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そして熊はゆく。

 あれ、これは、どうしたのだろうか。ボクはなんで、こんな、ところに、いるだろうか。

 そこは、一言で言えば真っ暗だった。何にも見えない、目を開いているのか、閉じているのか、それさえも曖昧になるほどに真っ暗であった。
 あの子は急に、ぽつんとこんなところに来てしまったものだから、たいそう不安だろう。
 アタクシはあの子のことに気がついたけれど、きっとあの子はアタクシには気がついていないだろう。仮に気がついたとしても、今のアタクシにはあの子と相応の言葉を交わすことはできない。
 あの子は少しずつ、少しずつ、きっとあてもなく歩いているに違いない。
 アタクシも同じように、さ迷い歩いたものだと振り返る。
 大丈夫、大丈夫ですよ。何も迷うことなく真っ直ぐに進めばいいのです。この記憶はまたすぐに失われてしまう。それほどに大切なものではないのです。
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