私は、お前の為だったら
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ハーゴンに連れ去られたシドーを救う為、私は黒い渦の中に飛び込んだ
行き着いた先は、全く見覚えの無い、何とも禍々しい島だった
いや、島と言っていいのかすら分からない
下を覗けば、そこにはからっぽ島の様な青い海は全く無く、真っ暗な闇が広がっているばかり
もしかしたらここは、一つの天体の様な場所なのかもしれない
そんな事を頭の片隅で思いつつ、とにかくシドーを探そうと、私は歩き出した
それからというものの、着いて早々メタッツというメタルスライムに出会ったり、様々な魔物達と共に行動するという、“向こう”では考えられない様な状況に陥っている
まあ正直、私は魔物に対して悪いイメージを持っている訳ではない
ハーゴンに対しては、よくもシドーを連れ去りやがったなと怒りの感情が湧いてくるが、魔物全員が悪い奴だという風に思った事は、今まで一度もなかった
現にここで出会ったメタッツは、ビルダーである私を毛嫌いする事もなく接してくれるし、グリムンやキラーG、そして道中で“あの腕”にやられてしまったキッシムも、何だかんだ言いつつみんな優しく思いやりのある奴らだ
そう考えると、やっぱり魔物も人間も、大して変わらないんだよな
そんな事を思いながら、私は今、キッシムが安全だと言っていた“ハーゴン教会”という場所へと訪れていた
早くシドーを探し出したかった私は、一緒に行こうと言うメタッツ達の誘いを一度断った
だが“教会に居るジゴック様は三神官の一人で色んな事に詳しく、ひょっとしたらオマエのトモダチってヤツの事も知ってるかもしれない”とグリムンに力説された
挙句にはメタッツに“ここでお別れなんて嫌だよ”と言われてしまい、そこまで言ってくれて断る訳にもいかないかと、渋々了承した
それはそうと、何故、安全な場所へ行かなければならないのか
それは、さっきも言った“あの腕”というものと関係がある
何の前触れも無く突然空間が歪み、そこから巨大な龍の様な腕が現れては、辺りの物を尽く破壊していくのだ
山や大地は勿論、魔物でさえ切り裂く様に破壊していく様は、まさに魔物達が言っていた“破壊神”そのもので
あんなものをまともに喰らったら一溜りも無いと、一時的に避難していた研究所を後にし、ハーゴン教会へと移動したという訳だ
そこにいたジゴックさんという魔物を見て、不意にマギールさんの姿が頭を過ったが、ジゴックさんはビルダーである私を“破壊神様の敵”だと言って目の敵にしている
こういう反応をされるのも最早慣れてしまったというのもあるが、そんな事よりシドーの事で頭がいっぱいだった私は、粛清してやると憤るジゴックさんの言葉を右から左へ受け流していた
だがハーゴン教会にやって来たはいいものの、この教会もあの腕にやられてしまったのか随分とボロボロになっていて、最早教会と言われなければ分からない様な状態になっていた
こんな場所が本当に安全なのかとも思えたが、それよりもジゴックさんの“破壊こそが救済。遂に我らが待ちに待った滅びの日が来た”という言葉が耳に残った
唐突に現れては、次々と物を破壊していくあの腕
きっとあれが、シドーの腕なんだろう
未だ何処にいるかも分からないシドーの腕が、私達を容赦無く襲ってくる
それでも私はどこか、不謹慎にも安堵している部分があった
ああ、シドーはまだ、生きているんだと
シドーが破壊の神だの何だの、私には関係無い
ただ今は、早く、シドーに会いたかった
すっかり意気消沈してしまったグリムンや黙ったままのキラーGを他所に、メタッツは私に向けて“周りに何かないか探してみよう”と提案した
このまま何もしないつもりは無かった私は、その言葉に一つ頷いてから教会の周りを見て回った
すると、教会の後方に作業台らしき物を見付けた
よかった、これで物を作れる
これで、シドーを助ける事が出来る
そう思った私は、足早にその作業台に近付いた
