隙間から熊。
少年は不安な気持ちに支配された。
正体不明の何かがこの家には潜んでいる。このまま次にその何かを待っているなんて、とてもじゃないけどそんなことはできないと、少年は自室に駆け込んだ。そして、部屋の一番奥の鍵つきの特別な箱にしまっていたそれを取り出した。
それは少年が誕生日プレゼントに買ってもらったおもちゃの剣だった。おもちゃというには勿体無いほどの細工が施されていて、特に柄に絡むように彫られた龍は今にも動き出しそうなほどである。
少年は剣を片手に家中を見て回ることにした。
まずは自分の部屋を隅々まで確認した。クローゼットに収めてるタンスと壁の隙間も、ぎっしりと本が並んで大人の男性でもひとりでは動かせないような本棚と壁の隙間も、きっと何も隠れる大きさもないであろうおもちゃ箱の裏まで確認をした。
やはり何もない。何もいない。
少年は自分の部屋には何もいないことにほっとして、次の部屋を確認しに行こうと思いドアノブに手をかけた。
ーーカサリッーー
何か音が聞こえた気がした。
あれだけ隙間という隙間を確認したはずなのに、一体どこから音がしたのだろうか。
容易に隠れることができるのに、確認をしていない場所があることに少年は気がついてしまった。
そろりそろりと、少年は息を潜めてその場所に近づいた。ゆっくりと音をたてないように努めて、少年は身を屈めた。
そしてベッドの下を覗きこんだ。
覗きこんだけれど、何もいなかった。
少年はあらためてほっとした。やはり気のせいだったのだと、安心した。
何も潜んではいなかったけれど、代わりにきらりと光るものが見えた。
少年はその光るものに手を伸ばす。でも、かなり奥にあるようで、ちょっとやそっとじゃ届かない。
もっと、もっと奥へとからだごとベッドの下に潜り込ませた。
光るものに指先が触れた。
あと少しだと思ったとき、何かと目があった。目があったかと思うと、ぬるりと大人の男性のような骨太で節くれだった指が少年の手を覆うように触れた。
咄嗟に少年は手を退いた。あまりに焦って手を退いたので、ベッドの裏で肘を強打してしまった。
少年が痺れるような痛みに呻いていると、何かはそのきらりと光るものを摘まんだ。そしてよだれを垂らしただらしのない口にそれを放り込んだ。
ーーゴリッゴリゴリーー
あの嫌な音が少年の耳に響いた。
正体不明の何かがこの家には潜んでいる。このまま次にその何かを待っているなんて、とてもじゃないけどそんなことはできないと、少年は自室に駆け込んだ。そして、部屋の一番奥の鍵つきの特別な箱にしまっていたそれを取り出した。
それは少年が誕生日プレゼントに買ってもらったおもちゃの剣だった。おもちゃというには勿体無いほどの細工が施されていて、特に柄に絡むように彫られた龍は今にも動き出しそうなほどである。
少年は剣を片手に家中を見て回ることにした。
まずは自分の部屋を隅々まで確認した。クローゼットに収めてるタンスと壁の隙間も、ぎっしりと本が並んで大人の男性でもひとりでは動かせないような本棚と壁の隙間も、きっと何も隠れる大きさもないであろうおもちゃ箱の裏まで確認をした。
やはり何もない。何もいない。
少年は自分の部屋には何もいないことにほっとして、次の部屋を確認しに行こうと思いドアノブに手をかけた。
ーーカサリッーー
何か音が聞こえた気がした。
あれだけ隙間という隙間を確認したはずなのに、一体どこから音がしたのだろうか。
容易に隠れることができるのに、確認をしていない場所があることに少年は気がついてしまった。
そろりそろりと、少年は息を潜めてその場所に近づいた。ゆっくりと音をたてないように努めて、少年は身を屈めた。
そしてベッドの下を覗きこんだ。
覗きこんだけれど、何もいなかった。
少年はあらためてほっとした。やはり気のせいだったのだと、安心した。
何も潜んではいなかったけれど、代わりにきらりと光るものが見えた。
少年はその光るものに手を伸ばす。でも、かなり奥にあるようで、ちょっとやそっとじゃ届かない。
もっと、もっと奥へとからだごとベッドの下に潜り込ませた。
光るものに指先が触れた。
あと少しだと思ったとき、何かと目があった。目があったかと思うと、ぬるりと大人の男性のような骨太で節くれだった指が少年の手を覆うように触れた。
咄嗟に少年は手を退いた。あまりに焦って手を退いたので、ベッドの裏で肘を強打してしまった。
少年が痺れるような痛みに呻いていると、何かはそのきらりと光るものを摘まんだ。そしてよだれを垂らしただらしのない口にそれを放り込んだ。
ーーゴリッゴリゴリーー
あの嫌な音が少年の耳に響いた。