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隙間から熊。

 それは突如として現れた。
 ぬるっと長い指が伸びている。人差し指と、中指と、親指の3本だけをそっと使って、小指はぴんと立てて、きらりと光るそれを摘まんだ。
 摘まんだそれを、奥へ奥へと引き込んだかと思えば、ごりごりっと、何かをすり潰すような……いや違う、かみ砕くような音が聞こえた。ちょうど氷を頬張って、ごりごりとかみ砕いたようなそれと同じ音がした。
 そのかみ砕くような音が消えた。
 あれは一体何だったのだろうかと、不思議にも感じ、気味の悪さも感じた。
 僕はその指がぬるっと出てきたそこを覗いた。
 覗いたけれども、何もなかった。
 あるのは壁とキャビネットの狭い隙間に、それなりの時間を経て積もり積もった埃たちだけであった。
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