そして、気付いた
「あ!これは何?なんだか薄汚い台だけど……」
その作業台に、ひっそりと立て掛けてあるもの
「その不思議な台は、ずっとこの地にあった物だ。破壊神様が現れた時、真っ先に壊されるかと思ったが……」
それは、とても、見覚えのある
「破壊神様の腕は何かに迷い、壊すのを止められたようだった……私の勘違いかもしれぬがな」
一本の、棍棒だった
『………あ……』
《この棍棒、素材から作ったって訳だ。オマエなかなかやるじゃないか!》
《……ありがとな、ビルダー見習い。この棍棒気に入ったぜ!》
『……ああ………』
《お?新しい武器を作ってくれたのか?ハッハッハ!悪くない!》
《だがオマエが最初にくれたこの棍棒は、このまま貰っておくぜ》
《オレはコイツが気に入ってるんだ。オマエが初めて作ってくれた武器だしな!》
シドーとの思い出が、次々と脳内を駆け巡る
私はフラフラとした足取りで棍棒に近付き、その場にヘタリと座り込んだ
そして恐る恐る棍棒へと手を伸ばし、そっと手に取る
それは紛れも無く、私が初めてシドーに作ってあげた棍棒だった
「ど、どうしたのソラ!お腹でも痛いの!?」
力強く棍棒を抱き締めながら蹲る私に、メタッツは慌てて近付き顔を覗き込んだ
そしてはたと動きを止めた後、少し小さめの声で言った
「………もしかして…泣いてるの?」
まるでメタッツの問いに答えるかの様に、溢れ出る涙が私の頬を伝っては地面を濡らしていく
ああ、お前は破壊神になっても尚
“私の作った物”は、壊さなかったのか
“私との思い出”は、壊さないでいてくれたのか
『………ッ…!!』
こんなに嬉しい事が他にあるか
こんなに胸がいっぱいになる事が他にあるか
シドー、お前は、まだ
私の事を、想ってくれているんだな
声を押し殺して涙を流しながら、私は改めて揺るぎない決意を固めた
……なあ、シドー
私は確かに力も無ぇし、戦い方だって全然なってない、弱いビルダーかもしれない
だけど、それでも一つだけ、自信を持って言える事があるんだ
私は、お前の為だったら
end
(誰にだって、勝てるんだと)
行き着いた先は、全く見覚えの無い、何とも禍々しい島だった
いや、島と言っていいのかすら分からない
下を覗けば、そこにはからっぽ島の様な青い海は全く無く、真っ暗な闇が広がっているばかり
もしかしたらここは、一つの天体の様な場所なのかもしれない
そんな事を頭の片隅で思いつつ、とにかくシドーを探そうと、私は歩き出した
それからというものの、着いて早々メタッツというメタルスライムに出会ったり、様々な魔物達と共に行動するという、“向こう”では考えられない様な状況に陥っている
まあ正直、私は魔物に対して悪いイメージを持っている訳ではない
ハーゴンに対しては、よくもシドーを連れ去りやがったなと怒りの感情が湧いてくるが、魔物全員が悪い奴だという風に思った事は、今まで一度もなかった
現にここで出会ったメタッツは、ビルダーである私を毛嫌いする事もなく接してくれるし、グリムンやキラーG、そして道中で“あの腕”にやられてしまったキッシムも、何だかんだ言いつつみんな優しく思いやりのある奴らだ
そう考えると、やっぱり魔物も人間も、大して変わらないんだよな
そんな事を思いながら、私は今、キッシムが安全だと言っていた“ハーゴン教会”という場所へと訪れていた
早くシドーを探し出したかった私は、一緒に行こうと言うメタッツ達の誘いを一度断った
だが“教会に居るジゴック様は三神官の一人で色んな事に詳しく、ひょっとしたらオマエのトモダチってヤツの事も知ってるかもしれない”とグリムンに力説された
挙句にはメタッツに“ここでお別れなんて嫌だよ”と言われてしまい、そこまで言ってくれて断る訳にもいかないかと、渋々了承した
それはそうと、何故、安全な場所へ行かなければならないのか
それは、さっきも言った“あの腕”というものと関係がある
何の前触れも無く突然空間が歪み、そこから巨大な龍の様な腕が現れては、辺りの物を尽く破壊していくのだ
