そして熊はゆく。
扉を開けるとそこには、さやさやと清流の流れる水音をBGMとした木々に囲まれたところであった。
新緑の葉が光に透けて優しい影をつくっている。
扉を閉めるとさっきまであったはずのあの部屋への入り口はすうさぎっかりとなくなっていて、この森林の中をいくしか道がないことだけは理解したのだった。
川に足をちゃぷちゃぷとつけながら歩いたけれど、冷たいという感覚はなく、ただ水に触れているような気持ちになるだけであった。
実際には何度も足を上げて確かめてみたけれど、不思議なことに濡れている様子はない。それでも水に足を入れて歩けばちゃぷちゃぷと音だけはするのだからやはり不思議でならないのだ。
川沿いにくだっていくと、なだらかなでひらけた川原が見えてきた。
きっと川の流れにより丸くなったのであろう石の上を歩いてみたけれど、確かに石の上を歩いているという感覚だけは残っているのだが土や砂に足が汚れた様子がないのがまた不思議であった。
ふと、川の上にぷかぷかと何かが浮いているのが見えた。
ひとつは布上のもの、もうひとつは人形かなにかだろうか。
再び川の中に足を踏み入れた。そしてぷかぷかと浮かぶそれらの方に近づいていったのだ。
布上のものは、おくるみだった。襟元には可愛らしいイチゴの刺繍があった。
もうひとつのぷかぷかと浮かぶそれに近づいてみると、それはウサギのぬいぐるみであった。白くて、赤いチェックのハンカチが首に巻かれている。そのハンカチの下には金属製のタグが提げられている。
ボクはボクが持ち歩き続けたウサギのぬいぐるみを見た。それはたいそう時間が経過していてぼろぼろではあったけれど、今しがた手にした川に浮かんでいたウサギのぬいぐるみとうり二つだった。
ボクは何が起こっているのか理解しなければならないと感じた。
今まで意図的に避けてきた水面を覗き込んだ。そこには水面に反射して、ボクの姿が映るはずだから。
意を決して覗き込んだとき、そこはまた荒野に景色を変えていたのだった。
新緑の葉が光に透けて優しい影をつくっている。
扉を閉めるとさっきまであったはずのあの部屋への入り口はすうさぎっかりとなくなっていて、この森林の中をいくしか道がないことだけは理解したのだった。
川に足をちゃぷちゃぷとつけながら歩いたけれど、冷たいという感覚はなく、ただ水に触れているような気持ちになるだけであった。
実際には何度も足を上げて確かめてみたけれど、不思議なことに濡れている様子はない。それでも水に足を入れて歩けばちゃぷちゃぷと音だけはするのだからやはり不思議でならないのだ。
川沿いにくだっていくと、なだらかなでひらけた川原が見えてきた。
きっと川の流れにより丸くなったのであろう石の上を歩いてみたけれど、確かに石の上を歩いているという感覚だけは残っているのだが土や砂に足が汚れた様子がないのがまた不思議であった。
ふと、川の上にぷかぷかと何かが浮いているのが見えた。
ひとつは布上のもの、もうひとつは人形かなにかだろうか。
再び川の中に足を踏み入れた。そしてぷかぷかと浮かぶそれらの方に近づいていったのだ。
布上のものは、おくるみだった。襟元には可愛らしいイチゴの刺繍があった。
もうひとつのぷかぷかと浮かぶそれに近づいてみると、それはウサギのぬいぐるみであった。白くて、赤いチェックのハンカチが首に巻かれている。そのハンカチの下には金属製のタグが提げられている。
ボクはボクが持ち歩き続けたウサギのぬいぐるみを見た。それはたいそう時間が経過していてぼろぼろではあったけれど、今しがた手にした川に浮かんでいたウサギのぬいぐるみとうり二つだった。
ボクは何が起こっているのか理解しなければならないと感じた。
今まで意図的に避けてきた水面を覗き込んだ。そこには水面に反射して、ボクの姿が映るはずだから。
意を決して覗き込んだとき、そこはまた荒野に景色を変えていたのだった。