こいつがいるから
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『はぁ~……』
途中まで完成したゴージャスプールのサイドに座り、足だけを水に入れてゆらゆらと動かしながら、ソラは深い溜め息を吐いた
夜も更けてきた頃、私はとうに作ってある踊り子のステージを、未だに設置出来ずにいる
『……何奴も此奴もペロペロペロペロって…二重の意味で舐めてんのかっての……』
シドーと一緒に沢山の鉱石や新しい仲間を求めて、ここ“オッカムル島”に来てからというものの、島のあらくれ共やその他諸々全員がペロという一人の女の子に陶酔しているのをずっと見てきた
挙句の果てには私をライバルだと言い出すあらくれもいれば、ペロの実の父親であるアーマンからは“娘はあげません”と言われる始末
何を勘違いしているのか知らないが、噂によるとどうやらペロは私に気があるらしい
『(好かれて悪い気はしねぇけど…私、一応女なんだがなぁ……)』
この島では、ペロ以外の女は女として見られていない気がする
ビルダーの鐘の音を聴いてやって来た住人達も、あっという間にペロの虜になっていくし
まあ、唯一ゴルドン目当てで仲間になった奴もいたっちゃいたが……
つまり何が言いたいのかというと、この島の呪いにも近い現状に当てられた訳で
『………嫌な奴かよ、私は……』
口から小さく零れた言葉と共に、パタリと背中を倒して寝転がる
夜空に浮かぶ満天の星々を眺めながら、冷たい水の感触を両足で弄んだ
別に、ペロが嫌いって訳じゃない
正直あいつはいい奴だし、この島の為に頑張ってると思うし、実際可愛いし
他の奴らだって、本当に気のいい奴ばかりだと思う
ただ、ペロから弁当を手渡しされたぐらいで理不尽に怒られたり、そんなつもりも無いのに“お前にペロは渡さない”とマウントを取られたり
この予定調和にも似た言葉を何度も浴びせられ、ペロと島の住人との間で板挟みにされた私は、嫉妬とも違う疲れの様なものに徐々に心を蝕まれていった
別にビルダーだって、いつもヘラヘラ笑ってる訳じゃない
ビルダーだって、一人の人間なのに
なのに
「おい、どうしたんだソラ。具合でも悪いのか?」
そんな少し心配そうな声と共に、視界に赤い布がチラつく
視線を動かしてみれば、そこには水に濡れた赤褌姿のシドーがいた
そういえば、まだ完成してないにも関わらず楽しそうにプールで泳ぎだしたシドーを見て、作業を中断したんだっけか
確かこいつ、最初は何も着ずに全裸で泳いでいたらしく、それを見たドルトンが怒って赤褌を締めさせたって言ってたな
まあドルトンに締めさせられたってんなら、普通の水着じゃなく赤褌でも納得がいく…ような気がしないでもないが
この島の男共といい、みんな赤褌でなきゃいけない決まりでもあるのか
シドーがいいってんなら、別にいいんだけども
腰に手を当て不思議そうな視線で見下ろすシドーに、私はいくつか顔に落ちた水滴を拭いながら身体を起こした
………いや、というか服着ろよ
『あー…いや、何でもねぇ。大丈夫』
「そうか?あまり顔色良くないぞ」
『平気だって、長い事作業してたせいで寝不足なだけ』
眉を顰めるシドーに対し、ヘラリと笑って答える
そんな私を見て何を思ったのか、シドーは私の隣に腰掛けて同じ様に足だけプールの中へと投げ出した
いやだからまず服を着ろって言っ……てはねぇか、口に出してなかったわ
「ほら、ソラ」
『ん?……おわっ』
シドーが私の肩を唐突に引き寄せた反動で、シドーの肩に自身の頭を乗せる、いわばカップルがよくやっていそうなあの状態になってしまった
突然の事で理解が追いつかない中、暫く間を開けてから恐る恐る問い掛ける
『……シ、シドー…?』
「寝不足なんだろ、だったら今少しだけでも寝ておいた方がいいんじゃないか。肩ぐらい貸してやるからよ」
『……あー、なるほど、そういう…』
カラカラに乾いた気候のせいで既に水気が飛んだシドーの身体は、僅かにひんやりとしていてとても心地良い
直に体温が感じられる程くっついている現状に若干鼓動を早めながらも、実際に寝不足であった私は大人しくシドーの肩に寄りかかった
『んじゃお言葉に甘えて…何かあったら起こせよ』
「おう、オレがちゃんと見張っててやるから安心しろ」
そう言っておやすみと笑うシドーを見上げて、その尖った耳が少しだけ赤くなっているような気がした
……そういや、ブロックライトを赤く染められたら綺麗かもなぁ
そんな事を朧げに考えながら、ゆっくりと瞳を閉じる
シドーが傍にいるだけで、こんなにも安心出来るのは何故だろう
いつもは物騒な物言いが多いシドーの、こういうふとした時の優しさが、私の心を洗い流してくれる気がする
さっきまでグルグルと頭の中を埋め尽くしていた嫌な感情が、綺麗に浄化されていく様に感じた
淡いブロックライトの灯りが、二人を優しく照らし出す
『(……ああ、そうか、そうだよな)』
こいつがいるから
end
(私はまた、頑張れる)
