『………は？……なにこれ』


そう床を見ながら呟いたのは、綺麗な水色の髪に青い瞳をもった一人の女性

名前は海堂ソラ

現在進行形でソラの目の前、つまりは自室を出た扉の先に、大きな穴があった


『……誰かの悪戯か？』


ここは暁のアジト

Ｓ級犯罪者と呼ばれる者達が集う場所

……とはよく言ったもので、実の所随分と……まあ…個性豊かな面々が揃う集団で

その中にソラはいた


「ソラちゃーん！任務だよー！って何これ！？」


意気揚々と片手を挙げてこちらへ来た、オレンジ髪に顔面ピアスだらけの男

床にある大穴に驚きの声を上げるその男─ペインに、ソラは淡々と言った


『ちゃん付けで呼ぶなっての……知らん、朝起きたらあった』

「朝って言っても、もう昼なんだけど……」

『何か言ったか？』

「ごめんなさい」


文句でもあるのかと言う様なソラの問いに、即座に謝るペイン

暁のリーダーであるペインだが、割と尻に敷かれる事の方が多い

不憫というか何というか……真面目にやる時はやる男なんだがな

まあそんな事、今はどうでもいいが

気を取り直して、ペインは床にポッカリ空いている大穴を覗きながら言った


「………これ、中どうなってんだろう……」


つられてソラも大穴を見る

中を覗いてみても、真っ暗で何も見えない

只々何も無い暗闇が、そこには広がっていた

そんな中、凄まじい足音と共に誰かの大声が響き渡った


「旦那ァー！オイラの団子返せー！！うん！！」

「うっせぇ！！コレは俺のだ！！」

「何言ってんだよ！オイラの手からそれ取ったじゃねぇか！！うん！！」

「俺の物は俺のもの、お前の物も俺のものだ」

「何でジャイ○ン思考なんだよ！！返せー！！うん！！」


黄色い長髪に丁髷を揺らしながら全速力で走っている男、デイダラ

その先を走るのは、赤い短髪に幼い顔立ちの男、サソリ

サソリの手には串団子があり、どうやらデイダラはそれを取り返そうと奮闘しているようだ

そんな馬鹿げた事で騒いでいるが、これもいつものこと

Ｓ級犯罪者の面影なんか微塵も無いやり取りなんて日常茶飯事で、威厳もへったくれも無い

まあ、ただ堅苦しいだけの集団よりかは、幾分かマシだが

そういった事もあり、デイダラとサソリのやり取りを気にする事もなく大穴の謎の解明を優先した

それが、いけなかった