山や大地は勿論、魔物でさえ切り裂く様に破壊していく様は、まさに魔物達が言っていた“破壊神”そのもので
あんなものをまともに喰らったら一溜りも無いと、一時的に避難していた研究所を後にし、ハーゴン教会へと移動したという訳だ
そこにいたジゴックさんという魔物を見て、不意にマギールさんの姿が頭を過ったが、ジゴックさんはビルダーである私を“破壊神様の敵”だと言って目の敵にしている
こういう反応をされるのも最早慣れてしまったというのもあるが、そんな事よりシドーの事で頭がいっぱいだった私は、粛清してやると憤るジゴックさんの言葉を右から左へ受け流していた
だがハーゴン教会にやって来たはいいものの、この教会もあの腕にやられてしまったのか随分とボロボロになっていて、最早教会と言われなければ分からない様な状態になっていた
こんな場所が本当に安全なのかとも思えたが、それよりもジゴックさんの“破壊こそが救済。遂に我らが待ちに待った滅びの日が来た”という言葉が耳に残った
唐突に現れては、次々と物を破壊していくあの腕
きっとあれが、シドーの腕なんだろう
未だ何処にいるかも分からないシドーの腕が、私達を容赦無く襲ってくる
それでも私はどこか、不謹慎にも安堵している部分があった
ああ、シドーはまだ、生きているんだと
シドーが破壊の神だの何だの、私には関係無い
ただ今は、早く、シドーに会いたかった
すっかり意気消沈してしまったグリムンや黙ったままのキラーGを他所に、メタッツは私に向けて“周りに何かないか探してみよう”と提案した
このまま何もしないつもりは無かった私は、その言葉に一つ頷いてから教会の周りを見て回った
すると、教会の後方に作業台らしき物を見付けた
よかった、これで物を作れる
これで、シドーを助ける事が出来る
そう思った私は、足早にその作業台に近付いた
そして、気付いた
「あ!これは何?なんだか薄汚い台だけど……」
その作業台に、ひっそりと立て掛けてあるもの
「その不思議な台は、ずっとこの地にあった物だ。破壊神様が現れた時、真っ先に壊されるかと思ったが……」
それは、とても、見覚えのある
「破壊神様の腕は何かに迷い、壊すのを止められたようだった……私の勘違いかもしれぬがな」
一本の、棍棒だった
『………あ……』
《この棍棒、素材から作ったって訳だ。オマエなかなかやるじゃないか!》
《……ありがとな、ビルダー見習い。この棍棒気に入ったぜ!》
『……ああ………』
《お?新しい武器を作ってくれたのか?ハッハッハ!悪くない!》
《だがオマエが最初にくれたこの棍棒は、このまま貰っておくぜ》
《オレはコイツが気に入ってるんだ。オマエが初めて作ってくれた武器だしな!》
シドーとの思い出が、次々と脳内を駆け巡る
私はフラフラとした足取りで棍棒に近付き、その場にヘタリと座り込んだ
そして恐る恐る棍棒へと手を伸ばし、そっと手に取る
それは紛れも無く、私が初めてシドーに作ってあげた棍棒だった
「ど、どうしたのソラ!お腹でも痛いの!?」
力強く棍棒を抱き締めながら蹲る私に、メタッツは慌てて近付き顔を覗き込んだ
そしてはたと動きを止めた後、少し小さめの声で言った
「………もしかして…泣いてるの?」
まるでメタッツの問いに答えるかの様に、溢れ出る涙が私の頬を伝っては地面を濡らしていく
ああ、お前は破壊神になっても尚
“私の作った物”は、壊さなかったのか
“私との思い出”は、壊さないでいてくれたのか
『………ッ…!!』
こんなに嬉しい事が他にあるか
こんなに胸がいっぱいになる事が他にあるか
シドー、お前は、まだ
私の事を、想ってくれているんだな
声を押し殺して涙を流しながら、私は改めて揺るぎない決意を固めた
……なあ、シドー
私は確かに力も無ぇし、戦い方だって全然なってない、弱いビルダーかもしれない
だけど、それでも一つだけ、自信を持って言える事があるんだ
私は、お前の為だったら
end
(誰にだって、勝てるんだと)