(仲睦まじくプールサイドに座る二人の背中を)
(島の住人達は微笑ましげに眺めていた)
途中まで完成したゴージャスプールのサイドに座り、足だけを水に入れてゆらゆらと動かしながら、ソラは深い溜め息を吐いた
夜も更けてきた頃、私はとうに作ってある踊り子のステージを、未だに設置出来ずにいる
『……何奴も此奴もペロペロペロペロって…二重の意味で舐めてんのかっての……』
シドーと一緒に沢山の鉱石や新しい仲間を求めて、ここ“オッカムル島”に来てからというものの、島のあらくれ共やその他諸々全員がペロという一人の女の子に陶酔しているのをずっと見てきた
挙句の果てには私をライバルだと言い出すあらくれもいれば、ペロの実の父親であるアーマンからは“娘はあげません”と言われる始末
何を勘違いしているのか知らないが、噂によるとどうやらペロは私に気があるらしい
『(好かれて悪い気はしねぇけど…私、一応女なんだがなぁ……)』
この島では、ペロ以外の女は女として見られていない気がする
ビルダーの鐘の音を聴いてやって来た住人達も、あっという間にペロの虜になっていくし
まあ、唯一ゴルドン目当てで仲間になった奴もいたっちゃいたが……
つまり何が言いたいのかというと、この島の呪いにも近い現状に当てられた訳で
『………嫌な奴かよ、私は……』
口から小さく零れた言葉と共に、パタリと背中を倒して寝転がる
夜空に浮かぶ満天の星々を眺めながら、冷たい水の感触を両足で弄んだ
別に、ペロが嫌いって訳じゃない
正直あいつはいい奴だし、この島の為に頑張ってると思うし、実際可愛いし
他の奴らだって、本当に気のいい奴ばかりだと思う
ただ、ペロから弁当を手渡しされたぐらいで理不尽に怒られたり、そんなつもりも無いのに“お前にペロは渡さない”とマウントを取られたり
この予定調和にも似た言葉を何度も浴びせられ、ペロと島の住人との間で板挟みにされた私は、嫉妬とも違う疲れの様なものに徐々に心を蝕まれていった
別にビルダーだって、いつもヘラヘラ笑ってる訳じゃない
ビルダーだって、一人の人間なのに
なのに
「おい、どうしたんだソラ。具合でも悪いのか?」
そんな少し心配そうな声と共に、視界に赤い布がチラつく
視線を動かしてみれば、そこには水に濡れた赤褌姿のシドーがいた
そういえば、まだ完成してないにも関わらず楽しそうにプールで泳ぎだしたシドーを見て、作業を中断したんだっけか
確かこいつ、最初は何も着ずに全裸で泳いでいたらしく、それを見たドルトンが怒って赤褌を締めさせたって言ってたな
まあドルトンに締めさせられたってんなら、普通の水着じゃなく赤褌でも納得がいく…ような気がしないでもないが
この島の男共といい、みんな赤褌でなきゃいけない決まりでもあるのか
シドーがいいってんなら、別にいいんだけども
腰に手を当て不思議そうな視線で見下ろすシドーに、私はいくつか顔に落ちた水滴を拭いながら身体を起こした
………いや、というか服着ろよ
『あー…いや、何でもねぇ。大丈夫』
「そうか?あまり顔色良くないぞ」
『平気だって、長い事作業してたせいで寝不足なだけ』
眉を顰めるシドーに対し、ヘラリと笑って答える
そんな私を見て何を思ったのか、シドーは私の隣に腰掛けて同じ様に足だけプールの中へと投げ出した
いやだからまず服を着ろって言っ……てはねぇか、口に出してなかったわ
「ほら、ソラ」
『ん?……おわっ』
シドーが私の肩を唐突に引き寄せた反動で、シドーの肩に自身の頭を乗せる、いわばカップルがよくやっていそうなあの状態になってしまった
突然の事で理解が追いつかない中、暫く間を開けてから恐る恐る問い掛ける
『……シ、シドー…?』
「寝不足なんだろ、だったら今少しだけでも寝ておいた方がいいんじゃないか。肩ぐらい貸してやるからよ」
『……あー、なるほど、そういう…』
カラカラに乾いた気候のせいで既に水気が飛んだシドーの身体は、僅かにひんやりとしていてとても心地良い
直に体温が感じられる程くっついている現状に若干鼓動を早めながらも、実際に寝不足であった私は大人しくシドーの肩に寄りかかった
『んじゃお言葉に甘えて…何かあったら起こせよ』
「おう、オレがちゃんと見張っててやるから安心しろ」
そう言っておやすみと笑うシドーを見上げて、その尖った耳が少しだけ赤くなっているような気がした
……そういや、ブロックライトを赤く染められたら綺麗かもなぁ
そんな事を朧げに考えながら、ゆっくりと瞳を閉じる
シドーが傍にいるだけで、こんなにも安心出来るのは何故だろう
いつもは物騒な物言いが多いシドーの、こういうふとした時の優しさが、私の心を洗い流してくれる気がする
さっきまでグルグルと頭の中を埋め尽くしていた嫌な感情が、綺麗に浄化されていく様に感じた
淡いブロックライトの灯りが、二人を優しく照らし出す
『(……ああ、そうか、そうだよな)』
こいつがいるから
end
(私はまた、頑張れる)
(仲睦まじくプールサイドに座る二人の背中を)
(島の住人達は微笑ましげに眺めていた)