当たりが強くなるのだろうと覚悟した。
 ここで”ホシナシ”というのは、どんなに学業面で成果をあげても格下扱いをされる。
 まあ、教授たちからはそれなりの評価を得ている手ごたえはあるけれど、学生同士となるとそうはいかないのだなと感じている。

「へえ……じゃあ、あなたは自身の力だけで成果をあげてるのね、すごいわ」

 だから彼女の言葉はとても意外で、ありがたく感じられた。
 彼女の左腕には確かに熊の形をした痣があった。

 ”お星さま”なんていう話をあの学長から聞かされたときは正直半信半疑だったけれど、確かにここに通う学生は皆、左腕に熊の形をした独特の痣があった。
 学生だけではなく、教師も、一部の職員にもそういう人が居た。
 ここはそういうところなのだ。
 勉学に励むだけでは、ヒエラルキーの最下層でくすぶっているしかない。だからといってただここで虐げられて生きていくつもりもない。
 そう言い聞かせて、今はそういった力に頼らない力を得ることに全力をそそぐだけだ。
 ここの学生たちは、想像していた以上に勉強はしないものたちばかりだった。だから教授への質問をまともにしているのはほんのごく一部で、力に頼りきりなのは簡単に見て取れた。
 だからこそ俺はその力はなかったけれど、他の部分で確実に必要な人材になることができると確信した。
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